認知症にも効果あり!?唯一無二の弾き語りにたどり着いた“流浪人”の軌跡

てるてるソング 小野塚テル

てるてるソング 小野塚テル

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40年以上ギターを弾き続け、新しいスタイルでみんなに歌を届け続ける小野塚テルさん。認知症にも効果を発揮すると言われる弾き語りの秘密とは?てるてるソングと呼ばれる歌の魅力と今後の展望について伺いました。

ギター大好き少年が大人になってオリジナルの弾き語りを披露

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中学校3年生の15歳でギターを始めました。どうしてもギターを買って欲しかったのですが、親からはお金がない上に3兄弟を平等にしなくてはならないため私にだけ高価なものを買うわけにはいかないと断られ続けたのです。親に土下座して何度も頼み込んでようやく3万円親から借りるという形でギターを購入。ギターが好きすぎて毎日弾きまくり、そのまま抱いて寝ていましたね(笑)。

6月にギターを買ってもらって、初舞台が3カ月後の9月。中学校の学校行事の中で全校生徒850人の前で演奏しました。その時の大歓声を聞いて一生ギターを弾こうと決意。それから現在までずっと続けています。高校時代はフォークソング部に所属。ギターと歌がうまかったらモテるはずなのですが、私だけ例外でしたね(笑)。大学時代も音楽サークルで演奏活動をしていました。

30年ほど前から『酒場のギター弾き・小野塚テル』という名前で弾き語りをしていました。3年前に妻から「その名前は昭和っぽくてダサイから変えた方が良い」と言われ、『てるてるソング・小野塚テル』に変えて活動しています

私が歌う歌は、オリジナルのラブソングと流しで歌う演歌やフォークソングなど、時事ネタを歌にしたものの3種類があります。

有名な歌はあまり好きではありません。マニアックな曲が好きなんですよね。大勢の人を感動させる歌ではなくて、ピンポイントであなただけに届けるための歌が得意です。私が歌うときはマイクも譜面台も必要ありません。ギター1本と自分の声だけで曲を披露します。生の声が届く範囲なので、20〜30人の前で演奏するかテーブルを回って聴かせるというスタイルが多いですね。

世界でただ一人の相互方向型ライブで聴く人を魅了する

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歌でお金をいただけるようになったのは8年ほど前からですね。昼間は30カ所ほどのデイサービス施設で歌っています。施設の方からは「レクリエーションとして落語家やピアノ演奏などいろんな人に来てもらっているがテルさんはレベルが違う」という嬉しい言葉をいただきました。他の演者の方は準備してきたものを披露すると思うのですが、私の場合は観客のみなさんからのリクエストを聞いて歌うので100%満足されるわけです。テレビ、ラジオの時代からYouTubeへとメディアが変化して、視聴者との相互コミュニケーションが取れるようになりましたが、音楽ライブだけは未だに演者を観ているオーディエンスという一方通行のままですよね。私がやっているのは音楽で唯一の相互方向のライブで、目の前の人が聴きたい曲を私が歌っています。昭和歌謡だったら8割以上の曲の歌詞は覚えていますね。ギターのコードは元の曲が流れてくればその曲に合わせて弾くことができます。

社会人になってすぐにギターを辞めようと思ったことがありました。酒場のギター弾きとして活動を始めた頃に手が腱鞘炎になってしまったので、普段はギターを全く弾いていません。メジャーリーグの選手は本番で疲れてしまうのを避けるために普段あまり練習しないそうなので、私はこれを『メジャーリーグ調整法』と呼んでいます(笑)。本番で歌っている最中はハイになっていて痛みを感じないので弾くことができます。

夢は『老人福祉施設から誕生した還暦流浪人』として紅白歌合戦に出場すること

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私にとって歌とギターは人生そのものです。歌の力はとてつもなくて、自分が好きだった曲を聴くと幸せホルモンが出るそうです。認知症の方に歌ってあげると一緒に歌うんですよ。私の歌と聴いてくれているみなさんの記憶を繋げることで脳に良い影響があるのかなと思っています。ここ2〜3年でお年寄りの前で歌わせてもらうことが多くなったのですが、人ってこんなに喜んでくれるんだと思うくらい喜んでいただいています。

歌は記憶だと思っています。誰にでも思い出の歌があったりしますよね。認知症は記憶がなくなっていく病気。一緒に歌っていても、すぐに歌ったことは忘れてしまうのですが、歌そのものは覚えているんですよ。「歌は最高の心のおつまみ」と私はよく言っています。お酒を飲む時のおつまみは歌だけでいいじゃないですか。

私の目標はNHKの紅白歌合戦に出場することです。『老人福祉施設から誕生した還暦流浪人』というキャッチフレーズで登場するイメージもできています。一般的な『流し』とは全くレベルが違うので、あえて『流し』とは言いません。世界で唯一私だけのスタイルで歌っていると思っています。還暦以降の私の歌のテーマは『酒とギターと歌と繋がり』です。これまでのすべての経験をまとめ上げて歌い続けます。