
高田 智昭
小天(おあま)オーナー
米粉を使った焼き菓子専門店『小天(おあま)』を運営する高田智昭(たかだともあき)さん。フランス料理やカフェ&バーなどを経験し飲食業界一筋25年の高田さんがグルテンフリーにこだわる店舗を出店した理由や、米粉の可能性、今後の展望について伺いました。
2024年、東京・北区に米粉100%の焼き菓子専門店『小天』を開店しました。小麦粉はもちろん保存料などの添加物も不使用の健康的なお菓子を販売しています。ギフトにもぴったりだと好評をいただきうれしい限りです。「お口の中に小さな天国を作ります」というコンセプトの元、小さな天国から取って『小天』という店名にしました。クッキーと焼きかりんとうがメイン商品なのですが、新商品として米粉のバスクチーズケーキを発売します。
勉強が嫌いだったので高校卒業後に就職することにしました。アルバイトで飲食業の経験があったので、その経験を生かそうとフランス料理店で働くことに。シェフから厳しく指導されて正直仕事が嫌だなと思っていたのですが、お客様からの「おいしかったよ、ありがとう」を言っていただいたときに仕事に対する姿勢が変わり、やりがいを感じるようになりました。そこから飲食業界一筋で行こうと決意して、今もその道半ばですね。
私は飲食業界でずっと働いていたのですが、コロナ禍は飲食店にとってはかなり危機的状況でしたね。そのときにいつまでも会社に依存していてはいけないなと思い、「独立する時期だよ」という神様からのメッセージだと考えました。コロナ禍で準備を進めて2024年4月に『小天』をオープン。根拠のない自信だけはあったので、あまり悩むことはありませんでした。
以前、某カフェで働いていたときに卒業式を迎えたお子さんとその親御さんで10人ほどのグループが来店したんです。お子さんの一人が小麦アレルギーだったので、その店で食べられるものがありませんでした。他の子どもはピザやパスタ、ケーキを食べている中、その子だけ何も食べられないのはかわいそうだなと思いました。食事はみんなで楽しく食べることで仲が深まり、話も広がるもの。こういった悲しい思いをする子どもを見たくないなと思い、アレルギーがある子どもたちに商品が届けられるお店を作りたいと思いました。昨今は米不足が社会問題になっています。私が会社を大きくしていくことで米の消費量が増えれば米農家さんの大切さに気づくことができて、結果的に日本の食料自給率が上がっていくことにつながれば良いなと思っています。
米粉のスイーツというとどうしても小麦粉よりも物足りなさを感じる人が多いと思うのですが、うちのお菓子はとてもおいしいとお客様が口をそろえておっしゃってくださいます。米粉は小麦粉に比べて扱い方が難しいんですよ。砂糖と米粉の割合を間違えてしまうとおいしくなくなってしまいます。私たちも何度もトライ&エラーを繰り返して黄金比率のレシピにたど着きました。お菓子作りの経験がなかったからこそ、失敗の数は多かったと思いますが純粋においしいを追求することができたと思います。
商品開発の当初から米粉を使ってヘルシーさを押し出しているから味は二の次で良いとは思っていません。おいしいことは大前提。こんなにおいしいのにグルテンフリーで体にも良いという感動をお届けし続けることで企業の価値を高めていきたいです。
将来的には世界進出を視野に入れています。海外展開することが最終目標なのですが、その前段階が非常に重要です。もともと『小天』を始めるきっかけでもあった「アレルギーで悩んでいる子どもたちが笑顔で食事を取れる」ことを目指しているのですが、小麦アレルギーがあるから米粉のお菓子を食べる、卵アレルギーだから卵不使用のお菓子を食べるということではなく、おいしいから『小天』のお菓子を食べようという食選択ができるようにしたいですね。『小天』では小麦粉も卵も使っていません。アレルギーがあっても気にせずに食べられるブランドとして、お菓子といえば『小天』と言っていただけるようになるのが理想です。
現在、東京・世田谷区にある二子玉川小学校と協業を進めています。二子玉川小学校の子どもたちが考案したお菓子を弊社で製造して玉川高島屋で子どもたちがスタッフとなって販売するというプロジェクトです。文部科学省が推進する子どもたちの課題解決力を高めるための『アントレプレナーシップ教育』の一環として行われています。どんなお菓子が良いか子どもたちに考えてもらう時も「なぜ、そのお菓子を作りたいのか」を考えて提案してもらっています。商品ができて販売するにあたって、宣伝をどうするのかも子どもたちに考えてもらうのです。実際に売り場で販売するときもどうやってお客様に声をかけたら売れるのかを考えてもらうので、各工程で子どもたちの考える力を養うことができます。
この活動を日本全国の小学校で実施できるようにしていきたいです。大人にグルテンフリーと言ってもなかなか浸透していかないのですが、10年後、20年後を見据えて子どもの食育から取り入れていけたら良いのではないでしょうか。そうすることによって日常的に米粉を取ることが当たり前になってくれたらうれしいですね。