「1on1ミーティング」が逆効果になる理由。アドラー心理学が明かす部下の本音を引き出せない上司の共通点

あい

あい

2026.05.13
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アドラー心理学を用いた、子育て・起業・自己実現サポートを行う、あいさんの連載コラムです。「1on1ミーティング、やってるけど効果がない…」そう感じたことはありませんか?私もかつて、大手広告代理店の企業文化改革チームリーダーとして、多くの管理職の方々からこんな声を聞いていました。今回は、アドラー心理学が明かす「1on1が逆効果になる理由」と、部下の本音を引き出す「横の関係」構築法について、企業研修での実例を交えながらお伝えします。

「1on1を導入したけど、部下が本音を話してくれない」 「毎回、形式的な報告で終わってしまう」 「何を話せばいいのか分からない、と部下に言われた」

実は、2023年のHR総研の調査によると、1on1を導入している企業のうち、約7割が『期待した効果が得られていない』と回答しています。

なぜ、こんなにも1on1が形骸化してしまうのでしょうか?

そんな時、私はアドラー心理学の言葉を思い出しました。

「『縦の関係』のまま対話しても、部下の本音は引き出せない」

1on1が失敗する理由…それは、上司が『褒める』『アドバイスする』という『縦の関係』から抜け出せていないからだったのです。

今回は、アドラー心理学が明かす「1on1が逆効果になる理由」と、部下の本音を引き出す「横の関係」構築法について、企業研修での実例を交えながらお伝えします。


1on1は形骸化!?「褒める」「アドバイスする」が部下の心を閉ざす理由 

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まず、なぜ1on1ミーティングは形骸化してしまうのでしょうか?

私が企業研修で出会ったAさん(40代・課長職)は、こう悩んでいました。

「1on1で部下を褒めているのに、なぜか距離が縮まらない。むしろ、部下が表面的な返事しかしなくなった」

Aさんは、人事部から「1on1では部下を褒めて、モチベーションを上げましょう」と指導されていました。だから、毎回こう声をかけていたのです。

「今月の営業成績、良かったね! その調子で頑張って!」

でも、部下は「ありがとうございます」と返すだけで、それ以上の会話が続きませんでした。

なぜでしょうか?

アドラー心理学では、「褒める」という行為は、実は『縦の関係』を強化すると指摘します。

アドラーはこう述べています。

「褒めるということは、能力のある者が、能力のない者に下す評価である」

つまり、「褒める」という行為には、『上司=評価する側、部下=評価される側』という上下関係が暗黙に含まれているのです。

部下は、褒められることで、こう感じます。

「自分は、上司の期待に応えなければならない」 「本音を話したら、評価が下がるかもしれない」

だから、部下は表面的な返事しかしなくなるのです。

心理学者のエドワード・デシ(Edward Deci)とリチャード・ライアン(Richard Ryan)が提唱した自己決定理論(Self-Determination Theory)でも、外部からの評価(褒める)は、内発的動機を低下させることが示されています。

同じように、「アドバイスする」という行為も、縦の関係を強化します。

例えば、部下が「最近、チームの雰囲気が良くないんです」と悩みを打ち明けた時、上司がこう返したとします。

「それなら、もっとコミュニケーションを取るべきだね。ランチに誘ってみたら?」

一見、親切なアドバイスに見えますが、実は部下はこう感じています。

「上司は、私の話を聞いてくれていない」 「結局、答えを押し付けられただけだ」

アドラーはこう警告します。

「アドバイスは、相手の課題を奪う行為である」

部下が求めているのは、答えではなく、自分の気持ちを受け止めてもらうことなのです。


私が目撃した「1on1失敗事例」縦の関係が部下を追い詰めた瞬間 

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私が企業研修で衝撃を受けたのは、ある企業のBさん(30代・係長職)のケースでした。

Bさんは、部下のCさん(20代)と1on1をしていました。Cさんは、最近パフォーマンスが落ちており、Bさんは心配していました。

1on1で、Bさんはこう切り出しました。

「最近、元気ないね。何か困ってることある?」

Cさんは、少し躊躇した後、こう答えました。

「実は、今の仕事が自分に向いていないんじゃないかと思っていて…」

その瞬間、Bさんはこう返しました。

「何言ってるの! あなたは優秀なんだから、自信を持って! もっと頑張れば絶対できるよ!」

Cさんは、それ以上何も言わず、「はい、頑張ります」とだけ答えました。

後日、私がCさんに個別にヒアリングした時、Cさんはこう言いました。

「本当は、もっと話したかったんです。でも、上司に『頑張れ』と言われた瞬間、『やっぱり話しても無駄だ』と思いました」

これが、「縦の関係」が生む悲劇です。

Bさんは、善意で励まし、アドバイスしたつもりでした。でも、Cさんにとっては、「自分の気持ちを否定された」と感じたのです。

アドラーはこう述べています。

「他者の悩みに対して、すぐに解決策を提示することは、相手を無能だと見なしているに等しい」

心理学者のカール・ロジャーズ(Carl Rogers)も、「人は、アドバイスを求めているのではなく、共感を求めている」と指摘しています。


実践!アドラー流「横の関係」で部下の本音を引き出す1on1の3ステップ 

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では、どうすれば部下の本音を引き出せる1on1ができるのか?

私が企業研修で実践し、効果があったアドラー流「横の関係」構築法の3ステップをご紹介します。


ステップ1: 「褒める」ではなく「承認する」存在を認める言葉を使う

まず、「褒める」を「承認する」に変えることです。

×「今月の営業成績、良かったね! その調子で頑張って!」(褒める=評価)
○「今月、◯◯に取り組んでくれたんだね。ありがとう」(承認=存在を認める)

この違いは何でしょうか?

「褒める」は、結果や成果を評価しています。 「承認する」は、その人の行動や努力そのものを認めるのです。

アドラーが提唱する「勇気づけ(Encouragement)」とは、結果ではなく、プロセスや存在そのものを認めることです。

例えば、

  • 「あなたが、チームのために動いてくれたこと、気づいていたよ」
  • 「あなたが、試行錯誤している姿を見ていたよ」
  • 「あなたがいてくれて、チームが助かっているよ」

これらの言葉は、「あなたの存在そのものに価値がある」というメッセージを伝えます。

私が研修で指導したAさんは、この言葉に変えてから、部下が少しずつ本音を話すようになったと報告してくれました。


ステップ2: 「アドバイスする」ではなく「問いかける」課題を奪わない

次に、「アドバイスする」を「問いかける」に変えることです。

×「それなら、もっとコミュニケーションを取るべきだね」(アドバイス=答えを押し付ける)
○「あなたは、どうしたらいいと思う?」(問いかける=一緒に考える)

アドラーが提唱する「課題の分離(Task Separation)」では、部下の課題は、部下自身が解決することが重要です。

上司の役割は、答えを与えることではなく、部下が自分で答えを見つけられるようにサポートすることです。

私が指導したBさんは、Cさんとの1on1で、こう問いかけました。

「今の仕事が向いていないと感じているんだね。それは、どんな時に感じる?」

すると、Cさんは、少しずつ自分の気持ちを話し始めました。

「営業の数字を追うことがプレッシャーで…。本当は、もっとお客さんと深く関わる仕事がしたいんです」

Bさんは、さらに問いかけました。

「なるほど。じゃあ、今の仕事の中で、そういう要素を増やすには、どうしたらいいと思う?」

Cさんは、自分で考え、「既存顧客のフォローアップに時間を使いたい」と答えました。

この対話を通じて、Cさんは自分で解決策を見つけたのです。

心理学者のナンシー・クライン(Nancy Kline)も、著書『Time to Think』の中で、「質問こそが、人の思考を深める最も強力な手段である」と述べています。


ステップ3: 「評価の場」ではなく「対等な対話の場」にする横の関係を体現する

最後に、1on1を「評価の場」ではなく「対等な対話の場」にすることです。

アドラーが提唱する「横の関係(Horizontal Relationship)」とは、上司と部下が、対等な立場で対話することです。

具体的には、

  • 「私も同じような経験があるよ」と自己開示する
  • 「あなたの意見を聞かせてほしい」と対等な立場で聞く
  • 「一緒に考えよう」という姿勢を示す

私が指導したAさんは、1on1の最初にこう伝えるようにしました。

「この時間は、評価の場じゃないよ。あなたの話を聞かせてほしい。私も一緒に考えたいから」

この一言で、部下の表情が変わったそうです。

心理学者のエイミー・エドモンドソン(Amy Edmondson)が提唱する「心理的安全性(Psychological Safety)」でも、上司が弱さを見せること、対等な立場で対話することが、チームの信頼を生むとされています。


【まとめ】 1on1は「縦の関係」から「横の関係」へ

1on1ミーティングが形骸化する理由は、「縦の関係」のまま対話しているからです。

「褒める」「アドバイスする」という行為は、一見親切に見えますが、実は部下の本音を引き出すことを妨げているのです。

アドラー心理学が教えてくれた最も大切なことは、「横の関係」で対話すること

「承認する」「問いかける」「対等な対話をする」この3つを実践した時、1on1は初めて、部下の本音を引き出す場になります。

あなたも今日から、1on1を「評価の場」から「対等な対話の場」に変えてみませんか?

その一歩が、部下との信頼関係を築き、チーム全体を活性化させる大きなきっかけになるはずです。


【著者プロフィール】 あい / アドラー心理学講師・著者 2児の母。アドラー心理学の実践で、たった3カ月で家族崩壊から家族円満へ変化。2024年起業。「思考のクセ診断」を開発し、100名以上の子育て・自己実現をサポート。関西・大阪万博登壇。国際アドラー心理学会(IAIP ASIA2026)日本代表。10カ月連続ベストセラー著書『アドラー流子育てやってみた』。Instagram: @ai_sensei_0310

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