「ないなら自分で作る」激務の私を救った一杯のお茶から、日本の一次産業に新たな光を

新卒で入社した羽田空港国際線でのシフト勤務や多忙な秘書業務を経て、2025年にティーブランド「CHALABO」を立ち上げた竹下真由さん。自身の原体験を起点に、現代のライフスタイルに寄り添うお茶の価値創造や一次産業の支援に取り組む竹下さんに、ブランド誕生の裏側から未来への展望までお話を伺いました。
胃を痛めながら走っていた日々とお茶の力との出会い

私の社会人生活のスタートは、羽田空港の国際線での勤務でした。24時間体制のシフト制で、深夜0時に仕事が始まる日もあれば、18時間ほど拘束される宿泊勤務もあり、昼夜が逆転する不規則な生活が日常でした。その後、企業の秘書業務へ転職しましたが、そこでも深夜まで業務が続く毎日。社用携帯を握りしめながら眠りにつき、わずか3〜4時間の睡眠で出勤する日々を送っていました。
当時は常に疲労困憊で、胃を痛めながらも毎日のように栄養ドリンクを流し込んでなんとか体を動かしていました。
そんな張り詰めた生活が一変したのが、コロナ禍でのリモートワークでした。静岡県静岡市にある実家へ久しぶりに帰省した際、母が急須で淹れてくれた一杯のお茶を飲んだとき、胸の奥にすっと染み渡るような衝撃を受けました。心身の緊張が解けていくと同時に、「このお茶には、私が頼り続けていた栄養ドリンクと同じ、あるいはそれ以上の力があるのではないか」と直感したのです。
そこからお茶について深く調べるうちに、驚くべき現実を知ることになりました。後継者不足によって「静岡のお茶農家は10年後にはいなくなってしまうかもしれない」と言われていること、茶畑が次々と姿を消していること、さらには静岡県の茶生産量が全国1位ではなくなってしまった事実です。※2026年現在一番茶の生産量全国1位を奪還
「日本の誇るお茶農家さんたちを応援したい」「かつての私のように、身を削って一生懸命働いている人たちの力になれるドリンクを作りたい」。そう思い市場を探しましたが、求めているようなお茶の栄養ドリンクはどこにもありませんでした。
「世の中にないなら、自分の手で作りたい」その思いが、起業への確固たる決意となりました。
当時私は上場企業の正社員。退職を母に打ち明けたときは、「なぜそんな安定した職を辞めるの?」と反対されました。それでも、「20代のうちに挑戦したい」という気持ちが強く約2年かけて準備を進めて独立へと踏み切りました。
自ら現場へ足を運び、納得のいく一杯を形にするまで

事業を立ち上げるにあたって強く意識したのは、「現代を生きる人々の生活動線に寄り添うこと」でした。現代の暮らしにおいて、自宅に急須を置いている方は決して多くありません。だからこそ、伝統の良さを大切にしながらも、手軽に淹れられるティーバッグや、ペットボトルの水にそのまま溶かして持ち運べる粉末スティックタイプに設計しました。
しかし、手軽さだけで終わらせず、飲んだ瞬間に誰もが感動するような本物のお茶を届けたい。その一心で、自ら静岡の茶畑へと何度も足を運び、農家さん一人ひとりと直接顔を合わせてお茶を試飲し、お茶にかける想いを語り合いました。
現場の農家さんは、お茶を育てるプロフェッショナルですが、同時に販路の開拓に頭を悩ませている方も少なくありません。そんな現場へ私が飛び込んでいったとき、「若い人が入ってきてくれて嬉しい」「お茶のこと、よろしく頼むね」と温かく迎えてくださった言葉は、今でも私の大きな原動力になっています。
素材にも徹底してこだわり、茶葉には豊かな旨みと香りが特徴の「一番茶」のみを厳選。さらに、レモングラスや柚子を掛け合わせ、その時々の気分や体のコンディションに寄り添うブレンドティーを追求しました。加工工場や茶匠、ブレンドする副原料まで一切の妥協を排して納得のいく商品が完成するまでに、実に2年もの歳月を費やしました。
最初にリリースした緑茶とレモングラスの粉末スティックは、オフィスで働く方々から「大事なプレゼンや会議の前に集中力を高めるために飲んでいる」「毎日の心のお守りになっている」といった嬉しい声を数多くいただいています。かつての自分と同じように戦う人々の日常に、そっと寄り添えていることを実感する瞬間です。
秘書経験と一次産業を結び、正当な価値を世界へ届ける

現在、CHALABOでは日本茶×おもてなしを軸にオフィス向けのお茶の定期配送をはじめ、BtoB領域の取り組みも本格化させています。その一つが、私の前職である秘書経験を活かした「法人向け贈答品の代理選定・配送サービス」です。
多くの企業では、お中元やお歳暮などのギフトをカタログから定型的に選ぶケースが一般的です。しかし、贈り先の企業や担当者の背景を丁寧にヒアリングした上で、「その方にとって最善の一品」をご提案・お届けできれば、贈り物本来の温かみと価値が何倍にも伝わります。
さらにこの取り組みは、一次産業全体の支援へとつながっています。素晴らしい農産物を育てていながら、独自の販路を持たない全国の生産者さんとタッグを組み、「極上のお茶×黒豚」や「お茶×旬のフルーツ」といった、産地の魅力が詰まった独自のギフトセットとして展開を広げています。
また、現在は国内にとどまらず海外展開にも力を注いでいます。日本には世界に誇るべき素晴らしい一次産業の産物や、伝統技術、建築技術が無数に存在しますが、国内だけではその価値に見合った正当な対価を得られていない場面が多々あります。日本の本質的な技術や産業の価値を、正当に評価される世界のマーケットへ橋渡ししていくことが、私の大きな挑戦です。
また、これまで培ってきた経験や資格を活かし、飲食店やサロンを対象とした接客やサービスの質の向上に向けた支援も行っています。
CHALABOの商品は、一つひとつに想いとこだわりを込めてお届けしているものです。
だからこそ、商品を導入してくださる企業様や店舗様にも、お客様から愛され、選ばれ続ける存在であってほしい。
そんな願いから、商品をお届けするだけでなく、接客やサービスの面からもお力になりたいと考え、この取り組みを始めました。
起業してから大切にしている私の信条は、「与えられることを当たり前と思わず、常に自らギブの精神でいること」です。
秘書時代、尊敬する社長からいただいた「秘書は会社の顔。いつ見られても恥じない姿でいなさい」という言葉が、今も私の根底に息づいています。公共の場で身の回りを綺麗にしてから出る、落ちているごみを拾うといった、誰も見ていないような些細な所作の積み重ねこそが、人間としての信頼や事業の強さを作ると信じています。
日本の大地と農家さんが育んだ一杯のお茶から、関わるすべての人へ温かな循環と活力を届けられるよう、これからも誠実に挑戦を続けていきます。