禅宗僧侶
赤坂陽月×ワクセル
今回のトークセッションのゲストは、禅宗僧侶の赤坂陽月(あかさか ようげつ)さんです。
僧侶を務めながら、「お坊さんヒューマンビートボクサー」としてYouTubeで人気を集めています。
なぜお坊さんがビートボックスをして、そしてYouTuberとして活躍しているのでしょうか? その経緯や思いを赤坂さんに伺いました。
インタビュアーは、ワクセル総合プロデューサーの住谷と、TikTokで活躍中の「くびれ姉さん」こと渋沢一葉さんです。
音楽家として海外で挑戦した日々
渋沢: 赤坂さんは1982年東京生まれ、2004年からヒューマンビートボックスを本格的に始められたとのことですが、なぜヒューマンビートボックスにチャレンジされたのでしょうか?
赤坂:
日本におけるヒューマンビートボックスのパイオニア的存在で、AFRA(あふら)さんという方がいらっしゃるんですが、その方のCDを友達に聞かせてもらったことがきっかけでした。
友人から「これ、口でやっているんだよ」と言われて衝撃を受け、自分でも見よう見まねでやってみたのがはじまりです。
渋沢: その後、2013年に海外に行かれたんですね。
赤坂:
はい。ヒューマンビートボックスを始めてしばらくした後に、「自分のヒューマンビートボックスだけで生活できるのか」と挑戦したくなりました。
そのフィールドとして、ストリートパフォーマンスが日本より定着している海外を選びました。
いわゆる「バスキング」というもので、路上でアート表現をしてお金を稼いで
いる方がたくさんいます。
私は、アメリカではニューヨーク、オーストラリアではシドニー・メルボルンなど海外の大きな街で活動していました。
渋沢: 実際に、海外でチャレンジをしてみていかがでしたか?
赤坂:
海外の方は、良いと思ったものに素直に反応してくれるので、実力主義という印象が強いです。
道行く人を楽しませたり、誰かにインスピレーションを与えたりできれば、その対価としてお金を目の前の箱に入れてくれます。
実際に、その日稼いだお金で家賃を払ったり、ご飯を買ったりという生活スタイルで、海外で暮らすことができました。
住谷:
すごいですね!
しかしそうした生活はリスキーでもありますよね。大体どのくらい稼げるものなんですか?
赤坂: 日によって変わりますが、全然稼げないときは1,000円とか2,000円でしたが、日によっては、1日5万円ほどの稼ぎになることもありました。
僧侶として第二の人生を歩む
渋沢:
海外でヒューマンビートボックスや演劇で活躍されていたわけですが、その後、2015年に出家してお父様の跡を継がれたんですよね。
日本に戻って出家しようと考えられたのはなぜですか?
赤坂:
父は、私が学生の頃に一般人からお坊さんになり、岩手県のお寺の住職になりました。
自分としてはもともと跡を継ぐこと視野に入れていたので、ヒューマンビートボックスの音楽で一旗を揚げてから、第二の人生としてお坊さんになるのも良いかなと考えていました。
海外から一時的に日本に帰ってきた際、「もし継ぐ気があるなら、修行は若いうちに行ったほうが良い」と父に言われました。また、当時父は70歳を過ぎた頃で、「お前がお経のひとつもあげられないとなると、他の人に継いでもらうしかない」という話をされまして。
音楽家としての志は道半ばだったんですが、父の話を聞いて、お坊さんをやろうと決心がつきました。
住谷: なるほど。修行はどんなことをされたんですか?
赤坂:
まだ暗い4時に起きて洗面を済ませ、坐禅堂に行って坐禅をします。その後、朝のおつとめをするというのが1日の始まりです。夜は9時に就寝していました。
坐禅をするのは禅宗の修行として確固たる部分なので、毎日朝と晩に坐禅をするのが欠かせない修行でした。
渋沢: 赤坂さんの場合、ビートボックスをされていたので、座禅のときなど、リズムを刻んでしまったりするのでは、とちょっと心配になっちゃったんですけど……。笑
赤坂: 坐禅をしている時は、さまざまな思いが沸き起こってきます。たとえば、足がしびれたな、お腹空いたな、などです。こうした思考は自然に沸き起こってくるものですが、その中でリズムやビートが聞こえてくるというのは、なくはないですね。
般若心経のビートボックスが世界で大ヒット
渋沢: 修行を続けられた赤坂さんですが、2020年にYouTubeで般若心経のビートボックスリミックスが大ヒットとなりました。
住谷: 累計再生数が400万回以上で、高評価も13万以上。これは驚異的な数字だと思いますが、ヒットした時はどんな心境でしたか?
赤坂:
正直、自分でもすごく驚きました。最初は日本の方ではなく海外の方がコメントをくれたり、高評価やシェアをしてくれました。
この経験を通して、自分のなかで「世界に受け入れられた」と感じて、すごく嬉しかったです。
渋沢: 海外での経験が、すべてつながったんですね。
赤坂:
かつて自分で音楽をしていたときも、言葉を超えてたくさんの人の心に響いたら良いなという思いがありました。
お坊さんとして、自分の音楽にお経を合わせることで、世界の人に届いたことが良かったです。
住谷: やはり、音楽を続けたいという気持ちがあったのでしょうか。
赤坂:
修行を終えて東京に戻ってきた時に、やっぱり音楽をやりたいという気持ちはありました。お坊さんとして、何かを音楽と共に表現できたら良いなと。
そこで、いままでビートボックスで作ってきた音楽にお経を合わせてみたらどうなるんだろうと思って、実験的にやってみたんです。
住谷:
反感とかはありましたか?
特にお寺には宗派もありますよね。
渋沢: 私も思いました、檀家さんとかが「やめなさい!」って言わなかったんですか?
赤坂:
逆に、称賛していただくお声のほうが圧倒的に多かったです。
お経というのは多くの人にとって、法事やお葬式で聴くといった、どちらかというと地味で暗いイメージがあります。
でも、実は違うんだよと。現代的な音楽に合わせることで、お経が地味で暗いものではなく、違うものだということを感覚的に捉えられるんじゃないかと思いました。
住谷: その発想がすごいです。そこから、何かにつなげたいという思いが強かったんでしょうか?
赤坂:
若い人ってお寺に行く機会がないので、何を通して仏教やお経を知ってもらえるだろうかと考えた時に、「インターネットだ」と気づきました。特にYouTubeは老若男女問わず観るものですしね。
ビートボックスとお経という、すごく尖った表現ではあるんですが、若い人に何か伝わるものがあれば良いかなと思っています。
音楽を通して心の静寂をガイドする
渋沢: 現在はYouTubeでどんなことをされているんですか?
赤坂:
自分の音楽を使って瞑想をガイドしていくということをやっています。
瞑想は禅宗では坐禅というんですが、坐禅は静かな場所で静かに座って行うのが伝統的なやり方です。
ただ、慣れていない人にとっては静かな場所に座って瞑想することを苦痛に感じたり、集中できない方も多いんです。
そこで、人の心が落ち着くような音楽をライブで演奏しながら、同時に瞑想をガイドしていくという活動です。
住谷: いま、一番力を入れているものはなんですか?
赤坂:
自分の音楽を通して、心が静まるようなお手伝いができればと考えています。ご時世もあり、ストレスを抱えている方がやはり多いと思うんです。
動画に寄せられたコメントでも、動画を観ることで「よく眠れる」というご意見があります。
不眠に悩んでいる方も多いと思いますが、そうした方の役に立ちたいです。
禅のなかには「静」と「動」というものがあります。現代生活の中で置き換えるのであればリラックスしている時を「静」、身体を動かして自分を解放している時を「動」とします。
例えば、ダンスがありますね。ダンスは「踊れる人」だけのものというイメージがありますが、元々の起源は、誰かに見せるというよりは、自らの意識を解放するものなんです。
そうした「動」を現代的に解釈して、音楽とダンスを通して、自分を解放する機会を提供していきたいと思っています。
コラボレーションで広がる「可能性」
渋沢: こちらの楽器はどんなものなんですか?
赤坂: ハンドパンと呼ばれる楽器で、叩いて音を出します。
渋沢: 演奏していただくと、想像していた音とは全く違う音色が聞こえますね。ハンドパンとの出会いはどんなものだったんですか?
赤坂 知り合いのミュージシャンが演奏しているのを見て、すごく良いなと思って、これもお経と合わせられるはずだと考えました。
住谷: すごい組み合わせですね。赤坂さんにゲストで来ていただいたのも、お坊さんでヒューマンビートボックスで音楽というのが新しい組み合わせで。以前お会いした際に、「これからも新しいことをやっていく」と伺っていたので、ぜひゲストにお呼びしたいなと思ったんです。
赤坂: このハンドパンとお経の組み合わせも思いつきだったんですが、新しく取り入れました。ワクセルのコラボレーションという姿勢にぴったりだと思います。
渋沢:
ハンドパンの音色に癒されて心地良い気持ちになったので、今日はよく眠れそうです(笑)
赤坂さん、今回のコラボレーションはいかがでしたか?
赤坂: 新しい試みをされているワクセルさんとこのような形でコラボレーションができて、大変嬉しく思っています。
住谷:
赤坂さんは今後、VRにも挑戦される予定なんですよね。 「お坊さん×○○」という形で何かコラボレーションできないかとワクワクしています。
本日はどうもありがとうございました!
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