経営者対談

漢方薬剤師、心理カウンセラー
「結城 奈美枝」×ワクセル

漢方薬剤師、心理カウンセラーの結城奈美枝さんにインタビューさせていただきました。

薬科大学を卒業後、漢方薬局の会社に就職して、都内の薬局店店長経験を経て本部店舗販売促進部へと就任。

その後、29歳のときに子育てをしながら女手一つで漢方薬局を起業され、会社にし7店舗まで広げましたが、7年前に離婚して会社を全部手放す経験を経て、今は新宿にて仲間に恵まれ、漢方カウンセリング薬局と鍼灸院を併設経営、婦人科や皮膚科にも勤務されています。

今回は結城さんの貴重な経験や知識をシェアしていただいたので、ぜひ最後までお読みください。

信念をもって仕事をすれば仲間が集まってくる

インタビュアー:ベビーカーを押しながら女手一つで漢方薬局を起業された経緯をお聞かせください。

結城:大手の会社を妊娠を機に退職したあと、ふとパートで勤めた街の小さな漢方薬局の売り上げを劇的に伸ばし、そこの店長に「あなたはすごい才能を持っているから起業した方がいい」と強く勧められたのがきっかけです。

当時、まだ28歳。会社に勤めていた時も売り上げを劇的に伸ばし、店舗販売促進部にいち早く昇進していたため、「会社内だけでなく、世間でも通用するのかな?」とついその気になり、」深く考えずに「やってみよう!」と思い起業しました。

1996年に起業したのですが、当時は今とちがって女性起業家が少ない時代。まわりの人たちは子供を育てながら起業することに対して、かなり批判的でした。

不動産屋にもなかなか相手にされず、物件が見つかるまでに半年間かかりました。ときには説教もされました。ただ、わたしは批判されるほど見返してやろうと思うタイプなので、逆にやる気が出ました。

これから社会のためになることをやろうとをしているのに、なぜここまで批判されるんだろうと当時は「悔しい想い」でしたね。

最終的に応援してくれる不動産屋の方と出会い、起業へと前進できました。信念を持ち続けていると同じような信念をもっている素敵な人と繋がれるんだなとわかりました。

インタビュアー:起業5年で7店舗まで拡大できた理由をお聞かせください。

結城:店舗を増やそうと思っていたわけではなかったのですが、優秀な従業員に恵まれたおかげで7店舗まで拡張することができました。

一緒に働きたいと言ってくれる人がたくさんいらっしゃって、本当にありがたいです。

インタビュアー:店舗が増えるとそれだけ大変なことも多かったのではないですか?

結城:従業員を育てるなかで多くのことを学ばせていただきました。人を育てることと子供を育てることは似ているなと思います。

子供は思い通りに育たないじゃないですか。長所も短所もすべてを受け入れて、まず先に認めてあげることが大切だと思います。

社員を育てるのも同じ感覚で、認めたうえでどう長所を伸ばしてあげるかが大切なんだなと学ばせてもらいました。

インタビュアー:2012年まで16年間かけて黒字経営できたのはなぜですか?

結城さん)ありがたいことに、自分より才能のある社員がたくさん入ってきてくれたからです。わたしは社員一人一人が最大限活躍できるように土壌をつくろうと頑張りました。

その甲斐もあってか、「仕事に集中できるから、うちの会社に入った」と言ってくれる人が多いです。

インタビュアー:海外にもよく行かれていたようですが、東洋医学と西洋医学の違いは大きかったですか?

結城:はい、全然違いました。アメリカに行ったときに、最先端のエリート医師とお話しさせていただく機会があったんです。

アメリカでは西洋医学と東洋医学が一緒になっていて驚きました。同時に、東洋医学が西洋医学と同様にリスペクトされているんだなと実感しました。

子育てしながらの仕事で多くのことを学んだ

インタビュアー:育児と仕事のバランスはどう取ってきましたか?

結城:忙しかった時期に、会議が長引き夜中に帰宅したことがありました。「子供に寂しい思いをさせてまで、何のために働いているんだろう?」と自問自答を繰り返しました。

家に帰ると子供からの手紙がおいてあって「ママ、いつも僕たちのために働いてくれてありがとう」と書いてあったんです。

これをきっかけに、子供に寂しい思いはさせないと決めました。夜にやっていた会議は朝に変更し、飲みに行って話す代わりにランチの時間内に話し合うようにしました。。

時間が決められているので、重要なことだけを話せるようになりました。結果的に、子供のためにやったことが仕事の効率化に繋がり、会社を成長させました。

インタビュアー:お子さんを薬局に連れて行っていた時のエピソードをお聞かせください。

結城:起業当時、子供を預かってくれる施設もなかなかありませんでした。そのため、薬局に子供を連れていくこともありました。

ある日、お客様が来たので息子に調剤代の下に隠れてるように言いました。お客様が帰ったあとに息子の様子を見たら、調剤台の下でお客様に頭を下げていたんです。

息子になぜ頭を下げていたのと聞いたところ、お客様のお陰で生活ができているので感謝のお辞儀をしたとのことでした。子供たちから大切なことを教えてもらい、わたしも人間的にさらに成長できました。

漢方薬にも人間関係と同様に相性がある

インタビュアー:漢方薬剤師ならではの健康法、おすすめの漢方はありますか?

結城:江戸時代、オランダから入ってきた西洋医学を蘭方と呼ぶようになりました。それに対して日本の伝統医療を漢方と呼ぶようになったのです。漢方はよく中国のものと思われがちなのですが、日本古来の医療なんです。

シルクロードを通じて中国やベトナムのものを集め、日本独自の医療として漢方は発展してきました。

今日は甘草(かんぞう)、芍薬(しゃくやく)、大棗(たいそう)、生姜(しょうが)、桂皮(けいひ)の5種類の生薬(自然界に存在する動植物を用いる薬、漢方薬の原料)をご用意しました。

これらを合わせて処方すると、桂枝湯(けいしとう)という漢方薬になります。いろいろな漢方薬のベースになる組み合わせですね。

ちなみに、これに葛根(かっこん)、麻黄(まおう)を加えると有名な葛根湯になります。

インタビュアー:生薬は自由に組み合わせていいんですか?

結城:漢方にも相性があります。人間関係と一緒ですね。植物は人間の大先輩ですが、植物の時代から相性は存在したようです。

不眠の場合は、基本の5種類に竜骨( りゅうこつ)、牡蛎(ぼれい)を追加すると桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)という漢方薬になります。

竜骨は哺乳類動物の骨のことで、神経を鎮める効果があるカルシウムを含んでいます。現在は入手しやすい牡蠣の殻(牡蛎)も混ぜるようになっています。

インタビュアー:植物以外にも漢方薬の原料はありますか?

結城:一例をあげると、鉱物の石膏ですね。最近研究が進んでいて、首から上の症状、特に喉の症状に使えるんじゃないかと言われています。

ほかには動物由来のものもあります。一番身近なのはすっぽんですね。

漢方薬によって腸内環境が整う

インタビュアー:花粉症に効く漢方もありますか?

結城:花粉症には小青龍湯(しょうせいりゅうとう)を出されている方が多いです。青龍は天皇家の東側を守る水の神様として、川に宿るとされています。

花粉症は鼻水が出ますよね。水分代謝を改善するために水の神様を取り込むという考えなんです。さらに麻黄も入っているので覚醒作用があります。

西洋の花粉症薬は抗ヒスタミン剤によって脳内の伝達物質が減り、頭がぼーっとしやすいです。小青龍湯は頭がさえるので、使い分けてもらうといいと思います。

アレルギーがあると粘膜が荒れて、肌も荒れてきます。漢方薬は粘膜を強くするのが得意なので、体質に合わせて処方することで改善が期待されます。

最近腸活も流行っていますが、漢方は腸内環境をよくするものがたくさん入っているので、腸活にもおすすめです。

花を潤すなら根に水をあげるのと同様に、漢方薬によって内側に水分を与えてあげることによって肌荒れや乾燥を改善できるのです。

インタビュアー:肌も含め、常に健康を気にしていらっしゃるんですね。スタイルの良さの秘訣も漢方ですか?

結城:ありがとうございます。たしかに、今年に入って一気に痩せたんですよ。自分でもこんなに痩せるとは思わなかったのですが、漢方と合わせていろいろやってみたら痩せられたんです。

リバウンドも、痩せることで老けたくもなかったので、アンチエイジングしながら痩せられる方法を探した結果、3か月で8kg痩せることに成功しました。

今日は残り時間も少なくなってきたので、リバウンドしないダイエット法については、また次回お話しさせていただきます。