子どもたちの「やってみたい」を全国へ運ぶ!「いけもんキッチン」の挑戦

公立小学校の正規教員を退職し、キッチンカー「いけもんキッチン」で全国を巡る池田さんの連載コラム第2弾です。食を通じて「生き方」そのものを届けようとする新たな挑戦。安定した立場を手放してまで、彼が子どもたちに伝えたかった「本物の体験」とは。子どもたち一人ひとりの「やってみたい」を、本気で応援するために選んだ道に迫ります。
教室を飛び出し全国へ!食でつながる新しい学びのかたち

2024年3月、私は公立小学校の教員を退職し新たな道を歩み始めました。これまで子どもたちと一緒に取り組んできたSolar Crewジュニアや横浜すぱいすの活動を軸に生まれたのが、クラウドファンディングによって実現したキッチンカーです。「いけもんキッチン」と呼ばれるこのキッチンカーは、単なる移動販売車ではありません。自身の生き方や価値観をそのまま載せ、全国へ届けるための“場”でもあります。
きっかけは、大田区六郷の「アットホームスクエア」で、Solar Crewジュニアの子どもたちとマルシェを開催したことでした。活動の中で子どもたちが主体的に動く姿を見たとき、「横浜の子どもたちだけでなく、都内の子どもたち、そして全国の子どもたちにも同じ体験を届けたい」と強く感じました。では、全国の子どもたちに会うにはどうすればいいのか。考え続ける中でたどり着いたのが「食」という選択でした。料理や食べ物は人を幸せにします。人の温かさだけではお腹は満たされませんが、食べることは確実に人の心と体を支えます。イベントで豪快に料理を振る舞う仲間の姿を見て、「食を通じて人とつながる」ことの力を実感しました。
また、学校の中で、総合的な学習の時間という学習があります。校内の池や近隣のせせらぎの改修、カンボジアへの支援活動、熊本地震への支援活動などその時に子供たちが興味関心を持ったことに取り組んできました。これが自分でやりたかった教師としての仕事でした。
その思いが、キッチンカーという新しい挑戦を後押ししました。47都道府県を巡り、食を通じて子どもたちと出会い、生き方そのものを届ける。その覚悟が固まったとき、キッチンカーという形は自然な選択でした。
クラウドファンディングが教えてくれた、人とのつながりの大切さ

キッチンカーはクラウドファンディングによって形になりました。立ち上げ当初はとにかく必死でした。しかし、終えてみて強く心に残ったのは、資金以上に「人とのつながり」でした。支援の多くは、これまで関わってきた仲間や知り合いからのものでした。一般的に、数百万円規模のクラウドファンディングは8〜9割が既存のつながりから集まると言われていますが、まさにその通りです。
「自分はこんなにも人に支えられていたんだ」。と私にとって大きな意味を持ちました。クラウドファンディングは資金調達の手段であると同時に、自分の周りの人間関係を映し出すものでもあります。私は100万円前後の規模であれば、一度やってみることで、周囲の方々とのつながりやその方々の温かさを実感できると思います。
クラウドファンディング終了後、キッチンカーは驚くほどのスピードで動き出しました。5月11日に終了し、23日には納品、6月2日には横浜開港祭への出店が決まりました。活動を開始して半年間、自ら出店場所を探して営業をかけたことは一度もなく、すべて人とのつながりで、声をかけてもらって出店しています。キッチンカーは廃業率が高く、出店場所の確保や天候による収入の不安定さなど、厳しい現実もあります。それでも声がかかり続ける背景には、これまで積み重ねてきた人との関わり方があると感じています。
「本物」に触れる体験を通して人と人をつなぐ

私が大切にしているのは、約束を守ること、感謝をきちんと伝えること、人が困ることをしないことです。特別なことではありません。その積み重ねが信頼につながっていると感じています。実際、教え子たちが今もキッチンカーを手伝いに来てくれることは、その象徴です。かつて、いじめを受けて学校に来られなくなった子どもに寄り添い続け、「先生でも父親でもない、不思議だけれど安心できる存在だった」と言われたこともありました。子どもを一人の人として尊重する姿勢は、今も変わっていません。
良いところだけを積み上げるのではなく、弱さや未完成な部分も含めて受け止めることが大切だと考えています。和紙を何枚も重ねて強くなるように、人も経験を重ねることで破れにくくなる。祖母に無条件で認められた幼少期の記憶が、その価値観の土台になっています。
「いけもんキッチン」のこれからは、単なる販売にとどまりません。美味しいだけでなく、楽しい、面白い、また会いたいと思える体験を届けることを目指しています。そのためにも、まずは自分自身が「本物の商い」を身につけることも必要だと考えていますので、是非みなさん会いに来て、叱咤激励をお願いします。

最後に。2025年度での子どもたちとの活動は、7月に横浜の中学生、長野県飯綱町の小中学生、12月に横浜の放課後キッズクラブの子どもたち、1月に大田区のsolar crewジュニアと一緒に考えた商品をイベントで販売することができました。身近な場所でも丁寧に積み重ねながら、将来的には47都道府県で行いたいと思います。人とつながり、誰かに喜ばれ、自分が役に立っていると実感すること。その感覚こそが、生きる力になります。「いけもんキッチン」は、今日も「本物の体験」を積み込みながら、静かに、しかし力強く走り続けています。引き続き応援をよろしくお願いします。