「アメリカに秋葉原をつくるのが夢」オタクな経営者がサブカルチャーで世界を目指す

大町 和生

大町 和生

2024.09.11
column_top_( Omachi Kazuki  )

大町和生(おおまちかずき)さんは、美容サロンでの業務に加えて、バーの運営にも携わっています。将来的には、アニメや、ボカロといったサブカルチャーをコンセプトにしたバーの開業を目指しています。ラグビーに明け暮れた学生時代から独立に至ったきっかけや、今後の展望について伺いました。

入社1年目で個人事業主に転身

見出し1画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_大町和生さん

学生時代、私はラグビーに没頭し、小学4年生から大学4年まで続けてきました。特に高校時代は、全国大会を目指してチーム全員で切磋琢磨した日々が忘れられません。あの時がラグビーを最も楽しんでいた時期でした。

しかし、大学では思うような成果を上げることができず、将来に対する不安を抱えていました。弟たちも同じくラグビーをしていましたが、彼らは私とは違ってラグビーで成功を収めています。三男はアンダー20の日本代表に選ばれ、次男は九州代表として活躍しましたが、私は彼らのような特筆すべき成績を残せませんでした。

弟たちの成功を目の当たりにし、自分も何かで結果を残したいという気持ちが強まり、それがきっかけで、ビジネスの世界で独立することを考え始めたのです。独立を決意したものの、具体的に何をするかはまだ明確ではなかったので、まずは経験を積むために、株式会社ギミックという医療系の広告会社に就職しました。

この会社を選んだ理由は、メディアを通じて多くのことを学びながら、自分が本当にやりたいことを見つけたいと考えたからです。当時、この会社は成長意欲に満ちたミドルベンチャー企業で、その熱気に惹かれ、自分も成長できると感じたのです。

会社ではドクターの人柄や考え方に焦点を当てたメディアを制作していますが、私が得意だったのはドクターとの良好な関係を築くことでした。通常、ドクターとの面談は長くて30分程度ですが、私の場合、平均して1.5時間も時間を割いていただけるほど、信頼を得ていたのです。

ドクターとの距離が縮まるにつれ、彼らの本音や思いが見えるようになり、そこで自分の熱意とドクターの考え方との間にギャップを感じるようになりました。まだ入社1年目でしたが、顧客の1人である美容サロンのオーナーから独立を勧められたこともあり、ついに会社を辞めて個人事業主としての一歩を踏み出す決意をしました。

会社を辞めた時の不安は大きかったです。人脈も実力もないし、美容サロンの経営についてはまったくの初心者でした。それでも会社に留まっていては現状を変えることはできないと判断し、環境を変えて新たな挑戦をすることを選んだのです。

自分ならではの”個性”を大切にする

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私は昔から人間関係の構築が得意ではありません。よく「特殊だね」や「ちょっとズレてるね」と言われ、他人から受け入れられにくいタイプだと感じていました。そのため、自分を素直に表現することが難しく、つい強い言葉を使ったり、営業成績を気にして自分を偽ったりしてしまい、苦しんでいました。

しかし、その悩みは美容サロンでの営業活動を通じて次第に改善されました。自己分析や、お客様と繰り返しコミュニケーションを取るうちに、少しずつ本当の自分を見つけ出すことができたのです。

最初は取り繕った話し方や先輩の真似をしていましたが、それをやめてから売上が上がるようになりました。お客様との会話を通じて、相手の反応を見ながら自然体で接することが大切だと気付いたのです。

美容サロンでの接客経験を経て、自分の考えを押し付けるのではなく、相手の考えを受け入れることができるようになりました。私には営業でガツガツした一面もあれば、趣味に没頭するオタク気質な一面もあり、その両方が自分なのだと捉えています。

私が仕事でもプライベートでも大切にしているのは「自分らしさ」です。何かに染まる必要がある時もあるかもしれませんが、それでも自分らしくあることが一番大切だと感じています。自分らしさを持って生きることで、より力を発揮でき、前進することができます。”自由”と”個性”をはき違えずに、これからも自分の個性を大切にして生きていきたいと思っています。

自分らしさが表現できる場所をつくりたい

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現在、美容サロンの業務に加えて、バーの経営にも携わっています。美容サロンでの活動を通じて、「自分をもっと表現し、人々に受け入れられたい」と強く感じるようになりました。

以前の私は、「こんなに努力している」「これだけの成果を上げている」といった話ばかりしていました。しかし、2023年末に自分の趣味やプライベートの話をした際、その話をしている自分が面白いと気づいたのです。この経験を通じて、自分を正直に表現することの大切さに気づきました。

そこで、これまであまり表に出せなかったアニメ好きでオタク気質な自分を存分に表現したいと思うようになり、サブカルチャー、アニメ、ボカロが好きな人たちが気軽に集まれる場を作ろうと決意しました。

「お酒を飲みながら語り合える場所があればいいな」と思い、バーの運営に興味を持つようになりました。そして2024年4月に、バーの運営に関わる機会が巡ってきました。当初は雇われ店長でしたが、業務委託契約を結び、現在は夕方以降の営業を任されています。

このバーはサブカルチャーをコンセプトにしながらも、それに固執せず、普段はサブカル好きであることを公にできない人たちが、自分を表現できる場にしたいと考えています。

バーの経営においては、気軽に立ち寄れる雰囲気を重視すると、売上を伸ばすのが難しくなります。一方、売上を上げるためには、ある程度の客単価を確保しなければなりません。薄利多売のビジネスモデルでは、多くのお客様に来店してもらう必要があり、売上とサービスのバランスを取るのが難しいと感じています。

美容サロンのビジネスは、契約が一度成立すると継続的な収入が見込めるし、単価も高いので、売上を積み上げやすい特徴があります。一方、バーの運営は、顧客ごとに客単価やお酒を飲む量が違うので、お客様が満足しているかどうかは現場の感覚に頼るしかありません。これからは色々と試行錯誤し、運営を改善していきたいと考えています。

今後の展望として、まずはサブカルチャーをテーマにした自分のお店を開くことが第1の目標です。私は東京・秋葉原の世界観が大好きで、あの場所は私が好きなアニメやサブカルチャーがさまざまな形で表現されている特別な場所だと感じています。

秋葉原のような世界観を自分のバーでも表現し、さらに2店舗目、3店舗目と展開していけたらと考えています。また、オタク文化は非常に幅広く、そのクリエイティブな活動をビジネスに活かしていきたいと考えています。

ゆくゆくはアメリカに秋葉原のような場所をつくりたいと思っています。日本と世界の共通言語はアニメと言われるほど、『NARUTO』『進撃の巨人』『ONE PIECE』といった日本のアニメは世界で知られています。ただ、日本でも海外でもオタクというと、どこかネガティブなイメージがつきまとっています。私はそのイメージを変え、オタク文化をもっと前向きに捉えてもらえるようにしたいと考えています。

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