現役弁護士が取り組む「地域のコミュニティづくりと町会の再編成」
北永久(きたながひさ)さんは東京大学法科大学院を卒業後、企業の顧問弁護士として企業法務案件・一般民事案件に従事。現在は公益社団法人東京青年会議所の理事としても活躍しています。2022年には地域祭り「文京思い出横丁」の発起人となって開催。皆と一緒にワクワクすることに日々チャレンジする北さんに、現在に至るまでの経緯や、今後のビジョンについて伺いました。
大規模法律事務所から弁護士として独立
大学の入学試験では偏差値が高いところを狙っていたので、志望したのは法学部でした。考えることが好きなので、本当は哲学部に入りたくて法学部から移ろうと思ったほどです。法律の勉強が性に合っていたのか、司法試験はすんなり通過しました。
それから刑法学者になりたくて、東京大学の法科大学院に入学。そこで学者のハードルは高いことを知り、弁護士、裁判官、検察官のどれかに進むことを検討しました。裁判官は物静かなイメージ、検察官は体育会系のイメージがあり、消去法で弁護士だと思って選択しましたが、実際にフィットしている感覚もありました。
弁護士になった当初は、大企業の法律顧問を中心に、幅広い分野の事件を担当していました。ただ、色々な事件を担当していくなかで、直接、経営者とやりとりができる中小・零細企業の案件が自分にはフィットしているなと感じることが多くなりました。
大規模な法律事務所から、小規模な事務所へ移籍した2年後に独立を決意。お世話になった事務所の上の階で独立する流れとなり、1年目の弁護士2名とともに法律事務所を設立しました。
現在もお世話になっている顧問先から、「独立するなら青年会議所に入った方がいい」と言われたのがきっかけで入会することになりました。弁護士の仕事は割と融通が利くため、青年会議所の仕事も同時にこなしていきました。
青年会議所は「社会を変えよう」と運動を展開しますが、単発で終わってしまうことが多い状況に当初はもどかしさがありました。気付いたら自分発信でさまざまなことを手掛けるようになり、まるで部活動のように皆で取り組むのが楽しく感じるようになりました。
コロナ禍を乗り越えフードパントリーを開催
青年会議所においても、公益社会法人であることもあり、新型コロナウイルスが流行りだした当時は、社会の流れに反する活動の制限が厳しくありました。一方、「世の中が大変な時期だからこそ何かしなければ」と言う声もあり、フードパントリーをスタート。
最初は場所を見つけるところからひと苦労でした。区は場所を貸してくれませんでしたが、道端で配るわけにもいきません。普段からよく飲みに行っていたお店で、日曜日だけカギを借りて運用させてくれるご縁をいただきました。
ただ、困っている人の情報を区が提供してくれるわけもなく、仲間内で30〜40人にきてもらうところからでした。認知度を広めるために道行く人に声掛けするところから始まったこの活動も、今ではコンスタントに60名~70名が集まるまでになりました。Twitterで拡散する人も増えてくると、さまざまな福祉団体からも「困っている人がいるので、登録させてもらえないか」とお声がかかるようになりました。
フードパントリーは、学校に通えない大学生などが取りに来ることもありましたが、徐々に運営側に入ってもらって、一緒に取り組む機会も増えました。
その他にも子ども食堂を開催することになり、フードパントリーの登録している人たちに情報を流すと、お弁当配布に30人ほど来ていただくようになりました。月1の開催ではありますが、皆でワイワイとやることが楽しく感じています。
楽しくおもしろく町会を再編成
新型コロナウイルスが蔓延してから3年間は、地元の幼稚園、小学校などは何もイベントができない状態が続いていました。それなら自分たちでお祭りをつくろうと思って、「文京思い出横丁」を開催しました。
お祭りをやることでコミュニティが形成され、そのコミュニティが別の地域課題を解決していくことにもつながります。言わば、町会の再編成をすることで、近隣と助け合いのために人とのつながりがつくられていきました。
町会という組織が先に存在して、その組織でお祭りを開催するのとは逆の流れで、お祭りを実施することでコミュニティが形成されていました。そして、お祭りをすることは地域で何かあった時の予行練習を兼ねています。防災・防犯に大きく寄与すると思っています。ソーシャルディスタンスにより関係性が希薄になってきたからこそ、人とのつながりができるイベントを開催することに意味があります。
行政が地域コミュニティをつくって運営をしていくというのは、とても難しいことですので、自分たちで切り拓く必要があります。私は“お祭り”という形にしましたが、何かあった時に動けるよう各地にコミュニティができたら良い社会になると感じています。