株式会社人財育成JAPAN 代表取締役
永松茂久 × 住谷知厚
今回のトークセッションでは、令和No.1ベストセラーのビジネス書『人は話し方が9割』で全国的な注目を集める著者・永松茂久さんをお迎えしました。たこ焼き屋からスタートし、数々の挑戦を経て成功をつかんだ永松さんは、出版を通じて新たな道を切り開いてきました。その飾らない言葉には、多くの人が共感し、背中を押される魅力があります。 インタビューでは、永松さんのこれまでの歩みや、成功の裏側にある考え方、そして今後のビジョンについてお話を伺いました。
たこ焼き屋から夢への第一歩
住谷:まずはたこ焼き屋を始めたきっかけについて教えていただけますか?
永松:僕は大分県中津市の小さな町で育ったんですけど、小学校高学年の頃、商店街にできたたこ焼き屋でよく遊んでいたんです。そのおばちゃんが気さくで、僕も自然と手伝うようになったんですよね。
ある日、その様子が地元のタウン誌に取り上げられて「小学生が焼くたこ焼き屋」と話題になったんです。それが嬉しくて、「将来はたこ焼き屋をやりたい」って思うようになりました。
高校を卒業してから大阪に行くつもりだったんですが、友達から「東京に行け」と勧められたんです。「東京には大会社の社長の息子がいるから、スポンサーになってくれるかもよ」って。それを真に受けて東京に来ました(笑)
東京では出版社に就職したんですが、その時にオタフクソースの支店長さんと知り合って、「君、おもしろいね」と言われてから、築地銀だこの社長さんを紹介してもらいました。そこからは社長室で直接学ばせてもらい、たこ焼き屋のノウハウを吸収しました。その経験が起業の基盤になっています。
住谷:起業してから、たこ焼き屋がどう成功につながったのでしょうか?
永松:銀だこで学んだことを活かして、地元でたこ焼き屋を始めました。最初は催事(イベント販売)からスタートして、順調に売上が伸びたのですが、次第に「もっと安定した店舗が欲しい」と思うようになりました。そこで、たこ焼きの店舗を出すつもりが、気づけば150席のダイニングレストラン「陽なたや」をオープンしていました(笑)
ただ、最初から順風満帆だったわけではありません。特に2号店を出したときが大きな壁でした。隣町に出したのですが、業態がその地域に合わなくて失敗しました。でも、そこで諦めずに居酒屋に業態を切り替えたんです。その決断が功を奏し、再び軌道に乗せることができました。
2号店はオーナーとしての自分の力が試される場所です。1号店が成功しても、自分が2人いないと実際はうまく回らないんですよね。そこを学んでから、店舗展開の際は「近くに住む」「店同士を近くに配置する」というルールを作りました。
飲食から出版へ!『人は話し方が9割』誕生秘話
住谷:永松さんの代表作『人は話し方が9割』は、今や令和で最も売れた本になりましたが、出版のきっかけや当時の心境について教えてください。
永松:実は、出版のきっかけはウェディングイベントでの出会いでした。ある出版社の編集長さんが「この店面白いね。君、本を書いてみないか」と声をかけてくれたんです。その時はまさか自分が本を書くなんて考えたこともありませんでした。でも、「頼まれごとは試されごと」という気持ちで始めてみたんです。
それから数冊本を出しましたが、『人は話し方が9割』を書くことを編集者の原口くんに勧められた時、最初は断りました。僕自身、話し方の専門家ではないし、勉強したこともなかったので、「そんなの無理だよ」と思ったんです。でも彼が5年くらいかけてずっと言い続けてくれたんですよ。「絶対に書けるから」と。最終的には押し切られる形で、「じゃあ一度書いてみるか」と重い腰を上げたんです(笑)
住谷:それが今や大ベストセラーになっているのは本当にすごいことですよね。書くときに意識したことはありますか?
永松:1番意識したのは「誰でもすぐに実践できることを伝える」ということです。話し方に悩む人は多いけれど、難しい理論ではなく、シンプルで取り入れやすいアプローチが求められていると思います。たとえば、「笑顔で頷く」「肯定的な言葉を使う」など、すぐにできる小さな行動を提案しました。それが読者の心に響いたのかもしれません。
正直、『人は話し方が9割』は、19冊目の本で、僕自身は「これは売れないだろう」と思っていたんです。ところが、ふたを開けてみたら令和で最も売れたビジネス書になりました。編集者に言わせれば「売れる本は狙って書いても分からない」とのことで、まさにその通りだったなと感じています。
出版を通じて人と人をつなげる未来へ
住谷:永松さんの成功には、出版だけでなく「For You(フォー・ユー)」の精神が大きな役割を果たしていると思います。今後どのような活動を目指しているのか、具体的なビジョンについて教えてください。
永松:僕自身、「明確なビジョンを持つ」というタイプではないんですよ。頼まれたことを目の前で一生懸命やるうちに道が見えてきた、というのがこれまでの人生です。でも、これから力を入れたいことは2つあります。
まずは、『人は話し方が9割』を基にした「認定講師」の育成です。この本を読んで「もっと学びたい」「広めたい」と思う人たちを講師として育てていきたいです。話し方に自信が持てない人でも、少しの練習とコツでコミュニケーションが楽しくなることを伝えられる場を増やしたい。そして、その講師たちが否定のない空間をつくり出していく。それが僕の目指す未来です。
もうひとつは、夢を持つことの大切さを若い世代に伝えることです。今の20代、30代の中には「やりたいことが分からない」と悩んでいる人がたくさんいます。でも、それでいいと思うんです。やりたいことがなくても、「目の前の人を喜ばせる」というフォー・ユーの精神で行動すれば、必ず次のチャンスや夢が見えてきます。
住谷:フォー・ユーという考え方は、永松さんの人生そのものに深く根付いていますね。
永松:そうですね。僕がやってきたことも、結局は目の前の人を喜ばせたいという思いから始まったものばかりです。たこ焼き屋も、陽なたやも、出版も、すべてその延長線上にあります。これからも、目の前の人たちの声を大切にしながら、新しい挑戦を続けていきたいと思います。
■永松 茂久さん コラボレーターページ https://waccel.com/collaborator/nagamatsushigehisa/ オフィシャルサイト https://www.nagamatsushigehisa.com/