カヌー競技で全国優勝した経験を持つトレーナーが指南する「遊びを通じた体の土台づくり」

Kaname

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2024.08.07
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高校生時代にカヌー競技で全国優勝を果たした経験を持つkanameさん。自身が怪我と向き合いながら競技に打ち込んできた経験から、現在は、「怪我をしない体の土台づくり」という観点から、体の連動性や使い方を意識したボディメイクやキッズの運動指導などを行っています。競技技術の習得よりも先に、遊びを通じた土台づくりを推奨するkanameさんに、その思いに至った経緯や具体的な取り組みについてお話を伺いました。

怪我と向き合いながらカヌーに打ち込んだ高校時代

見出し1画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_Kanameさん_カヌーの漕ぎ方指導

カヌーとの出会いは、顧問の先生が私に声をかけてくださったのがきっかけです。中学時代は陸上部で短距離をやっていたのですが、選手層が分厚いため上にはいけないと思い、そのまま続けるかどうか迷っていました。

そんな時に当時の顧問の先生から「カヌーをやってみない?」という話をもらい、まずは体験からスタート。最初は体験だけのつもりでしたが、顧問の先生にうまく誘導され、カヌー部に入部することになりました。

ほぼ毎日練習だったのですが、1年生の冬に椎間板ヘルニアになってしまい、怪我と向き合いながら練習する日々が始まります。カヌー部に入ることを前提に入学していたため、成績を出さなければならないプレッシャーが常にありました。

逆境を乗り越えてこれたのは、チームの支えがあったおかげです。怪我を認めてもらい、できる範囲で活動を続けることができました。また、上級生が総合優勝を果たしたことや、負けん気が強いメンバーが揃っていたことで、切磋琢磨する環境が整っていました。この環境があったからこそ、怪我を乗り越え、最終的に4人乗りで全国優勝を果たすことができたのだと思います。

身近な先輩たちが優勝候補として全国レベルの練習に参加していたため、私たちもその恩恵を受けて高いレベルで練習できたのは非常にありがたかったです。あとは顧問の先生と喧嘩するぐらい意見を言い合える関係性だったのも、結果につながった要因だと思います。

現代の子供たちは「遊び不足」が問題に

見出し2画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_Kanameさん_横隔膜を鍛える

今では子どもたちの指導にも携わるようになりましたが、そこで気づいたのが多くの子どもたちが「遊び不足」の状態にあるということです。これは単に外で遊ぶ時間が減っているということだけでなく、体の使い方そのものを知らない子どもたちが増えているという問題です。

たとえば、走っただけで疲労骨折をしてしまったり、ブランコで立ちこぎができなかったり、足の裏がうまく使えず、急に止まることができなかったり、私たちの世代では当たり前にできていたことが、今の子どもたちにはできないケースが多々あります。

YouTubeなどで簡単に技術情報が手に入る現代では、基礎的な体の動きを習得する前に、特定の競技技術の習得に走ってしまう傾向があります。体の使い方を知らないのに競技的な技術ばかりが先行し、結局、土台がないために怪我をしやすくなってしまいます。

また、親や指導者が「危ない」と先回りして制止してしまうことで、子どもたちが自然に体を動かし、その感覚を身につける機会を奪ってしまっているのです。まず「遊び」を通じて基本的な体の動きを習得し、その上で競技技術を学んでいくという順序が重要だと考えています。

遊びを通じた体の土台づくりを広めていきたい

見出し3画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_Kanameさん_体づくりの運動指導

私は怪我を経験したことで、体幹の重要性に気づきました。カヌーは波や風が吹くと水面が揺れ、それに合わせ体を動かさないといけないので、体幹の強さがパフォーマンスに直結します。肩周りが凝っていたり、普段から使っていないと可動域は狭まってしまうので、ここを動かしながら軸を保つ体の連動が土台づくりでは大切だと考えています。

これらの問題意識から、私は「教えない指導」という新しいアプローチを提案しています。指導者の考えだけでなく、目標に向かって行動するためにはどうしたらいいか子供たちが自ら考えてもらうように運動指導を行っています。直接的に技術を教えるのではなく、遊びを通じて自然に体の動きを習得させるのが目的で、怪我をしないための土台づくりができればと考えています。

たとえば、私が最近よく行っているのは風船を使ったトレーニングです。風船を膨らませる行為は一見単純ですが、実は正しい呼吸法を身につけるのに非常に効果的なのです。風船を膨らませることで固まってる肋骨を動かし、体幹を鍛えられる状態を整えています。

人はストレスが溜まっている状態では、肋骨や横隔膜が動かなくなっており、肩で呼吸している感じになります。寝転がって風船を膨らますと肩呼吸はできなくなるので、自然に肋骨や横隔膜を動かすことを意識できます。

呼吸は吸うことをイメージしている方が多いですが、緊張しているときなど吸いすぎてしまうと過呼吸状態になったりするので、主に吐く練習をしています。子どもたちは「誰が風船を一番大きく膨らませられるか」といった形で楽しみながら、自然と体幹を鍛え、柔軟性を向上させることができるのです。

今後の目標は、「遊びを通じた土台づくり」の重要性を広く伝えていくことです。スポーツや運動は決して難しいものではなく、その基本は「遊び」にあるということを多くの人に理解してもらいたいと考えています。

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