中部大学ラグビーチーム監督
長江有祐 × ワクセル
今回のゲストは中部大学ラグビーチームの監督を務めている長江有祐(ながえゆうすけ)さんです。2015年にラグビーワールドカップのバックアップメンバーに選出され、現在はクラブチーム『春日井シティウォリアーズ』を設立されるなど、ラグビーと共に人生を歩んでこられました。
選手のセカンドキャリアの可能性や、子供や女性のクラブチームの設立など、ラグビーを通した社会貢献、地域活性化に力を注いでいます。
選手のセカンドキャリアの可能性、ラグビー×SDGsを推進
住谷:本日のゲストは中部大学ラグビーチームの監督をされている長江有祐さんです。長江さんは2001年、中部大学春日丘高校入学後にラグビー部入部、2004年に京都産業大学で1年生から公式戦にレギュラー出場し、2008年にリコーブラックラムズに加入。2014年、豊田自動織機シャトルズ愛知へ移籍し、2015年にラグビーワールドカップのバックアップメンバーに選出されました。2020年には近鉄ライナーズに加入し、翌年、勇退。現在はクラブチーム『春日井シティウォリアーズ』を設立、代表を務められています。
長江:『春日井シティウォリアーズ』では、現役生活を送るなかで感じた、「夢を追いかけるための場所」「引退した選手が自分の価値を活かす場所」、そして「ラグビー×SDGsを生み出していく場所」といった、日本ラグビー界にとって必要な場所をつくる組織として運営しています。
日本ではトップレベルのリーグでも「企業スポーツ」と言われるとおり、社員選手がほとんどになり、引退後はスポーツから遠ざかってしまうことが多いのが現状です。それはあまりにももったいないので、仕事をしながらトップレベルでプレーする社員選手のセカンドキャリアの可能性を考えています。現在では女子ラグビーチームや子どものアカデミーも設立し、あらゆる環境を整えているところです。
今日はワクセルの住谷さんにも、ラグビーを体験していただきたく、中部大学の部員と一緒に楽しんでいただければと思います。
部活動を通して、社会で活躍できる人材を育成
住谷:タックルもスクラムも、あれを続けながら試合をやるのは本当にすごいと思いました。部員の選手はみんな素晴らしかったですが、チームづくりで大切にしていることは何ですか?
長江:選手には自主性を大切にしてもらっています。自分たちで状況を判断して、コミュニケーションを取ること。そして、どうやって課題を解決していくか、みんなで話して、アイデアを出し合っていこう、そういうことに挑戦してみようと指導しています。
なので、チーム内では会話がたくさんあります。部活動は教育の場ですから、単に勝てばいい、勝利至上主義ではなくて、高い満足度で、引退・卒業していってほしいという思いがありますね。
トップレベルの選手ほどラグビーだけというわけではないので、僕は部活も学業も、社会につながるようにしていきたいと思っています。たとえば、うち(中部大学ラグビー部)だったら学生がコーチになって子ども向けにラグビーを教えていますが、そういう活動をどんどんやって社会に出ても活躍できる人材を育てていきたいと思っています。
住谷:学生がコーチになるというのは斬新ですね。最初は苦労したのでは?
長江:どこもやっていないことですから、最初は大変でしたね。だからこそ僕はやった方がいいと思い、最初に共同主将制のリーダー陣と話し合いました。
共同主将制というのは、複数人で主将をやるというものです。主将というと一人だとイメージする方も多いと思いますが、複数人で役割を分担したり、さまざまな視点で物事を捉えることができるので、今スポーツ界でも増えている考え方です。
そのリーダーたちが、「どこもやっていないからこそやるのは面白い」と言ってくれ、力になってくれたのが大きいですね。僕は去年の4月中旬から中部大学に入り、そこから改革していったので、時間はあまりなかったんですけど、その時に、4年生が積極的に動いてくれたので、チームがスムーズに動きました。今までチームを引っ張ってきた4年生が新しいことに一緒に動いてくれることで、下級生も自然と動くようになります。そうして、笑顔とコミュニケーションが溢れる場になっています。
ラグビー界のジェンダー平等に貢献する
住谷:女性のラグビー部員もいますが、チームで工夫されていることは?
長江:僕がこのチームに入った時は、女性選手が数名いましたが、部としては活動していませんでした。見学しているだけの状態では良くないと思ったので、大学側にも「この子たちの人生のために、女性部員は活動させないというのは違うと思う」と意見をしました。そして大学の部活動ではなくて、クラブチーム化することにしました。
中部大学の女子選手だけではなくて、他の大学からも、愛知県内の専門学校に通っている子や、会社員なども入れてチームをつくりました。「ラグビーが大好きだから続けたい。だけど続けられる環境がなかった」という人たちに来てもらいたかったんです。
その大学、企業に入らないとラグビーができないというのではなく、どんな人でもラグビーができるという状態をつくり、社会人で働きながら、ラグビーでも活躍できる女性が増えていくことで、ラグビー界のジェンダー平等のようなことも進んでいきます。
学生と社会人が交流することで、さまざまな経験も身に付く可能性もありますし、場を整えることで人が集まってミュニケーションが生まれます。この文化が根付くことで、のちに『伝統』という形になると考えています。
住谷:場を整え、文化を根付かせるんですね。では、今後のビジョンを教えてください。
長江:そうですね。やりたいことが多すぎて困るぐらいなんですけど、究極を言うと「ラグビーを通して笑顔が溢れる社会を作っていきたい」です。それにはもっと活動の幅を広げていきたいですね。社会にまだ出ていない学生でも、愛知県内にとどまらず岐阜県でもイベントを開催していますし、もっと広げていきたいです。
あとは女性と子どもとのつながりもさらに作っていきたいと思います。中部大学では、ラグビーの女子チームと子ども向けのアカデミーを設立しました。
女子チームに関しては、いずれは日本一を目指していけるようなチームにしていきたいです。地域企業の支援もいただきながら、一緒になってラグビーと地域をもっと盛り上げていきたいと思います。地域の起爆剤となるチームに成長できたらいいですね。とにかく「ワクワクできること」をどんどんやっていきます。