看護師から世界を魅了するプラスサイズモデルに転身「一歩踏み出した先に新しい世界がある」
看護師からプラスサイズモデルへ転身し、パリファッションウィークへ参加した経歴を持つ桃果愛(ももかあい)さん。現役のプラスサイズモデルでありながら、モデル事務所の代表として、キャスティング業やモデルの育成なども行っています。世界で活躍する桃果さんに、これまでの経緯などを伺いました。
ぽっちゃり女性のためのファッションショーを創設
私は、九州看護福祉大学を卒業した後、看護師をしながらフリーのモデルとして活動していました。看護師の仕事もやりがいを感じていましたが、それと同じくらいモデル活動も楽しんでやっていました。
モデル活動をはじめてしばらくすると、東京ガールズコレクションへの参加の機会に恵まれました。ランウェイを歩く際の楽しさは格別です。「自分でもファッションショーを開きたい」と、その時に強く思いました。
東京ガールズコレクションで用意されている衣装のほとんどは、ぽっちゃりした女の子が着られるサイズではありません。こんなに楽しいイベントなのに、「制限があるのはもったいない」「もっといろんな人と楽しめるイベントであってほしい」と思ったんです。
そこで、ぽっちゃり体型の女性を対象としたファッションショー『TOKYO GLAMOROUS POCCHARI COLLECTION』を開催することにしました。たくさんのスポンサーのお力添えをいただき、これまでに4回開催しています。
ファッションショーは、自分以外のモデルが必要なのでモデル募集を行ったところ、予想を超える応募があって大変驚きました。ぽっちゃり体型で目立ちたくないと感じている方も多いなか、「前に出たい」という意欲を持つ女性が多いことが明らかになったのです。
このファッションショーがきっかけで多くのモデルさんとつながり、結果としてモデル事務所の立ち上げに至りました。まさか自分が看護師を辞め、プラスサイズモデルと事務所の代表として活動するとは夢にも思いませんでしたね。
プラスサイズモデルとしてパリファッションウィークに参加
一般的なモデル事務所では、容姿に自信のある応募者が多いと思われがちですが、私たちのプラスサイズモデル事務所には「自信を持ちたい」と願う人が多く訪れます。
体型のことで傷ついた過去がある子も多いので、まずは話に耳を傾け共感しながら「それでもあなたにはこんなに素敵な所があるよ」と、魅力を伝えることを心掛けています。また、モデルたちにはお互いの魅力を褒め合う文化を推奨しています。
うちの事務所に入ってからみんな自信がついて、顔つきまで変わるんです。みんなきれいになっていくのを見て「楽しそうだから私も入りたい」という子が増えました。
私は事務所の代表としてキャスティング業、モデル育成、イベント企画など多岐にわたる仕事を担っていますが、同時に現役プラスサイズモデルとしても活動しています。ランウェイを歩くことはもちろん、企業の商品開発やPR活動など幅広く携わっています。
2023年は特にランウェイを歩く機会が多く、3月にはパリファッションウィークにも参加しました。プラスサイズモデルへの受け入れには当初難しさを感じましたが、私がランウェイを歩いた後は「身体は大きいけどカッコいい」と受け入れてもらえた感覚がありました。
でも私を「魅せた」ことで、多くの人がプラスサイズモデルにも興味を持ってくれて、多様性を認めてもらった気がします。
その後、6月にはバリ、9月にはミラノファッションウィークにも参加しました。また今月のファッションショーには、GLAPOCHAモデルが参加します。今後は、さらに世界規模での活動展開を目指しています。
起業したことでもっと自分らしくなった
モデルとしての活動や事務所設立の経験を通じて、私は“失敗”と感じたことは一度もありません。もちろん試行錯誤のなかで「これは違う」と感じることはありましたが、それは学びの一部です。何事も実践しなければ分からないことが多いです。
事業を始めるとすべての責任が自分にあります。問題が生じた場合、自分がその責任を負う必要があります。起業に対する不安や恐怖はありませんでしたが、責任の重さは常に感じています。むしろ、起業することで自分らしさをより発揮できるようになり、独立して本当に良かったと思っています。
人生は一度きり。主役は自分自身です。一歩を踏み出すことで、世界が大きく変わることを私は信じています。今後は、プラスサイズに限らず、体型や年齢、性別、障がいなどさまざまな垣根を越えて、「みんなで楽しく生きていこう」というコンセプトの仕事をしたいと思っています。