経営者対談

ファイナンシャルプランナー
江上治 × 住谷知厚

保険営業で全国1位を4度受賞し、ゼロから年収1億円を築いたファイナンシャルプランナー・江上治(えがみおさむ)さん。 今回は、自身のキャリアや失敗談、そして成功を再現するための思考法をたくさん語っていただきました。 特別な才能ではなく、「誰にでもできる準備」と「貢献の姿勢」が鍵だという江上さん。 年収1億円にいたるまでの経験や原因をお聞きしました。

自分の価値は「得意なこと」に宿る

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住谷:本日はお忙しい中、ありがとうございます。さっそくですが、江上さんが今のキャリアを歩むに至ったきっかけを教えてください。

江上:僕はもともと大手保険会社に勤めていました。22歳で入社して、そこから15年、保険商品を"売る"のではなく、"作る"仕事をやっていました。 全国の営業員が販売するための設計をしていたので、保険の構造や活用方法には誰よりも詳しくなりました。

ただ、どこかでこのまま一生を終えるのは嫌だなと感じていて、37歳のときに思い切って独立を決意しました。 当時は人脈ゼロ、資金ゼロ。本当に何もない状態からのスタートでした。

住谷:人脈も資金もゼロからのスタートだったというのは驚きです。その中で、どうやって道を切り開いてきたのですか?

江上:僕自身の"得意なこと"をとにかく徹底的に掘り下げました。 出版の講座に通って、プロフィールをつくるだけでも3カ月かかりました。自分は何者なのか、誰にどんな価値を届けられるのか。 言語化するってすごく難しいけど、ここを曖昧にしたまま進んでも、どこかで限界が来るんですよね。

それに、”強み"って意外と自分だと気づけない。僕の得意なことも、最初は他人から「それすごいですね」と言われて気づいたくらいです。 だからこそ、自分のことを深掘りしてくれる相手や、率直にフィードバックをくれる人は貴重です。

住谷:自分では気づけないことを他人に引き出してもらう、というのは確かに大きいですね。

江上:その通りです。僕が出版の講座で一番学んだのは、「強みは他人が見つけてくれる」ということ。 10年愛されるベストセラーを生み出すための養成講座に参加したのですが、そこで徹底的に自分の過去を深掘りしました。 幼少期のことから、なぜ今の思考に至ったのかまで。それをすべて自己分析して、ようやく言語化されるんです。

その講座では「圧倒的な熱量を持って語れるテーマがないと売れない」と言われました。 つまり「自分の人生そのものがビジネスの土台になるということ、あらゆる経験や挫折、成功体験もすべてが財産になる」と気づいたんです。

再現性と仕組み化が成功の鍵になる

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住谷:江上さんの話には「再現性」というキーワードがよく出てきますよね。

江上:とても大事ですよ。年収1億円っていうのは、突発的に稼いでも意味がない。 継続して生み出せなければ意味がない。そのためには、自分の得意なことを「仕組み化」しないといけないんです。僕の場合、最初は保険の営業。 そこからセミナー業、出版、企業顧問、コンサルティング、不動産投資へとビジネスを拡大してきました。 でも、それぞれは点で終わっているわけじゃなくて、ちゃんと線でつながってるんです。 たとえば、セミナーで知り合った方が保険に興味を持ってくださり、信頼が生まれたことで他のサービスにも展開できるようになった。まさに“信頼の循環”です。

住谷:まさに資産が生み出す循環ですね。江上さんにとって「資産」とは、どういう意味なんでしょうか。

江上:よく「お金が資産だ」と言われますが、僕にとっての資産はもっと広い概念です。 人脈も、情報も、経験も、すべて資産。特に、人とのつながりは大きな資産になります。「誰と組むか」で、自分の可能性が何倍にも広がるからです。

僕がずっとやっているのは、そうした信頼できるパートナーをリスト化すること。 たとえば、不動産の相談が来たら、信頼できる専門家にすぐに紹介できますし、海外投資や税務の相談にも対応できます。いわば“人の資産運用”です。

住谷:それは確かに、真似したくても簡単には真似できないノウハウですね。

江上:でも、最初はみんなゼロなんですよ。 僕もそうでした。ただ、信頼を積み重ねていくと、人が人を呼んでくれるようになる。その連鎖が、継続的なビジネスを作っていくんです。

あと、これは特に若い人に伝えたいんですが、「まずは誰かの手伝いをする」のは、実は最強の戦略なんです。 僕自身も、最初はいろんな人のセミナーを裏方で手伝ってきました。セミナー会場の設営から受付、資料配布、SNSでの告知、動画の編集まで。 そういった“地味な仕事”を積極的にやることで、主催者との信頼関係が生まれ、その後、講師として登壇するチャンスにつながったんです。

こうした動きが“ただの参加者”から“信頼できるパートナー”に変わるきっかけになります。 言い換えれば「貢献する姿勢を見せろ」ということです。手伝うことでその人の信頼を得られれば、いずれ自分が何かを始めたとき、応援してくれる人になってくれます。

「サラリーマン」は最強の準備期間

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住谷:これだけ多くの事業を展開されている江上さんですが、独立前のサラリーマン時代について、どのように捉えていましたか?

江上:僕は37歳までサラリーマンをやってました。 今振り返ってみても、「サラリーマンって最強の準備期間だったな」と本当に思います。なぜかというと、毎月決まった給料をもらいながら、自分の強みや得意分野を試すことができるからです。

サラリーマンとして本業をこなしながら、空いた時間でスキルを磨いたり、人脈を広げたり、小さな実験を繰り返すことができる。 これはものすごく恵まれた環境なんですよ。

僕自身も会社員時代に自分が設計した保険商品が実際にどう売られているのかを現場で観察してました。 営業の人たちがどんな言葉を使って、どうやってお客様の信頼を得ているのか。これはすごく学びになりました。

住谷:なるほど。会社という環境を、いわば“実験の場”として使っていたんですね。

江上:そうです。たとえば、会社負担でセミナーに参加できたり、出張先で仕事終わりに人脈をつくる場に行けたりする。 これ、よく考えたらすごい特権なんですよ。僕はそれをフル活用して、銀行の頭取と繋がったり、保険会社の社長と直接話す機会をもらったりしてました。 それに、会社にいることで「信用」がある。これは本当に大きいです。 独立した瞬間にその信用がなくなるというのも実感しました。だからこそ、サラリーマンのうちにできる限りの信用貯金をしておくべきです。

住谷:たしかに、いきなり独立して全部ゼロから始めるより、今のうちにできることはたくさんありますね。

江上:そうなんです。特におすすめしたいのは、副業やプロボノのような形で、自分のスキルを誰かに提供してみること。 サラリーマンだからこそ、「失敗してもリスクが少ない」っていうのが重要です。会社があるからこそ、何かに挑戦して失敗しても生活は守られる。 これは個人でビジネスをやっている人からしたら、ものすごく羨ましい環境なんですよ。

住谷:たしかに、給料が安定しているうちにトライアンドエラーを繰り返せるのは、今後の大きなアドバンテージになりますね。

江上:その通りです。実は、僕が最初に出した本も、会社員時代の体験や人脈が土台になってます。 つまり、会社員時代にどれだけ“資産”を積み上げておくかが、その後のビジネス人生に大きく影響するんです。 ですから、今会社員をやっている人に伝えたいのは、「今こそが準備のゴールデンタイム」ということ。 目の前の仕事に全力を尽くしつつ、その中で何が得意か、誰に貢献できるかを見つけていってほしいですね。

これからの時代、「誰と組むか」がすべてを決める

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住谷:最後に、今後のビジョンを聞かせてください。

江上:正直、僕にはいわゆる“壮大な夢”はないんです。ただ、理念はある。 「出会った人を豊かにする」その一心でやってきました。これからもその軸はブレません。でも最近はもっとワクワクする夢を持とうと思っています。 たとえば、若手起業家に投資するファンドをつくるとか、地域活性のプロジェクトにコミットしてみるとか。自分のこれまでの経験や人脈を活かして、誰かの挑戦を後押しできるような場を増やしたいです。 そして何より、今関わっている仲間と一緒に、長く信頼関係を築いていきたい。僕が大切にしているのは「誰と組むか」。 ビジネスでも投資でも、どんなにいいアイデアがあっても、間違った人と組めばすべてが壊れてしまう。逆に、信頼できる人となら、大きなリスクも乗り越えられます。 今までも、何度も人に助けられてきたからこそ、僕も人を助けられる存在になりたいと思っています。

住谷:ありがとうございました。江上さんの言葉は、ただの理論ではなく、生き様そのものですね。 すべて実体験に基づいていて、説得力が違います。

江上:ありがとうございます。これからも、面白い人たちと出会いながら、少しでも誰かの役に立てるように頑張っていきたいですね。 僕自身もまだまだ学びの途中ですから、一緒に成長していける仲間が増えていったらうれしいです。




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