冬至は“生命の再生点”静けさの中に巡る力――食養生と動養生――静かなる「動」

12月は24節気で2つの節目を迎えます。
● 大雪(たいせつ)12月7日頃:冬将軍到来。体を冷やさず“温補養腎”を意識。
● 冬至(とうじ)12月21日頃:一年の陰陽転換点。“休むことが養うこと”を実践。
特に冬至は、一年で最も昼が短く、夜が長い日。
太陽がいちど力を失い、再び光を取り戻す“再生の節目”です。
古来より中医学ではこの時期を「陰極まりて陽と成る」と捉え、外に向けていたエネルギーを内側へと収め、次の季節のために力を蓄える時期とされます。
静けさの中にこそ、巡りの準備が始まっています。これが冬の動養生。
冬の体に寄り添うことで、心と肌と生命力は穏やかに整ってゆきます。
「腎気は耳に通ずる」──耳を意識していますか?

中医学では、冬は「腎」の季節。腎は生命の根を司り、生命エネルギーの源である“精”を蓄えています。
発育・成長・老化に関係するといわれ、生命力や、髪、集中力、回復力などにも関わるといわれています。
実は—「腎気は耳に通ずる 腎和すれば耳は能く五音を知るなり」
耳は五臓のうち「腎」と密接な関係にあります。腎の状態が耳に影響するため、加齢などで”精“が減少すると、耳鳴りが起きやすくなったり、聴力に影響するといわれています。
寒い日もむき出しで、ケアをされることがあまりない耳ですが、実はツボも多く大切にしたい器官なのです。
冬に
・耳鳴り
・聞こえづらさ
・低音の響きが気になる
・音に敏感になる
・体のバランスが取れにくくなる
こうした変化を感じるなら、それは腎エネルギーを消耗しているサインかも。
耳は、体の奥の声を代弁する器官。冬は腎を温め、静かに休む時間を持つことが、春の生命力へとつながります。冬は、“がんばる季節”ではなく、“育てる季節”と捉えてみましょう。
「腎を養う」──温め、潤し、蓄える食の力

腎を守る鍵は、
「温める」+「潤す」の両方です。
体を温める食材:黒豆、黒ごま、くるみ、生姜など
体を潤す食材:なつめ、山芋、白きくらげなど
そして、そのどちらも支える食材が――クコの実(オーガニックを選びましょう)。
冬に起きやすい
・乾燥
・気力低下
・冷え
・肌や髪のパサつき
など、腎のエネルギー不足(腎虚)と関連が深いお悩みがあるときは、腎を満たす料理や飲み物を取り入れることが、冬の養生の原点といえるでしょう。
くるみとクコの黒豆粥(腎精を満たす“黒の力”)
材料(1〜2人分)
- ご飯 … 茶碗1杯
- 水 … 300ml
- 黒豆(煮豆または黒豆茶の煮汁の豆でも可) … 大さじ2
- 有機クコの実 … 小さじ1
- くるみ … 大さじ1
- 塩 … ひとつまみ
作り方
- 鍋に水とご飯を入れ、中火でとろみが出るまで煮る。
- 黒豆 → クコの実 → くるみの順に加え、さらに3分煮る。
- 塩でほんのり味を調える。
薬膳ポイント
「黒」は冬の腎を補う色。
黒豆 × くるみ × クコの実の組み合わせは“温める・巡らせる・潤す”が同時に叶う黄金バランス。
「クコの実」──生きる力を灯す“再生の赤”

冬の白く冷たい世界の中で、クコの実の赤は生命力の象徴。薬膳では「補肝腎・養血明目」とされ、
腎を支え、血を養い、目・肌・巡りをやさしく整えます。
クコの実に含まれる主要栄養素
- ゼアキサンチン(光ストレスケア/粘膜の保護)
- アミノ酸20種(代謝+回復のための材料)
- ポリフェノール(抗酸化)
- βカロテン(乾燥ケア)
など約100種の栄養が含まれています。
お湯に浮かべるだけで、赤い粒から体がじんわり温まり、心までほどけていくよう。
冬は「静」と「再生」をつなぐ食薬として、期待したい食材です。
「陰極まって、陽と成る」

12月に迎える「冬至」は、陰が極まって陽が生まれる日。
腎を温め、静かな時間の中で自分の声を聞くこと。それは理想的な冬の“養生の過ごし方”。
春は、冬に満たしたエネルギーの分だけ輝いて芽吹きたいですね。
今日の夜、一杯のお湯にクコの実を浮かべてみてください。
耳から、心から、小さな静けさの音が動き、あなたの中の太陽が、春に向けてまた昇り始めるでしょう。