イライラが止まらない時の「アドラー式感情コントロール術」

アドラー心理学を用いた、子育て・起業・自己実現サポートを行う、あいさんの連載コラム第5弾です。「またイライラしてしまった」「怒りをコントロールできない自分が嫌い」。子育て中の親、職場で働くビジネスパーソン、多くの人が感情のコントロールに悩んでいます。厚生労働省の調査では、ストレスを感じている人の割合は年々増加しており、特に「イライラ」「怒り」の感情が課題となっています。しかし、アドラー心理学は驚くべき視点を提示します。「感情は、実は自分で選んでいる」と。100名以上の感情コントロールをサポートしてきたアドラー心理学講師が、明日から実践できる「イライラ」との向き合い方を解説します。
「怒りは出し入れできる道具である」アドラーの衝撃的な主張

アドラー心理学で最も衝撃的な主張のひとつが、「怒りは出し入れできる道具である」という考え方です。多くの人は「怒りは湧き上がってくるもの」「コントロールできないもの」と思っています。しかし、アドラーは全く違う視点を提示します。
その証拠として、アドラーは次のような例を挙げます。
【シーン】 母親が子どもを叱りつけている最中に、電話が鳴った。電話に出ると、相手は子どもの担任の先生。母親は瞬時に穏やかな声で「はい、いつもお世話になっております」と応対する。電話を切ると、再び子どもに向かって怒鳴り始める。
この例は何を示しているでしょうか。もし怒りが「湧き上がってコントロールできないもの」なら、電話に出ても怒鳴り続けるはずです。しかし実際には、母親は怒りを「止めて」、穏やかな声を「選んで」、そしてまた怒りを「再開」しています。
つまり、怒りは自分でコントロールできるのです。
私自身、この話を初めて聞いたとき、図星を突かれたような気持ちになりました。子どもにイライラして叱っている時、インターホンが鳴れば笑顔で対応していました。「怒りをコントロールできない」のではなく、「怒りという道具を無意識に使っていた」のです。
では、なぜ私たちは怒りという道具を使うのでしょうか。アドラーは「怒りの目的」を解き明かします。
怒りが持つ主な機能(目的):
アドラー心理学では、怒りを含む感情には「目的」があると考えます。以下は、アドラー心理学の実践現場で整理されてきた、怒りが持つ主な機能です。
支配・コントロール – 相手を自分の思い通りに動かしたい
優位性の確保 – 自分の方が上だと示したい(権力争い)
注目獲得 – 相手に注目してもらいたい
正当性の主張 – 自分が正しいと証明したい
報復・仕返し – 相手を傷つけたい(復讐)
これらは、アドラーが提唱した「不適切な行動の目標」とも関連する概念です。子どもにイライラする時、実は「子どもを支配して、言うことを聞かせたい」という無意識の目的があります。上司にイライラする時、「自分の正しさを証明したい」という目的が隠れているかもしれません。
この「目的」に気づくことが、感情コントロールの第一歩なのです。
なぜ「感情を抑える」だけでは、うまくいかないのか

「イライラしたけど、我慢した」「怒りを抑えて、笑顔で対応した」。多くの人が、感情をコントロールすることを「我慢すること」だと誤解しています。しかし、アドラー心理学は、単なる我慢では根本的な解決にならないと指摘します。
感情を抑圧することの3つの問題点:
①ストレスが蓄積し、爆発する
我慢し続けた感情は、どこかで爆発する可能性があります。些細なことでキレてしまう。家族に八つ当たりしてしまう。これは、抑圧された感情が限界に達したサインかもしれません。
心理学では「感情の風船」という比喩が使われることがあります。風船に空気を入れ続ければ、いつか破裂します。感情も同様に、抑え込むだけでは健全な処理にならないことがあるのです。
②心身の不調につながる可能性
感情の抑圧が長期化すると、心身の不調として現れることがあります。頭痛、胃痛、不眠、疲労感。これらは心身医学の分野で「身体化」と呼ばれる現象で、抑圧された感情が身体症状として表現されることがあります。
※ただし、これらの症状にはさまざまな原因が考えられます。気になる症状がある場合は、まず医療機関を受診することが大切です。
私自身、会社員時代に原因不明の胃痛に悩まされた経験があります。病院では異常なし。しかし、アドラー心理学を学び、抑圧していた感情に気づき、適切に表現するようになってから、胃痛が軽減されました。これは個人的な体験ですが、感情と身体の関連性を実感した出来事でした。
③人間関係が悪化する
表面上は笑顔でも、心の中でイライラしている。この不一致は、相手に伝わることがあります。言葉では「大丈夫」と言っても、表情や態度、声のトーンに出てしまうのです。
そして、本当に大切なことを伝えられなくなります。我慢ばかりしていると、「この人は何を考えているかわからない」と思われ、信頼関係が築きにくくなります。
アドラー流は「抑圧」ではなく「理解と選択」
では、どうすればいいのか。アドラーが提案するのは、「感情を抑える」のではなく、「感情の目的を理解し、別の方法を選択する」ことです。
たとえば、子どもが言うことを聞かなくてイライラするとき。
従来の方法:
怒りを我慢する → ストレス蓄積 → 後で爆発
アドラー流:
「なぜイライラしているのか?」と自問する
「子どもを支配して、言うことを聞かせたい」という目的に気づく
「支配ではなく、対等に対話する」という別の方法を選ぶ
この3ステップが、根本的な解決につながります。
私がこの方法を実践し始めてから、驚くほどイライラが減りました。以前は1日に何度も感情的になっていましたが、今では週に1回あるかないか。それも、すぐに「あ、今、支配しようとしてたな」と気づけるようになりました。
明日から使える!3つの「アドラー式イライラ解消法」

理論はわかったけれど、「具体的にどうすればいいの?」という方のために、明日から実践できる3つの方法をお伝えします。
①「6秒待つ」+「目的を問う」の組み合わせ
感情コントロールの分野(アンガーマネジメント)では、「怒りのピークは6秒」と言われています。この知見を、アドラー心理学の「目的を問う」と組み合わせることで、より効果的な実践ができます。
実践ステップ:
イライラを感じたら、6秒数える(深呼吸しながら)
心の中で「今、私は何を達成したいのか?」と問う
「怒りという道具」以外の方法を考える
たとえば、子どもがおもちゃを片付けないとき。
6秒数える – 深呼吸しながら心を落ち着ける
目的を問う – 「私は何をしたいのか? → 部屋をきれいにしたい」
別の方法 – 「一緒に片付けようか」と提案する、またはタイマーをセットしてゲーム化する
この練習を繰り返すことで、反射的に怒る回数が減っていきます。私自身、最初は意識的にやっていましたが、今では自然と6秒待てるようになりました。
※この方法は、アドラー心理学独自のものではなく、アンガーマネジメントの知見とアドラーの目的論を組み合わせた実践的アプローチです。
②「Iメッセージ」で怒りを建設的に伝える
イライラを我慢するのではなく、建設的に伝える方法が「Iメッセージ」です。これは、主語を「あなた」ではなく「アドラー心理学を用いた、子育て・起業・自己実現サポートを行う、あいさんの連載コラム第3弾です。私」にするコミュニケーション技術です。
Youメッセージ(攻撃): 「あなたが時間を守らないから、迷惑してるんだよ!」
Iメッセージ(事実と感情): 「約束の時間に来てもらえないと、私は不安になるんです」
この違いは決定的です。Youメッセージは相手を責め、防衛反応を引き起こします。「言い訳させてくれ!」「反論したい!」という反応を生むのです。
一方、Iメッセージは、自分の感情や困りごとを伝えるだけ。相手を攻撃していないので、相手も受け入れやすくなります。
私が夫に「あなたが家事をしないから、私が大変なの!」と言っていた時は、夫も反発していました。しかし「家事が溜まると、私は疲れてしまうんだ」と伝えたところ、夫は「そうか、じゃあ手伝うよ」と自然と協力してくれるようになりました。
Iメッセージの3ステップ:
事実を伝える「〇〇が起きると」
自分の感情を伝える「私は△△と感じる」
希望を伝える(任意)「□□してもらえると嬉しい」
例:
「報告が遅れると(事実)、私はスケジュールが組めなくて困るんです(感情)。次回からは〇日までに報告してもらえると助かります(希望)」
例:
「食器がシンクに溜まっていると(事実)、私は片付けの負担が増えて疲れてしまうんだ(感情)」
③「当たり前」に感謝して、イライラの種を減らす
アドラー心理学の核心のひとつが、「できていないこと」ではなく「当たり前にできていること」に目を向けることです。
私たちは無意識に、できていない数パーセントにばかり注目してしまいます。子どもが10個の良いことをしても、1つのミスを指摘してしまう。夫が9割協力的でも、1割の不満が気になってしまう。この習慣が、イライラを生み出すのです。
実践:毎晩3つの感謝を書き出す
寝る前に、その日の「当たり前だけど、ありがたいこと」を3つ書き出します。
子どもが元気に学校に行ってくれた
夫が仕事に行ってくれている
自分が健康に過ごせた
蛇口をひねれば水が出る
電車が時間通りに来た
このワークを1週間続けるだけで、驚くほどイライラが減ります。なぜなら、「当たり前」が「ありがたいこと」に変わるからです。感謝の気持ちが増えると、小さな不満が気にならなくなるのです。
私はこのワークを始めてから、娘が靴下を脱ぎっぱなしにしていても、「まあ、元気に遊んでくれてるから良いか」と思えるようになりました。以前なら確実に「何度言ったらわかるの!」とイライラしていたはずです。
応用:相手の「良い意図」を探す**。**イライラする相手の行動にも、実は「良い意図」があります。これを探す習慣をつけると、イライラが激減します。
細かく指示してくる上司 → 「プロジェクトを成功させたい」「私に失敗してほしくない」
口うるさい親 → 「私の幸せを願っている」「心配している」
言うことを聞かない子ども → 「自分で決めたい」「認められたい」
この「良い意図」を理解すると、相手への見方が変わります。イライラではなく、「この人なりに頑張ってるんだな」と共感できるようになるのです。
まとめ:感情は「湧き上がるもの」ではなく「選ぶもの」
「イライラが止まらない」と悩む多くの人に、アドラー心理学は希望を与えてくれます。感情は、コントロールできないものではありません。無意識に選んでいるものなのです。
怒りは「道具」です。何かの目的を達成するために、無意識に選んでいる手段です。その目的に気づき、別の方法を選ぶこと。これがアドラー流の感情コントロールです。
我慢するのでもなく、爆発させるのでもなく。「なぜイライラしているのか?」と自分に問いかけ、「別の方法」を選ぶ。この小さな実践の積み重ねが、あなたの人生を、そして周りの人との関係を大きく変えていきます。
明日、イライラを感じたら、まず6秒待ってみてください。そして「今、私は何を達成したいのか?」と問いかけてみてください。その小さな一歩が、感情に振り回されない人生への始まりになるはずです。
【著者プロフィール】
あい / アドラー心理学講師・著者
2児の母。アドラー心理学の実践で、たった3ヶ月で家族崩壊から家族円満へ変化。2024年起業。「思考のクセ診断」を開発し、100名以上の子育て・自己実現をサポート。関西・大阪万博登壇。国際アドラー心理学会(IAIP ASIA2026)日本代表。10ヶ月連続ベストセラー著書『アドラー流子育てやってみた』。Instagram: @ai_sensei_0310
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