世界水泳の銀メダリストが明かす「失敗を乗り越えて築いた指導哲学」

ワクセル編集部

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2024.10.21
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細川大輔(ほそかわ だいすけ)さんは、100m自由形及び200m自由形の元日本記録を保持する元競泳選手です。現在は、北島康介さんが主催する教室で指導者として活動をしながら、水泳に限らず学習塾などを通してご自身の経験を次世代に伝えています。今回は、世界水泳で銀メダルを受賞した経験や今後のビジョンについて伺いました。

“日本一”を目標に水泳に没頭

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僕が水泳を始めたのは比較的遅く、小学校2年生の終わり頃でした。水泳選手には、年少・年中の時期からプールに通う人が多いのですが、僕は小学校2年生までまったく泳げませんでした。学校の授業で泳げないのが嫌で、初めて親に「習い事をしたい」とお願いしたのが水泳でした。

自分から進んでやりたいと言った唯一の習い事だったので、当時は意識が高かったと思います。まだ小学校2年生だったので、進級テストで新しいバッジをもらうことが自分にとって大きな喜びでした。

もちろん水泳が上達するのも大事ですが、頑張ればご褒美がもらえるという感覚が強く印象に残っています。そのバッジは200円ぐらいで、テストの日に合格した人だけが受付でお金を払って新しいバッジを購入し、帽子に付けてもらうというものでした。テストの前には親に200円をもらっておき、新しいバッジを手にして家に持ち帰ることが自分へのご褒美でしたね。

僕は体格が大きかったこともあり、他の人よりも少し早く上達できたと思います。水泳はだいたい15級くらいから始まり、現在で言う「選手クラス」になるまでは1年少しで進みました。そしてコーチから「選手クラスに上がりませんか」と声をかけていただき、選手クラスに上がってから1年ほどで全国大会に出場できました。

水泳を始めた年齢が遅かった分、他の人よりも練習に対して貪欲で意識が高かったと思います。小学校の全国大会をきっかけに、少しずつ目標が上がっていきました。そして小さな目標を次々と達成し、最終的には「日本一になりたい」という目標へと変わっていったのです。

大学1年生で日本一になる

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中学校終わりの頃に「日本一になる」という目標を掲げてから、実際に達成できたのは、大学1年生の時でした。その要因は、目標を明確に定め、自分に足りない部分を見極め、それを補う努力を続けてきたことです。少しずつ「当たり前」のレベルを上げていくこと、人が腹筋を100回したら自分は110回、120回と増やして、自分の基礎を高めていったのが成功の要因だったと思います。

僕は世界選手権の代表にはなれたものの、オリンピックには行けませんでした。つまり、ずっと成功し続けているというイメージは自分にはありません。むしろ、失敗ばかりだと感じています。自分が日本一になってから、次に目指すべきはオリンピックとなり、「日本一を守らなければならない」というプレッシャーに、自分自身が負けていきました。

本来は自分との勝負だったのに、他人のことを気にしすぎていたのだと引退後に振り返って気づきました。だからこそ水泳の指導現場でも、自分の足りなかった部分を子どもたちには伝え、同じ思いをしてほしくないと願いながら教えています。

現在は、スイミングスクールのような授業を行っているのですが、細かな技術面だけでなく、特にメンタル面のサポートを重視しています。水を好きになってもらうこと、自分の「当たり前」のレベルをどう上げていけるか、日々の努力をどう高めていけるかなどを一緒に考えながら提案しています。

僕の考えでは、競技として活躍することがすべてではなく、全員にとってのゴールが必ずしも同じである必要はないと思っています。たとえば、バタフライが泳げるようになることや、100メートルを泳げるようになることも、それぞれ個々のゴールです。そのゴールを達成するために何が必要なのか、どのような技術や声かけが適切なのかを意識しています。

「この練習をすればこうなります」ということを売りにするのではなく、小さな目標の達成を積み重ねていくことを大事にしています。その積み重ねが結果的に大きな成果につながるよう、サポートしていきたいと考えています。

スポーツが人間形成につながる

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「失敗をどう減らしていけるか」ということが僕の授業における最大のミッションです。その中でも、自分の行動を他責にせず、自責にできるような選択肢を与え、自分で決断する習慣がつくようなサポートを重視しています。

水泳に限らず、学習塾や、かけっこでも同じことです。そういった習慣を身につけられるように支援し、大人になったときに「あの水泳を習っていてよかった。泳げるようになっただけではなく、そういう考え方も教わったんだ」と感じてもらえるようなものを提供したいと思っています。

今、日本においてスポーツの必要性が問われる時期だと感じています。スポーツの価値は競技の結果だけではなく、その過程で身につける考え方や行動を通して人間形成につながる部分にあると、僕は感じています。

水泳に限らず、柔道でもバスケットボールでも構いません。スポーツを通じてそういった価値を共有できる人々とつながり、活動やイベントを通じて授業ができることが僕の最大の目標です。

子供の頃から母親に「人を大事にしなさい」と言われてきました。その言葉はずっと心の中にあり、僕が好きな言葉「一期一会」にも通じています。これからも出会いやコラボレートを大切にし、人々に感謝しながら進んでいきます。