【現地レポ】日本の作品もノミネート!カンヌ国際映画祭2022

心地よい海風とただならぬ熱気。映画の街カンヌへ
あの映画で開幕!ノミネートされた日本作品とは
目玉はやっぱりあの人!憧れのレッドカーペットで大盛況
映画祭だけではない!高級リゾート地やアートも

心地よい海風とただならぬ熱気。映画の街カンヌへ

世界三大映画祭の1つであるカンヌ国際映画祭

今年(2022年)で75回目を迎える映画の祭典が現地時間の5月17日に開幕しました。

私がカンヌに来るのは今回で2回目。

今回は日本からドイツ経由での現地入りというフライト行程でした。

羽田空港から飛行機で15時間。

国際情勢の影響もあって通常よりも時間を要してしまったのですが、経由地のフランクフルトで乗り換えの待ち時間の間にドイツビールで喉を潤しながら元気をチャージ!

準備万端の状態でカンヌ最寄りのニース・コート・ダジュール国際空港(NCE)へ到着。

そこではフランスの晴れやかな青空が私を迎えてくれました。

ニースから目的地である映画の街カンヌまでは車移動で30分。

フランクフルトで飲んだビールでほろ酔いになった体に海風を感じながら車に揺られていると、先ほど見た青空と同じようにアーティスティックな「75」の看板が辺り一面に現れました。

この看板、どこかで見覚えがあると思ったら、映画『トゥルーマン・ショー』(1998年)のワンシーンにそっくり!

実はこれ、映画のシーンが今回の映画祭のメインビジュアルとして採用されているそうです。

海辺にあるカンヌの街の空気は肌に心地よいのですが、それ以上に感じるのが人の熱気

年に一度のお祭りのために世界中から映画制作関係者や映画プロモーション会社などの映画人が集まってきており、祭典の始まる前からただならぬ雰囲気が街中に立ち込めていました。

後から知ったことですが、今年は現在のウクライナ情勢を受け、開幕前のオープニング・セレモニーとして、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が首都キーウから生中継でスクリーンに登場してスピーチされる、というサプライズがあったそうです。

あの映画で開幕!ノミネートされた日本作品とは

そんなお祭りムードに包まれながら、一夜明けての5月17日。

いよいよ第75回カンヌ国際映画祭が開幕となりました。

今年は日本で話題となった『カメラを止めるな』(2017年)の海外リメイク作品である『キャメラを止めるな(英題:Final Cut)』(2022年)がオープニングとして上映されてスタート。

オリジナル版『カメラを止めるな!』(2017年)にも出演した竹原芳子さんを含め、今作のアザナヴィシウス監督らが伝統のレッドカーペットを歩くと観客やマスコミに熱く歓迎されただけでなく、映画の上映後には数分間にわたってスタンディングオベーションが起きました。

なお、今回のカンヌ国際映画祭に出品・ノミネートされた日本の映画は以下の2作品です。

●コンペティション部門

『ベイビー・ブローカー』 是枝裕和​​監督

是枝裕和監督が初めて韓国で製作した映画で、両親が育てられなくなった赤ちゃんを匿名で受け入れる、いわゆる「赤ちゃんポスト」をテーマにした作品です。

赤ちゃんポストに預けられた赤ちゃんを盗んだ男たちが、ひょんな成り行きから赤ちゃんの実母と共に養父母探しの旅に出る様を描いています。

是枝裕和監督による『ベイビー・ブローカー』(2022年)からは主演のソン・ガンホが男優賞を獲得し、さらに作品に対してもエキュメニカル審査員賞が授与されました。エキュメニカル審査員賞とは、キリスト教関連の国際映画組織に属する6人の審査員によって選ばれる、カンヌ国際映画祭の独立部門の1つです。

『ベイビーブローカー』紹介記事はこちら

ある視点部門

『Plan 75』 早川千絵監督

こちらは少子高齢化がテーマで、超高齢化社会となった近未来の日本を舞台にした作品です。

超高齢化の解決策として、75歳を過ぎた人は自分の意思で安楽死するかどうかを選べる仕組みが導入された社会で、長年連れ添った夫に先立たれた78歳の女性が自分の死生観について悩みながら生きるストーリーです。

映画祭で正式上映されたあとは、会場からはしばらく大きな拍手が送られました。

その後は、早川監督はじめ出演者の磯村勇斗とステファニー・アリアンは日本メディア向けの記者会見に参加されたようです。

もちろんこれ以外にも、数多くの映画が会場に持ち込まれていて、自国での公開に向けてアピールや営業活動が盛んに行われていました。

特に目を引いたのは、今年の秋に公開される新海監督の『すずめの戸締り』(2022年)でしょうか。

近年では『君の名は。』(2016年)で大ヒットしただけに、新作のアピールにも力が入っていました。

目玉はやっぱりトム・クルーズ!憧れのレッドカーペットで大盛況

そして、忘れてはいけないのがレッドカーペット!

カンヌ国際映画祭といえばコレ!と思い浮かべる方も多いのではないでしょうか?

もちろん私も興奮してたまらなかったのですが、やはりレッドカーペットを歩く映画スターや映画著名人を見るのは一大イベントということで、とにかく人・人・人!!

何より注目が集まり、また近づくことさえできなかったのは、今回のカンヌで名誉パルム・ドールを贈られたトム・クルーズの登場シーンだったと思います。

私は遠目に見ることもかなわず、残念ながら今回はカーペット近くに置かれたスクリーンで見ただけでしたが、それでも一流スターの魅力や空気が伝わってくるほどの場の盛り上がりでした。

トム・クルーズといえば、日本でもまもなく公開される『トップガン・ マーヴェリック』(2022年)に注目が集まっていますね。

前作の『トップガン』(1986年)こそ、トム・クルーズをハリウッドスターの座に押し上げた映画だと思います。

失読症という言語障害を患い、書かれた文字が読めない(bとdの判別ができないそうです)状態のため、映画のセリフは全て声に出して読み上げることで覚えるという大変な努力をされているのは有名かと思います。

それ以外にも、『ミッション・インポッシブルシリーズ』でスタントマンを使わずに、難易度が高くまた危険なシーンの撮影に挑み続けるなど、彼の映画にかける情熱に匹敵する俳優はそうはいないのでは無いでしょうか。

そんなトム・クルーズが、自身にとって大きな転機になった作品を、実に35年ぶりに正統派の続編として世に送り出す今作は、私個人としても期待せずにはいられない作品です。

余談ではありますが、今回のカンヌ国際映画祭は「戦争」がテーマの1つでもありました。

今回、映画祭の中では戦争関連の特集デーも設けられていました。

悲しいことに、先月ウクライナでロシア軍に殺害されたとされるリトアニア人のマンタス・クベダラビチュス監督の遺作となったドキュメンタリー映画『マリウポリス2』(2022年)が、今回特別上映されました。

また、レッドカーペットにウクライナ国旗のボディペイントをした女性が乱入した一場面もあり、やや穏やかではない一面もみられました。

映画祭だけではない!高級リゾート地やアートも

話は変わりまして、カンヌといえば映画祭、と連想してしまいがちですが、この街はフランスの中でも地中海に面した高級リゾート地としても有名です。

真っ白な砂浜に、澄み切った青い空。

照りつける太陽の光を浴びて輝く紺碧の海。

そこには洗練されたショップやカフェ、レストランが並んでいます。

5月になると街が映画一色に染まり、そこかしこに各国・各映画関連会社のテントやブースが建てられますが、本来はとても静かな港町です。

街の見所は、何と言ってもパレ・デ・フェスティバル・エ・デ・コングレ。

映画祭でもメイン会場となる場所で、パルム・ドールや各賞の発表・授賞式はこの会場で行われます。

ここには映画祭の時期以外でもレッドカーペットが敷かれており、また世界中の有名映画監督や映画スターたちの手形があるため、映画好きはもちろん世界中からの観光客に人気の場所です。

華やかな海辺のリゾートエリアだけでなく、山側へ目を向けると、そこにはカンヌの街全体を見下ろすようにノートルダム・ド・レスぺランス教会があります。この教会から夜の街の夜景を眺めるのもオススメです。

最後に、もしあなたがアートに興味があれば、カンヌにはピカソの作品を常設展示している美術館が2つあります。映画やリゾートだけでなく絵画にも触れることができるカンヌの街に、一度足を運んでみてはいかがでしょうか。

以上、第75回カンヌ国際映画祭の現地レポートでした。