株式会社オファサポート
服部幸雄 × ワクセル
今回のゲストは前回に引き続き、宮崎県で多数の事業を展開されている株式会社オファサポートの服部幸雄社長です。前回は事業全般についてお話しを伺いました。今回は服部社長の経営哲学や、地元である宮崎への貢献などについてお話しいただきます。
経営者は運が50%!自分の直感を信じて行動
住谷:前回に引き続き、宮崎県でさまざまな事業を展開している株式会社オファサポートの服部幸雄社長にお話を伺います。事業を展開している宮崎県への思いをお聞かせください。
服部:宮崎にはいい思い出も悪い思い出も両方あります。「恩返ししたい」が50%、「見返したい」が50%です。自分はそんなに優等生ではなかったので、後ろ指を指されたこともありました。そういう人たちを見返してやりたいです。でも人様に迷惑をかけながらも応援してくれた人たちと、最後まで温かかった宮崎には恩返ししたいです。
最近の事業のお話しをしますと、実は、コロナ禍で移動式のPCR検査場をつくりました。あれは自分でも本当によくやったと思っています。当時、PCRの検査場は全国で徐々にできていました。
有事の際の機動性が大事だと考え、移動式での検査を検討しました。しかし、当時の法律では移動式の検査場が認められておらず、保健所からの許可が下りなかったんです。
でもこのパンデミックにそんなことをずっと言い続けられる状態ではないだろうから、これは絶対に緩和されると思い、法律が緩和される前に移動式の検査場をつくり上げました。車を買って、車両用の検査機器がないのでそれ用にカスタマイズして組み立てました。そして、その2か月後に国がOKを出したんです。
認可がおりてからつくるのでは遅いと思い、何の保証もないですが絶対必要になると信じて取り組みました。このような事業の進め方、スタイルが正しいとは思わないですが、経営者も運が50%必要だって言うじゃないですか。僕はたまたま運を持ち合わせていたのかなと思います。
住谷:ベースボールアカデミーはどういう経緯で立ち上げたのですか?
服部:純粋にジャイアンツの大ファンなんです。巨人は宮崎にずっとキャンプに来ているし、巨人戦はテレビで必ず見ていました。小学校の頃、ソフトボールをやっていたのですが、背番号は3でしたからね(笑)。もうひとつの理由は、故郷が一緒でお世話になった先輩から、やってくれないかと言われたことです。
ジャイアンツアカデミーをやる前は、介護の仕事をしたり、運転技能検査を支援する『セフモ』を提供するなど、シニアに対しての貢献はできていたけど、子どもに対しては何もできていないと感じていました。
でもジャイアンツアカデミー事業を立ち上げたら、子どもに対しても社会貢献というか、育成みたいなことができそうだと思いました。収益としては難しい事業ですが、野球だけを教えるということではなく、礼節や協調性なども学んでもらいます。小学校でもベースボール型授業というものがあるくらいですが、育成事業としても良いと思っています。
大事なのは人間性。対話しながら資質を引き出す
住谷:これからの時代・社会を生き抜いていくためには、何が求められると思われますか?
服部:人材でいうと、大事なのは人間性だと思います。会社の採用の際には、今は面接をしていません。なぜかというと、面接の時はみんな問答を用意して、履歴書や経歴書もみっちり書くじゃないですか。
でも対峙したとき、「この会社のここが魅力で志望しました」とかのきれいごとではなく、「次に転職したら嫁から離婚されるんです。だからとりあえず働きたいです」とか「家が近いんで」とか、その人の素が出る不純な理由が好きなんですよね(笑)
普通は学歴、経歴で見ることが多いと思いますが、中卒も大好きですし、うちの幹部にもいます。ベースは0でいいんです。これができていないから不採用ってよくありますが、できるようにするのは我々の仕事で、最初からそこを求めるのはおかしいとずっと思っています。
だから素でぶつかってきてもらいたいし、面接官は素を見抜いてほしい。面接にねじりはち巻きして来てもいいんです。うちで働いてもらって最終的に3年後、スーツを着ているかもしれないですからね。大事なのは人間性です。
一生懸命に勉強して大学も出ているような優秀な方は、大手企業に行った方がいいかとも思いますが、ローカルの中小企業に来てくれるのなら、もっと違うぶつかり方がいい気がします。極端な話、「仕方ないから来てやったよ」ぐらいの感じでもいいと思うんです(笑)
僕が会社で大事にしているのは、対話しながら資質を引き出すということ。年齢や役職などは関係ないと考えているので、こういう話を1年目の人間にもしますし、「管理職にお伺いを立てなくていいから、若手だけでアイデアを出してそれをやりなさい」とか言ったりもします。対話しながら本人たちの資質を引き出すという、育成会もやっています。
不安8割でやるからこそ勝機がある
住谷:最後に、これから新しいことに挑戦する人たちに向けて一言お願いします。
服部:市場調査をして、事業計画や戦略をびっしり立ててやることもひとつの選択肢で、そこで成功している方たちもたくさんいらっしゃいます。そのようなやり方を否定することはありませんが、僕はある意味、不安8割でやってほしいと思っています。
不安8割ということは、将来がはっきりしない、ままならない状態です。マーケティングしても勝ち戦ではなくても、この不安8割でやるからこそ勝機はあると思います。だって他に誰もやっていないわけですから。ここに手を出した人が、最後に残存者利益を得るんじゃないでしょうか。
市場調査も大事だけど、最後に残るのは勇気だけだと思います。ではどうして僕は割り切れたかというと、0から始まった人間だからです。失敗して失っても0に戻るだけなので覚悟はあります。
たとえば3代目、4代目だと、祖父母から受け継いだものを自分の代でどうにかしてしまうとか、すごいプレッシャーですよね。授かったものを守らないといけないのは大変です。創業者も大変という人はいますが、創業者は0に戻るだけなのである意味では楽です。だから覚悟と勇気が大事なのです。