仲間と共に掴んだ”日本一の高校生映画”が誕生するまでの道のり
古庄菜々夏(ふるしょうななか)さんは、東京の大学に通いながら、俳優や、モデル、映画コラムのライターとして活動しています。高校時代に友人と制作した映画『今日も明日も負け犬。』で主演を務め、この映画の演技が評価され、『高校生のためのeiga wouldcup2021』で最優秀女子演技賞を受賞しています。周りを巻き込みながらチャレンジを続ける古庄さんに、映画の制作秘話や、今後の展望などを伺いました。
自分じゃない誰かを表現することが心地よい
私は今、東京の大学に通いながら俳優をメインに活動をしています。映像作品への出演や、モデル被写体、さらには映画に関するコラムを毎日新聞社の媒体で書かせてもらうこともあります。
モデルや俳優としての活動を始めたきっかけですが、私が一番最初に人前に立ったのは小学校4年生のときです。友達が小さな劇団の舞台に出演することになり、その舞台を見に行った時に、「私もあれやりたい!」と母に伝えたのが始まりです。それから、その劇団の次の公演から参加させてもらうようになりました。
地元の小中学校ぐらいまでは劇団や舞台のオーディション、お芝居やミュージカルにも出演していました。最初は緊張しなかったのかというと、実は子どもの頃は恥ずかしがり屋で、人見知りもしていました。
しかし、舞台に立っているときは自分ではなく、別の役として見られているという感覚があり、それが心地よく感じました。自分自身が見られているわけではないので、恥ずかしさもあまり感じなかったんです。プレッシャーは今でも苦手ですが、役を演じることでその感覚を少し軽減できているように思います。
高校の友人と映画を制作
映画のライターコラムを始めたのは、高校時代の友人グループとの活動がきっかけです。コロナ禍で学校が休校になり、自宅で過ごす時間が増えたため、友人と一緒に趣味として映像制作を始めました。
その友人は、映画に出るより制作側のカメラを握るのが好きで、一緒に何かやりたいという思いはお互いにずっとありました。「いつか自分の人生を映画にしたい」という友人の夢を聞いた時に、面白そうって思いました。それが始まりで、「どうせやるなら今やっちゃえばいいじゃん!」という勢いでやってきました。
まず、映画を作る前に、同じクラスの文を書くのが好きな友人に小説を書いてもらうことにしました。「原作があれば映画にしやすいんじゃないか」という考えからです。完全に素人の集まりでしたが、「せっかく作るなら出版しよう」となり、自費出版を試みました。
Yahoo!やGoogleで「本の作り方」を検索しながら、100部ほど刷ってネット販売したところ、ありがたいことにすぐに完売しました。この反響から、「これならいけるんじゃないか」と感じ、そこから本をもとに映画を制作する準備が進んでいきました。高校2年生の夏頃のことです。
1年かけて制作して完成したのが、『今日も明日も負け犬』です。この作品を、なんとか広めたいという話になり、映画館を借りて上映したり、テレビ局に取材を依頼したりしました。草の根的な活動の甲斐もあって、少しずつ地元での知名度も上がっていきました。
そして、現在担当しているコラムのプロデューサーが偶然福岡出身で、私たちの活動に関心を持ってくださり、映画を応援してくれていることを知りました。最初は映画の配給について相談したことがきっかけでしたが、その後「コラムを書いてみませんか?」とお誘いをいただき、私でよければということで引き受けました。
映画ワールドカップで賞を総なめ。”日本一の高校生映画”に
最近、高校生のときの映画制作について友人と話すなかで、その当時大切にしていたことを振り返りました。当時のノートを見直してみると、「人を大切にすること」が重要なテーマになっていました。簡単に言うと、人に応援してもらう力が必要だったんです。
映画制作や取材などの活動を通じて、友達に「あの子は遠いところに行っちゃった」と感じさせないように、報告や連絡をしっかり行い、少しでも関わってくれる人を増やすことを意識していました。当たり前のことかもしれませんが、一心不乱に活動する中でも、それを見失わないようにしていました。
もともと、映画を制作するときには、何か目標があればいいねという話をしていて、その結果、全国の高校生が制作した映画が集まる『映画ワールドカップ』という大会に参加しました。私たちは普通の公立高校で、映像制作の部活があったわけではありませんが、そうした専門の学校や部活のある学校も参加していました。
1次選考、2次選考を通過し、奇跡的に東京での表彰式に招かれました。授賞式ではドキドキしながら結果を待っていましたが、幸運にも最優秀作品賞や、自分自身は最優秀女子演技賞をいただきました。全部で8つの賞を総なめする大変なことだったようで、その後、大会のルールが変わるほどの影響があったと聞いています。
”日本一の高校生映画”という称号をいただいたほか、『全米国際学生映画祭』にも日本代表として招待されました。ニューヨークで行われた映画祭には、チームのメンバー4人ほどで参加しました。
自分自身の今後の目標としては、今は視野を広く持ちながら、さまざまなことに挑戦している状況です。好きなことにはまっすぐに取り組んでいきたいという気持ちが強いです。特に今、一番の思いとしては、映像作品、映画やドラマ、舞台などに強く惹かれています。
映像はエンターテイメントとして人々に寄り添い、世界に発信できる力があると感じています。だからこそ、映像を通じて何かを表現し、伝えられる人になりたいと考えています。