ベンチプレス世界王者が語る「パワーリフティングの魅力と課題」

山下 保樹

山下 保樹

2023.03.17
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ベンチプレス世界王者の山下保樹さんは、会社員として働きながら、『8suki gym(ヤスキジム)』の運営もしています。ベンチプレス ・パワーリフティングの第一人者である山下さんに、パワーリフティング競技の魅力や、世界王者になるまでの道のりなどについて伺いました。

ベンチプレスで「日本一になれる」と確信

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私は小学生くらいのときから、漠然とですが「何かで日本一になろう」と目標を持っていました。しかし、初めからベンチプレス・パワーリフティング競技で日本一になるぞ!と決めていたわけではありません。

むしろ当時は野球をやっていて、高校生まで続けていました。自分で言うのも恥ずかしいですが、私は頭を使って何かに取り組むことが苦手です。正直、野球は運動神経や練習量はもちろんですが、頭脳戦ができる頭の回転も必要だと思い、高校の途中で野球を辞める決断をしました。

次に何をしようかと考えていたとき、たまたま学校の部活にパワーリフティング部がありました。「これなら日本一になれる」と、直観的に確信したので始めることにしました。

というのも、野球が頭脳も使う競技なら、ベンチプレスや陸上などは、『絶対値』を競うものだと私は考えています。つまり、自分の努力次第でいくらでも極めることができるので、頂点への道がより明確なところが魅力でした。

そこから1年後には高校チャンピオンになり、18歳になる頃には日本代表として選ばれるようになりました。

圧倒的な実績をつくる秘けつ

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高校チャンピオンや日本代表などの実績を出せた理由は2つあります。

1つ目は、シンプルに「取り組む時間を増やす」ことです。つまりは、めちゃくちゃ練習しただけです。高校のときでしたら、16時から19時まで部活で筋トレをし、部活が終わると栄養補給として食事をして、19時半〜22時までジムで筋トレ、そして、家に帰り寝る前に30分ほど筋トレをするという生活でした。

当時は、家には寝るために帰るという生活でした。そうやって、週に6日は筋トレをする生活を3年間やっていました。そのおかげで、数々の大会でタイトルを総なめにすることが出来ました。

2つ目は、「利益関係なしに、取り組んでいることが大好き」ということです。日本では、ベンチプレス・パワーリフティング競技はアマチュアスポーツです。大会に出るエントリー費や、会場までいく遠征費などすべて実費で出すことが当たり前です。

パワーリフティングをやっている方の多くは、会社員として働きながら活動費を自分で捻出しています。もちろん、私も例外なく会社員として働き、会社が終わると、自分で経営しているヤスキジムでの活動もしています。

パワーリフティングをするには資金がかりますが、それでもなぜ私がパワーリフティングを続けているかと言うと、答えはシンプルで「パワーリフティング競技が好きだから」の一択です。

敵はあくまで自分だけで、努力したら努力しただけ結果となっていく絶対値を競うこの競技が大好きなので、いくらでも練習できます。

パワーリフティング競技の現状と今後の目標

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ベンチプレス・パワーリフティングはとても魅力ある競技ですが、残念ながら、日本ではまだアマチュアスポーツとしての位置づけです。どれだけ努力しても「趣味を頑張っている」と言われてしまうかもしれません。

私が日本代表になったときは、日本代表専用のジャージを3万円ほど出して自分で準備しましたし、15年かけて念願の世界チャンピオンになったときでも、賞金などはありませんでした。とても夢がないことをお伝えしてしまっているかもしれませんが、これが今のパワーリフティング業界の現状です。

この業界は、ドーピングする選手がいることや、見栄えが良いと言える競技ではないのでまだまだ日本での認知はそこまで広まっていません。しかし、海外では正式にプロスポーツとして認めている国も多数あり、遠征費などの活動に対する手当もあります。

私は、ベンチプレス・パワーリフティング競技が大好きです。それなので、今ジュニアでやっている若い世代がより活躍しやすくなり、大人になったときに世界進出しやすくなる基盤をつくっていくことが今の目標です。

私自身がより活躍することで、パワーリフティング競技の知名度をさらに上げて、支援してくださる団体様と手を組めるように今後も実績をつくり続けていきます。

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