就職しないという選択!大学生が“教育”に人生を賭けた理由とは?

塩澤仁康(しおざわひとやす)さんは、2026年1月現在、産業能率大学 経営学部経営学科の学生で株式会社Actilusを経営されています。学業の傍ら、学習塾ZERO-1の事業をスタート。また、YC(東京JC発足の学生団体)の初代代表も務めるなど、情熱を持って数々の仕事を引き受けていらっしゃいます。そんな塩澤さんに今後のビジョンや展望についてお話を伺いしました。
「大学に通っているだけの自分」への違和感

私は現在、経営学部に通う大学4年生です。多くの同級生が就職活動に向かうなか、私は今年6月、大田区・大鳥居駅近くで学習塾を立ち上げました。塾講師の経験は一切ありません。資金も、人脈も、実績もない状態からのスタートでした。ただ一つあったのは、「このまま大学に通い、就職していく人生で本当にいいのだろうか」という強い違和感でした。
大学3年生の5月、ニュースで日本のGDPが世界4位に転落したことを知りました。さまざまな要因が語られていましたが、「その根本には何があるのか」と考え続けるうちに、最終的に行き着いたのが“教育”でした。人が育たなければ、産業も文化も、国の活力も生まれません。そう考えたとき、漠然と抱いていた「ビジネスをやりたい」という思いは、「教育で社会に関わりたい」という意志に変わっていきました。
私が通う産業能率大学では、プレゼンテーションや探究学習、企業連携型の授業など、実践的な学びが多く取り入れられています。知識を覚えるだけではなく、自分で問いを立て、考え、形にしていく。こうした教育こそが、これからの時代を生きる子どもたちに必要なのではないかと感じるようになり、「ないなら自分でつくろう」と思い、学習塾という形で一歩を踏み出しました。
経験ゼロ、資金ゼロ!それでも塾を開いた理由

しかし、現実は決して簡単ではありませんでした。周囲からは「なぜ就職しないのか」「経験もないのに塾をやるのか」と言われることも多くありました。それでも私は就職活動は一切せず、経営者や事業家の方が集まる場に積極的に足を運びました。「塾をやりたい」「教育で何かを変えたい」。そう伝え続けながら、経営とは何か、お金とは何かを、現場にいる方々から直接学ぼうとしました。本やインターネットには載っていない、生の経験談を吸収することが目的でした。
資金集め、場所探し、事業設計。すべてが初めてで、今も正解が見えているわけではありません。ただ、「考え続けるよりも、まずやる」という姿勢だけは決めていました。開業当初は探究学習を前面に出した塾を構想していましたが、地域の特性を調べるなかで、理想だけでは人は集まらないという現実にも直面しました。
現在は、小学3・4年生を主な対象とし、「学童的な役割」を持つ塾として再設計しています。まずは宿題を見てあげる、補習をする、安心して子どもを預けられる場所になる。そのうえで、探究学習や体験型の学びを少しずつ取り入れていく形です。弟が書道の高等師範であることから、習字教室も組み合わせ、子どもたちの好奇心の入口を増やすことも計画しています。
学力ではなく、“生きる力”を育てる場所をつくりたい

私が何より大切にしているのは、「学力だけで子どもを測らない教育」です。勉強とは本来、「わかった」「もっと知りたい」という感覚から楽しくなるものだと思います。しかし現実には、「やらされるもの」「怒られないためのもの」になってしまい、理由がわからないまま嫌いになる子どもも少なくありません。そのまま成長すると、「みんなが行くから大学へ行く」「周りが就職するから就職する」というように、自分の意志ではなく空気で進路を選んでしまう大人が増えていきます。
私自身、陸上競技に打ち込み、全国大会や国体を経験しました。極めることの楽しさも、苦しさも知っています。また、防衛大学への進学を辞退し、「人の下ではなく、自分で道をつくりたい」と思って今の大学に進みました。その選択が正解だったかは分かりませんが、「自分で選んだ」という感覚だけは、今も私を支えています。だからこそ、子どもたちにも、小さいうちから「自分は何が好きなのか」「何にワクワクするのか」を見つけてほしいと思っています。一つでも本気になれるものがあれば、人は自ら学び、自ら成長します。そしてその力は、将来必ず社会を動かす原動力になります。探究が当たり前にあり、子どもたちが自分で問いを立てられる社会をつくる。その最初の一歩が、いま私の目の前にある小さな塾です。