
「世界の山ちゃん」展開のエスワイフード代表取締役
「山本久美」×ワクセル
「世界の山ちゃん」ブランド等を展開するエスワイフード代表取締役「山本久美」さんにインタビューさせていただきました。
山本さんは、夫であり株式会社エスワイフード創業者である山本重雄さんが2016年に亡くなられたことを機に、代表取締役を引き継がれました。ご自身はまったく会社経営の知識・経験がないなかで、カリスマ経営者であった前社長とは異なるやり方で社員をまとめ上げ、世界の山ちゃんを成長させてきました。
主婦から一流経営者へとステージアップされてきた山本さんが、仕事や人生において大切にされていることをインタビューさせていただきました。
世界の山ちゃんと社員を守るために、未経験ながら代表取締役に就任

インタビュアー:会社経営の経験がないなかで、経営を引き継ぐ決断をした理由をお聞かせください。
山本:会長(故 山本重雄さん)は本当に急逝だったので、跡継ぎや次期候補者がまったく決まっていませんでした。そのため、経営を誰に任せたらいいのかわからず、外から優秀な経営者を連れてくることも検討しました。
しかし、当時の幹部は会長とともにお店をつくり、一から会社を成長させてきた方々です。そこまで貢献してくれている方々を差し置いて、関係ない人を外から連れてくるのは間違っている気がしました。
当時、M&Aの話もいただいていましたが、会長が作った会社を人のものにすることに抵抗があったのでお断りしました。正直、M&Aを受けたら社員がどうなるのか、 会社がどうなるのかはよくわかっていませんでした。ただ、会長が作り上げてきた会社を関係がない人に渡すのは嫌だなという気持ちは強かったです。
バスケットボール監督時代の経験が会社経営に活きている
山本:ありますね。居酒屋経営とバスケットボールは似ていて、社長が監督、店長がキャプテンの役割だと思っています。
代表取締役になる前に、小学校教師とバスケットボール監督を経験しましたが、どちらも人をみる力が必要でした。その経験があったので「人をみる、適材適所に人を置く、チームワークを築く」といった部分では人より少し優れていたのかなと思います。
インタビュアー:会社は男性が多いですが、その中でリーダーとして意識していることはありますか?
山本:わたしはかなり体育会系で中性的なので、男性だから、女性だからというのは気にしたことがありません。ただ、自分が経営に関して素人だということに負い目を感じることはあります。くわえて母親業もあるので、全部の時間を会社のために使えないという点も申し訳なく感じています。
まさか自分がリーダーシップをとって会社経営をするとは思ってもいませんでした。会社を引き継いで最初に幹部を集めて話し合ったときも「わたしは経営や居酒屋に関してまったくわからない。少し歳をとった新入社員が入ったと思って、1から教えてください」と言いました。「みんなで一緒に会社を成長させましょう」と言ったのを覚えています。それ以来ずっと、わたしがリーダーというよりは、みんなで相談し、助け合っていこうという感じでやっています。
インタビュアー:カリスマ的存在の会長が亡くなって、会社や社員はどのように変化したと感じますか?
山本:自分たちでやらなければという気持ちが強くなりました。以前は会長の言うことを聞いていればどうにかなると思っていて、甘えがあったんです。しかし、会長が亡くなり頼れなくなってしまった。
それでも「会社を守りたい」という気持ちは強く、社員も会社愛にあふれている人が多いので、自分たちで頑張って会社を良くしようとしてきました。
店舗に頼らない経営でリスク分散をする

インタビュアー:最近は新型コロナウイルスの影響もあり飲食業界は厳しい状況かと思いますが、乗り越えるために大事にされていることをお聞かせください。
山本:店舗のみに頼らず、ほかでも売り上げを立てられるようにしています。商品開発をして、店舗以外の売り上げを増やすなど、リスク分散することが重要だと思っています。
店舗でも新しい商品開発やブランドづくりをしています。1番大切なのは、店や会社より社員の生活を守ること。モチベーションが下がらないようにやめてしまう人が出ないように、必ず盛り返すぞという気持ちで一丸となってやってます。
長く繁栄する秘訣は変化しつづけること
インタビュアー:海外出店もされていて、会社が右肩上がりで成長されている理由はなんだと思いますか?
山本:小さな変化の繰り返しだと思います。飽きられてしまうとお客さんは離れてしまいます。飲食業界は10年で9割が廃業すると言われていて、変えてはいけないことと、変えるべきことを見極めるのがとても重要だと思っています。
主人は変化を好む人でしたし、現在も小さな変化を続けているので飽きられずにここまで成長できました。具体的には取り入れるメニュー、店舗の見た目、店内の雰囲気などを変えていきました。
できないことはできないと言って、人の力を借りる

インタビュアー:3人の子育てと経営を両立させるために意識していることを教えてください。
山本さん)会社に対しても家庭に対しても、できる限りのことをやることでしょうか。サボらないことは礼儀だと思います。会社も家庭も100%で取り組みたいと思いますが、1日は24時間しかないので、実際は不可能です。そのため、どちらに対しても最大限の努力はしたうえで、できないことは無理せず人を頼っています。
インタビュアー:山本さんは人が力を貸したくなる存在だと思うのですが、人の力を借りる秘訣を教えてください。
山本:特に意識していませんが、ダメなところが多く、助けないと危ないから助けたくなるんだと思います。できないことが多く、欠けているところがたくさんあるのでみなさんが助けてくれます。あとは、できないことはできないとハッキリ言っているからかもしれません。
インタビュアー:リーダーという立場で、できないと言うことは勇気がいると思いますが、どう捉えていらっしゃいますか?
山本:会社経営に関しては急に引き継ぐことになったので、私は悪くないと思うようにしていました。たとえ会社がうまくいかなくても、跡継ぎを育てていなかった会長のせいだと(笑)
わたしに会社経営ができると思ったことはありませんでした。できないことはできないと開き直って、できる人の力を借りてきました。
その反面、バスケットボールでは無理をし続けてきました。学生時代、他の選手より背が低く不利だったので、精神的支柱になる努力をしてレギュラーを勝ち取っていました。チームになくてはならない存在になるように意識していました。
さらに、3年間誰よりも早く練習をはじめ、誰よりも遅くまで練習していました。背が低いぶん遠くからシュートを入れられるようになる練習をして、技術面でも他の選手との差をつける努力をしていました。
勉強も頑張りました。顧問の井上先生から「学年に1人は勉強できる人がいないと、バスケ部はバスケばかりやって勉強していないと思われる。」と言われ、眠くても無理して勉強していました。
「素直、謙虚、感謝」の気持ちを忘れずにチャレンジする

インタビュアー:最後に、これから起業される方や目標に向かってチャレンジされる若者にメッセージをお願いします。
山本:1人の人間として、成長することが仕事や人生の成功に繋がります。「素直、謙虚、感謝」の気持ちを常に持ち続け、チャレンジしていってほしいです。
■ホームページ
世界の山ちゃん
■書生
まんがでわかる 世界の山ちゃん 成功の極意㊤