「笑顔」というお宝をまき散らす海賊がバルーンアートに込めた思い
バルーンパフォーマーの海賊タロウさんは、バルーンショーやバルーン装飾、バルーンプレゼントなど、多岐にわたって活躍しています。彼のパフォーマンスは、子どもから大人まで楽しむことができ、特に誕生日パーティーや個人宅での出張ミニバルーンショーが人気。みんなの「笑顔」というお宝を探しまき散らす海賊として知られる海賊タロウさんに、活動の原点となるストーリーを伺いました。
バルーンアートを通して人々に喜びを届ける
バルーンパフォーマーとしての旅は、2014年に妻が子宮頸がんで亡くなったことから始まりました。とてつもない喪失感から生きるため新たに何かを始める必要性を感じ、たまたま見つけたのがバルーンアートでした。
はじめは自分自身のため、何かに夢中になり辛い日々を誤魔化すための手段としてバルーンアートに没頭。独学で海外のバルーンアーティストのYouTubeを参考に始めました。数年経ち、いつの間にかパーフォーマーとしてショーや風船プレゼントなどの出演依頼が少しずつ増えていきました。
妻が病気と向き合う中で見せてくれたのは、目の前にある小さな幸せに気づくことでした。妻からのメッセージを胸に、講演をし、バルーンアートを通して、笑顔と幸せを広げていきたい。という想いがこの頃芽生えました。
妻の闘病生活中にブログをリアルタイムで発信していたので、閲覧数も多く、朝日新聞社に取材を受けたこともあります。そして、バルーンパフォーマーを仕事として今後やっていきたいのか自分と向き合い、本気で取り組んでいくことを決意しました。
スタート当初は苦難の連続でした。営業の経験もなくパフォーマーの腕も独学で身につけてたこともあり、成果が出るまでに時間がかかりました。それでも口コミや紹介より次第に仕事が広がり、現在では依頼の9割が紹介によるものです。バルーンアートを通して人々に喜びを届けることは、何にも代えがたい幸せです。
心が折れそうになった時にかけられた言葉
他のパフォーマーさんは叩き上げの方が多く、「奥さんのことを出してパフォーマーを名乗るんじゃない」と叩かれたこともあります。
私がパフォーマンスをするのは、妻の死を無駄にしたくないという想い。そして、奇跡的に出会ったバルーンアートで、目の前にいる誰かを笑顔にする。このふたつの掛け合いです。
落ち込んでいた時期に、ある人から「奥様とのエピソードはあなたの人生の一部で、そこにバルーンがあるのだから、隠す必要はないですよ。今のままでいい」と、アドバイスをいただき、これでいいんだ!と自信を取り戻せました。
この闘病経験を経て、大人が童心に戻れる時間を作りたい。と考え、海賊だからこそのストーリーある、大人がワクワクするバルーンショーを心がけています。
ショーを始めた当初は、技術的にかなり未熟でしたが、その努力と挑戦する姿勢に勇気づけられるというお声をいただき、また、応援してくださり、ここまで頑張ってこれました。まだまだ未熟できっと終わりはありません。
私にとって特に感動的なエピソードのひとつは、ある男性が奥様に感謝の気持ちを伝えたいと私に相談してきたことです。彼は日頃の感謝を伝えるために、家族の似顔絵バルーン人形を贈ることを決めました。その後、奥様からのメッセージをいただき、普段は強面で何を考えているのかわからない彼からの心温まるプレゼントに、非常に喜んだとありました。
さらに、その後家族でショーを見に来てくれたことが、これこそが望んでいる先で、感動した出来事でした。
経験を踏まえたオリジナルソングも制作
私の仕事であるバルーンアートは、大人もその場ですぐ笑顔になれることが魅力のひとつです。 講演も含め、目の前の小さな幸せの大切さに気づける何かのきっかけ作りをしたい。その結果、心に余裕が生まれ、子どもたちが真の笑顔に出会えると思っていて、これが私の現在の活動の中心となっています。
また、バルーン教室は、バルーンアートの技術ではなく、大人がその場を存分に楽しむ経験や小さな成功体験で自信が出ること。家庭で子どもたちとのコミュニケーションを深め、魔法使いのように感じられる喜びを共有できるようになることを目的としています。
今は某製薬会社様、保険会社様など企業様向けのコミュニケーション研修にも力を入れています。最近では、バルーンアートの活動以外に、オリジナルソングも制作しています。『ひまわりと青い空』は、妻との闘病経験から得た大切なことを歌詞で、「同じ時代に同じ空をあなたと見上げることができるって幸せだね」と綴っています。
将来に向けては、自身の影響力を広げ、社会貢献活動を拡大していきたいと思っています。特に、耳の聞こえない方々が音を感じるプロジェクトへの協力や、児童養護施設での支援に力を注いでいきたいです。
これらの取り組みを通じて、多くの方に笑顔や幸せを届け、社会に貢献できることが私の目指すゴールであり、これまでの支えに感謝の気持ちを形にしていくことです。すべての悲しみは消せなくても、誰かの希望、笑顔は作れる。そう信じてこれからも活動していきたいです。