人生初イベントは止まらない—— 起業という扉を開けた人

「パラレル活動家」として多角的な視点を持つ岡田慶子(おかだけいこ)さんの連載コラム第17回です。今回のパラレル活動家は、起業家として定年女子のセカンドキャリア支援に挑む立花祐子(たちばなゆうこ)さん。合理的な「仕組み作り」で、仕事も趣味も欲張りに楽しむ彼女の根底には、ある一貫した信念がありました。人生のハンドルを自分で握り続けるための、新しい「視座」とは。キャリアの転換点に立つあなたへ贈る、自由としなやかさの物語です。
起業から料理教室まで。人生を遊び尽くす“楽しみ人”の正体

彼女の年初のSNS投稿に、こんな一文がありました。
「慎みなくいろいろなことに手を出してしまうのは、自分の性格だし今さら直そうとは思わない。来年も“人生初イベントと学び満載”の年にしたい」
これを読んだとき、私は思わず頷いてしまいました。
共感、大大大です。私。
人生初のことをやる。
新しい世界をのぞく。
興味のままに手を伸ばしてみる。
年齢を重ねるほど慎重になる人も多いかもしれません。
でも、むしろ経験を重ねたからこそ楽しめる世界もあるのではないか。
そんなことを思わせてくれるのが、立花祐子さんという人です。
起業家であり、定年女子のコミュニティを共同運営し、料理教室も主宰する。
その一方で、ランニングや登山、ワインを楽しみ、50歳からヴァイオリンまで始めてしまう。まさにオールラウンドな“人生の楽しみ人”です。
「働くことは自由につながる」——自立のハンドルを握り続けるためのキャリア

祐子さんのキャリアの土台には、外資系製薬会社で30年以上働いてきた経験があります。
MRからキャリアをスタートし、臨床開発、そして外部パートナーを巻き込みながらプロジェクトを動かす仕事へ。研究や現場を「仕組み」で回す側としてキャリアを築いてきました。
そんな立花さんがさらりと言う言葉があります。
「働くこと、つまり自分でお金を稼ぐことは自由につながる」
少しドライに聞こえるかもしれません。
しかし彼女にとってそれは、人生を自分で選ぶための現実的な知恵です。
離婚という大きな転機においても、彼女は「自由」を選択したと言います。
自分の足で立ち、自分で人生のハンドルを握る。
仕事とは、そのための手段。
その姿勢は、社会人になった時の初心から今に至るまで一貫しています。
そんな祐子さんの面白さは、徹底した合理性がどこか優しさのように機能しているところです。
「物事がピタッと収まる感覚が好き」
そう語る彼女にとって、料理はマインドフルネスのような時間だそうです。
そして、忙しい日常の中でそれを続けるために、ホットクックやヘルシオといった「メカ」を上手に使いこなしています。そんな話を周囲にしたところ「使いこなせていない」「レパートリーがない」という声が上がり、料理教室をすることになっていくのだから、祐子さん面白すぎです。こうして身の回りの小さな気づきが次の活動へとつながっていくのも、彼女らしいところです。
違和感を原動力に。定年女子のスキルを眠らせない「第二の挑戦」

広がり続ける好きなことを続けるために、どうしているのかと聞くと、「仕組みを作る」とのこと。例えば、と話してくれたのは運動習慣です。
朝、起きてから「ランニングをどうしようかな」と設定するから逃げがちになる。
だから、ランニングを続けるために、ウェアを枕元に置いて寝る。
意思の力を使わずに体が動くよう、環境を整えるのだそうです。
SNSでランニングしている投稿を見るたび、できていない自分を恥じたりするのですが
無理なく続く仕組みで回しているだけ、と笑うあたりの柔らかさを尊敬します。
そんな彼女が今、最も情熱を注いでいるのが「定年女子のセカンドキャリア支援」です。
キャリアを積んだ女性たちが定年後に能力を眠らせてしまうのは、社会的に大きな損失ではないか。
その違和感をきっかけに、彼女は、2025年、関西の女性起業家ビジネスコンテスト「LED関西」に挑戦し、セミファイナリストになりました。
そして2026年3月、株式会社アルトラビスタ(AltraVista)を設立しました。
社名の意味は「もう一つの視座」。
転職市場では年齢や性別で評価されにくい女性たちのスキルを言語化し、社会と再びつなぐ。立花さんはそれを、「彼女たちのスキルが社会に還元される仕組みを作りたい」と語っています。
すでに企業とのご相談案件も生まれていると言います。私も問題意識を持っている分野、今後の活動にも期待大です。
「アルトラビスタ」が見せる次の景色。もう一つの視座が拓く未来

私は「パラレル活動家」という言葉を使っていますが、別にそれを誰かに勧めているわけではありません。
ただ、「ここしかない」と自分の可能性を一つに閉じ込める必要はないと思っています。
もし他にやりたいことがあるなら、二つでも三つでもやってみればいい。
立花さんの生き方は、まさにそれを自然体で体現しているように見えるのです。合理的であることは、自分と社会をよりよくつなぐ知恵なのかもしれません。
立花祐子さんが開こうとしている「アルトラビスタ」という扉から
どんな新しい景色が生まれていくのか。
今からとても楽しみです。