「ラグビーで子どもたちに夢を与えたい」現役ラグビー選手が描く未来とは

木村 貴大

木村 貴大

2025.07.31
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現役ラグビー選手でありながらラグビーを普及する活動に取り組む木村貴大(きむらたかひろ)さん。ラグビーを始めたきっかけや現在の活動、今後の展望などを伺いました。

ラグビーで結果を出したからこそできた貴重な人間的成長

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6歳の頃、ラグビーを始めました。当時、両親はラグビーのことをまったく知りませんでした。母のママ友の息子さんがラグビーをやっていたのですが、エネルギーがあり余るやんちゃ坊主だった私について母がそのママ友に相談したところ、ラグビーをやってみたらと勧められたそうです。

あまり記憶がないのですが、母から聞いた話だと、北九州市の地元にあるラグビーチームの体験会に行ったところ、小さい頃から負けず嫌いの私は試合にいきなり参加することになったそうです。ルールもわからない中、ボールを持って必死に走ったのですが、トライを取れなかったという悔しい経験がきっかけでラグビーを始めることになります。

そこから小・中学校、高校、大学、社会人とずっとラグビーに打ち込んできました。実績だけでいうと私のラグビー人生は『エリート街道』をたどってきたように見えると思います。

小・中学校時代は自分のおかげでチームが勝てていると思い、調子に乗りすぎて大天狗になっていたんです。今となってはそんな私の鼻をへし折ってくれる人たちがいたことに感謝ですね。そのままだったらロクな大人になっていなかったでしょう。

中学、高校は試合で勝ったことしかなかったり、キャプテンをやらせてもらったりと、今思えば調子に乗ってしまう経験をさせてもらって、それに気づけたことで人として成長できましたね。自分だけがすごいのではなく仲間がいるから勝てるんだと思うようになりました。

それでも大学のときまで自分が正しいという考え方が抜けなかったんです。自己主張が強いまま社会人になって、海外に遠征にも行きました。海外で日本人は自己主張が少ないからもっと自分を出せと言われて、余計に自分を出すようになってしまったんです(笑)。

人生の転機は3回。そこで気づいた「今を楽しむこと」の重要性

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ラグビーのプロ選手になるというよりは日本代表になって活躍したいという思いを小学1年生でラグビーを始めたときからずっと持っていました。

私のラグビー人生では、転機が3回あります。一度目は大学3年生でポジション転向をしたときです。フォワードからバックスというポジションに行くというターニングポイントがありました。そのポジションチェンジがあったからこそ今のチームに入れたと思っています。

大学卒業後、就職をして『トヨタ』のラグビーチームに所属していました。3年目に会社を辞め、初めてのクラウドファンディングで資金を集めて1年間ニュージーランドに行ったんです。それが二度目の転機となります。

社会人2年目のときに3カ月間の短期留学に行かせてもらった際に、初めてプロ選手と同じ生活をしてみました。そこで、ラグビーがもっとうまくなるためにラグビーに集中した生活が必要だなと感じたんです。

日本に帰国後、プロ選手になりたいと思うようになりました。当時、私が所属していた企業のチームでは社員選手からプロとして契約することが難しかったので、一度の人生だから思いきりチャレンジしようと思い、会社を辞めてニュージーランドに留学しました。

私は人がやったことがないことに挑戦することが好きなので、クラウドファンディングで資金を集めて留学。そこで「意志あるところに道が開ける」という言葉が腑に落ちました。そこから次の所属チームが決まり、チームが良い方向に進んで行ったので自分で道を作っていったなという感覚があります。

現在は『サントリー』のチームに所属しています。30歳を迎えた頃に、それまで好調だったのが一転、けがや家庭内の問題が勃発しました。これが三度目の転機です。そのときに自然と触れ合う時間やめい想する時間を増やしました。自分と向き合う時間を増やした結果、未来のために今を大事にするのではなく、今を楽しむことに集中しようと思ったんです。

それまで「日本代表になる」「レギュラーになる」「試合で活躍する」という未来に向かって逆算して準備をしていました。今はラグビーもプライベートも仕事も今を本当に楽しむために行動すると未来につながると考えています。周りに寄り添ってくれる方たちがたくさんいるので、いろいろと気付かせていただけることが多いですね。

ラグビーを通して夢のかなえ方を伝えていきたい

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社会人1年目でトップリーグと呼ばれるラグビーの一部リーグに所属して、晴れて『ラグビー選手』になりました。私は根っから人を喜ばせることやサプライズが好きです。社会人になって地元に恩返しがしたいと思い、ラグビーをやっている子どもたちを集めて『夢授業』を開催することにしました。

『夢授業』ではラグビー体験とどのようにラグビー選手になって活躍するという夢をかなえたのかという話をします。私が登壇したときに大きな声援をいただいたんです。そのときにラグビー選手というのはヒーロー的な存在なのだと気づきました。

それから北九州市内にある幼稚園や小学校、病院にラグビーボールを配る活動を始めたんです。子どもがいる施設にはどこも絵本が置いてあります。ラグビーボールを配る活動が広がっていくにつれて、子どもたちはラグビーボールをもらった瞬間は楽しいけど、その一瞬で終わってしまうと気づいたんです。私が会いに行けないときも、一人じゃないと感じてもらえるものが作りたいと考えたときに絵本が思い浮かびました。

知り合いに絵本作家の方がいたので、すぐに絵本製作に着手。出来上がった絵本を小児病棟や児童養護施設、児童自立支援施設、子ども食堂などに配布しました。製作期間は7カ月。ただの夢物語だと夢を持てない子どもたちに悲しみを与えてしまうだけです。内容を練りに練って、夢を持てない子どもたちに読んでもらいたい内容になっています。

たくさんの反響をいただいて、本当に作って良かったと思っています。将来的には英語版も製作して発展途上国の子どもたちに渡しに行き、現地の子どもたちにラグビーを教える現役チームになるのが夢ですね。

子どもたちの支援だけでなく、ラグビーに親しんでもらう活動もしています。毎年シーズンが終わると、個人的にファン感謝祭を開催しているんです。他チームの選手を呼んで、選手とファンがBBQやゲームなどをして交流するのですが、昨年は約90人の方にご参加いただきました。

現在のチームに来て来シーズンで4年目になります。大きなけがを3回してしまったので、この3年間で公式戦に3試合しか出場できていなくて、まったく結果が出せていないのが現状です。悔しくない日はありません。これまでやってきたことが花開く瞬間というのは試合で活躍することだと思います。

だから、必ず来シーズンは試合に出場して、チームの日本一に貢献することが直近の目標です。「元気をもらえた」「会えて良かった」と言ってもらえるように、相手に活力を与えたいということが私の行動の軸となっています。選手として結果を出すことがすべての活動を良い結果に導いてくれると思うので、まずは試合で結果を出すことに集中したいです。