【現地レポ】注目作品が目白押し!第76回カンヌ国際映画祭(2023年)
今年もカンヌ国際映画祭がやってきた!
映画一色に染まるカンヌの街
今年注目の日本作品
もちろん映画以外にも…
今年もカンヌ国際映画祭がやってきた!
世界中の数ある映画祭のなかでも最高峰の1つであるカンヌ国際映画祭が、今年も5月16日から27日までの11日間にわたって開催されました。
映画関係者はもちろん、映画好きなら一度は足を運んでみたい場所へ、私は昨年に引き続き今年も行ってまいりました!
▶︎昨年のカンヌ国際映画祭レポはこちらから
映画業界の最新トレンドを垣間見ることができるこの映画祭では、ベテランの映画監督たちの最新作から新鋭監督の革新的な作品まで、幅広いラインナップが披露されました。
受賞作品の争いは今年も熾烈で、映画界の未来を占う重要なイベントと言っても過言ではないと思います。
そんな、映画ファンにとっての聖地でもあるカンヌ国際映画祭のレポートを、私の体験からご紹介します。
▶︎カンヌ国際映画祭の紹介記事はこちらから
映画一色に染まるカンヌの街
世界最高峰の映画イベントなだけに、どうしても映画作品や出演者・映画監督などの映画関係者に目が行きがちですが、映画祭を彩るカンヌの街並みにも見どころがたくさんありました。
まずは映画祭のメイン会場である「パレ・デ・フェスティバル・エ・デ・コングレ」(通称:パレ)!
イベントの目玉となるレッドカーペットがあるこの建物には、今年のカンヌ国際映画祭公式ポスターが掲げられていました。
大きくフィーチャーされているのはフランスの大女優カトリーヌ・ドヌーヴ。
私は彼女が出演している映画『8人の女たち』が大好きですが、今回取り上げられていたのは1968年に公開された『別離』の撮影時にコート・ダジュールで撮られた白黒写真からのものだそうです
昨年の公式ポスターが『トゥルーマン・ショー』のワンシーンからだったので、来年のデザインが早くも気になってしまいました。
もちろん、パレ以外にも見所はたくさん!
今回がお披露目となる『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』のポスターが貼り出されていたり、映画祭で上映される日本映画もしっかり宣伝されていました。
余談ですが、今回のインディ・ジョーンズの邦題では副題との繋ぎ言葉に「と」を使っています。
前作までは『インディ・ジョーンズ 最後の聖戦』や『インディ・ジョーンズ クリスタルスカルの魔宮』といった表記だったところから変えたのは、なんとなく「ハリー・ポッター」シリーズを意識しているのかな?と思うのは私の考えすぎでしょうか?
今年注目の日本作品
そろそろ映画作品の話題に移りましょう。
話題の中心に登るのはインディ・ジョーンズですが、今回は特に、是枝監督の『怪物』が最優秀賞のパルム・ドールを狙えるのではないかと期待が集まっています。
日本作品は他にも北野監督の『首』や二ノ宮隆太郎監督の『逃げ切れた夢』、そして短編映画に平井敦士監督の『おゆ』が出品されており、どれもが注目の作品です。
▶︎コンペティション部門
『怪物』 是枝裕和 監督
昨年の『ベイビー・ブローカー』に引き続き、2年連続での出品となった本作は、ある田舎町を舞台に些細な事件から発展した子どもの失踪事件を描いています。
映画のタイトルにもなっている「怪物」とは何なのか。
章立てに分けられた構成の中で、登場人物それぞれの視点を通じて見る「怪物」探しと、その結末が圧巻のヒューマンドラマです。
また、そのほかに今年のコンペティション部門では、部門で披露されたビム・ベンダース監督の『PERFECT DAYS』(原題)に日本人の役所広司さんが主演として出演し、その演技が高く評価されたことも注目を集めました。
▶︎カンヌ・プレミア部門
『首』 北野武 監督
コンペティション部門に入り切らなかった良作を集めた部門に出品されている北野監督の『首』は、監督自身が2019年に出版した歴史長編小説を映画化した戦国時代劇です。
北野監督といえば1977年に『HANA-BI』でヴェネツィア国際映画祭金獅子賞を獲得して以来、数々の受賞作を手がけており、カンヌ国際映画祭でも1999年の『菊次郎の夏』や2010年の『アウトレイジ』を出品している、映画界の巨匠の1人です。
そんな巨匠が今回の作品で描くのは、戦国武将・荒木村重の首を巡る戦国時代の騒乱であり、近年のNHK大河ドラマのものとは一線を画した「成り上がるために必死な血生臭い男たちの姿」。
北野監督が描く本当の戦国武将の生き様が見どころです。
▶︎ACID部門
『逃げ切れた夢』 二ノ宮隆太郎 監督
ACID部門とは、市場原理に抵抗する芸術的な作品を支援するために映画作家たちが創設した『インディペンデント映画普及協会(ACID)』が作品選定・運営するものです。
この部門には、昨年、山﨑樹一郎監督の『やまぶき』が日本映画として初出品されており、今年は約600作の応募作品から二ノ宮監督の作品が選出されました。
▶︎監督週間部門
『おゆ』 平井敦士 監督
この作品が選出された監督週間部門とは、先述のACID部門と並んでカンヌ国際映画祭の並行部門の1つで、新人監督の登竜門ともされている部門です。政治や商業を抜きにして、より自由な映画の選出を掲げて設けられたもので、フランス監督協会の主催によって作品が選ばれます。この部門には過去には北野武監督や大島渚監督が出品しており、ここから世界的に注目されるようになりました。
今回出品された平井敦士監督の『おゆ』は、富山市の銭湯を舞台に撮影された地域密着の短編映画。東京で暮らす主人公が、大みそかの夜に40年ぶりに訪れた故郷・富山の銭湯で懐かしい人々の生活と人生に触れ合っていくという内容です。監督が「日本の銭湯文化を映画にしたい」という思いから企画したというこの作品。日本人には馴染みのある文化ですが、カンヌに集まる海外の人にはどう伝わるでしょうか。
もちろん映画以外にも…
ここまで映画についてレポートしてきましたが、カンヌはリゾート地としても有名というのは前回の記事にも書いた通りです。
立ち並ぶヨーロッパの街並みや、白い砂浜と青い海。ゆったりと流れる時間に身を任せながら、太陽の陽を浴びて海岸線を歩けば、道端にふと置いてある映画祭のモニュメントや浜辺に建てられた野外映画スクリーンに出くわす….
カンヌの街はどこへ行っても最高ですが、この時期はやはり映画からは切り離せないようでした。
以上、第76回カンヌ国際映画祭の現地レポートでした。