経営者対談

ファッションバイヤー
「MB」× ワクセル

ファッションバイヤーのMBさんにインタビューをさせていただきました。

MBさんは、アパレルの店舗スタッフからキャリアをスタートし、店長、マネージャーとステップアップされ、現在はオンラインサロンの運営やブログ『最も早くオシャレになる方法KnowerMag』の運営ほか、『週間SPA!』を始めとする有名雑誌で多数連載を持つなど、ファッションを軸に幅広い媒体でご活躍されていらっしゃいます。

また、作家としても才能を発揮されています。著書『最速でおしゃれに見せる方法』は、お洒落が苦手な人でもすぐに実践できるように、ファッションが言語化されていると大好評だそうです。

インタビューの中でMBさんは、「内面のいちばん外側」が外見だという考えを教えてくださいました。MBさんのカッコよさは、ファッションという視覚的なものだけでなく、目には見えない、人間的な軸の部分が関係しているのだと感じました。

「好き」から始まったファッションを事業として取り組まれようと思ったきっかけをお聞かせください。

MB:実は色々なきっかけがあるのですが、大きいきっかけは、僕が好きだったブランドやお店がつぶれそうになってきたとき。7年前にはちっちゃいブランドや中小規模のブランドがどんどん元気がなくなってきて「いよいよ、アパレルやばいな」と感じました。

1990年代後半や2000年代前半は、ちっちゃいブランドがすごい頑張っていたんですよ。発売すると綺麗に在庫がなくなり、毎シーズンちゃんと売れて、だんだんとファンができてくるような状態でした。それが、ユニクロなどの量販店が質の良いものを出してきた関係もあり、だんだん縮小していきました。

デザインを頑張ってたデザイナーズブランドは、どんどん元気をなくして。洋服屋のマネージャーやショップスタッフをやっていた関係で、マネジメントしているお店を回り、スタッフの動きやお客さんが何を探しているのかをずっと見ていたのです。それが、毎年やっているうちに「あれ?なんかお客さん居なくなってきたな」と感じたんですね。

でっかいイオンモールに入っているお店は、お客さんがガンガン入らないと、絶対売上があがらない。それなのに、1日居て「今日まだ10人しか来てないぞ」という状態でした。ここまでくると、個人の力でこの状況を動かすのはすごく難しい。違う市場からお客さんを引っ張ってこないと、もうだめなレベルになってきているんだなと感じました。

今までのやり方でやっていても、僕の好きだったブランドや洋服屋さんはどんどんなくなっていってしまうのだろうなと思った時に、自分でできることってなんだろうと考えました。そして、「ファッションに自信がない人にアプローチすることで、マーケットが広がるはず」と結論づけました。

世の中は、ファッションが好きな人に対してアプローチしている。僕は逆に、ファッションに興味がない人や苦手な人に対してアプローチをするように、構造を変えたビジネスをやってみようと思ったのです。それが7年前になります。

だから本当に個人的な動機ですね。好きなブランドがどんどんなくなっていくのが嫌だった。すごく良い服をつくっているのに、それが絶対に伝わっていない。こんなの絶対におかしいと思いました。「ちゃんと伝える方法を誰かが整えてあげないと」と思い、自分一人でどこまでやれるかわからなかったけれど、やってみようと思ったのがきっかけです。

MBさんが大きな結果を出した原因は何だと思いますか?

MB:9月26日に出す新刊『もっと幸せに働こう』にも同じことを書いているのですが、僕は「持たざる者」なんです。僕は上場企業に務めたことが一度もなくて、本当にちっちゃい地方の企業勤めばかりです。学歴も無名の国立大学を出て頭もよくないし、資格は車の運転免許しかない。何も持ってなかったんですよ。

何も持っていない中で、どうして結果を出せたかというと、ファッションから教わったことが大きいです。ファッションは差別化じゃないですか。ひとと違う評価を得たければ、ひとと違う行動をしなければいけない。ファッションは権化で、ひとと違うことをやったらその分褒められる。

ただ、その「違う」もデタラメに違うと誰も見てくれなくて、客観性を伴った差別化である必要があると思うのです。「みんなが理解できる範疇の差別化」というのが洋服の根本だと思うのですが、ビジネスでも全く一緒ですよね。差別化して違う行動しないと、みんなと同じ結果しか出ないじゃないですか。

ビジネスにおいてデタラメな差別化の例えとしては、「自分はみんなとは違うから、みんなが行ってる会社にも行かない!」とか。これは違いますよね。大前提として、ビジネスには客観性が必要です。僕は客観性のある差別化をするために、「ファッションで教わったことをビジネスでもやろう」と思いました。この客観性のある差別化をしたことが、結果を出せた理由だと思います。

客観性とは、いわゆる論理的思考や合理性だと思います。
ファッションが好きな人には、画像や動画でアプローチをすれば響くけれど、ファッションが苦手な人、画像を見ても格好良さが理解できないことが多いのです。「ファッションが苦手な人でも格好良さが理解できるように説明することから始めよう、ならば文章を使おう」という論理の中の差別化をしたのです。

僕がやっていることは、基本的にすごいことってひとつもないです。スタイリストさんだったら、言語化はできていなくても感覚的には理解しているのです。

「裾を短くしたほうが、足が長く見える」
「パンツと靴の色を合わせたほうが、足すらっと見える」

このような、誰でも知っていることを言語化して、文章で説明して、ファッションに苦手意識のある人に対してアプローチする。アプローチとターゲットの合致というのが、できていただけだと思うのです。

感覚を言語化することはすごく難しい気がしますが、工夫されたことはありますか?

MB:これは本当に時間がかかりました。僕の仕事の中だと一番大変なことで、はじめから大変だったから、最初に気がついたんですよ。

ファッションが苦手で馴染みのない人に、格好良さを教えるためには、テキストベースでしっかり説明する必要があるなと。ガッツリ理論を組んで、誰でも再現できるということを提示する。そのための説明書みたいなものを作ろうと思いました。

「僕がかっこいいって思っているこの服は、なんで格好良いんだっけ?」
「今のトレンドは何が格好良いんだろう?」
「どうしてこのスタイルは足が長く見えるんだろう?」

このようにひたすら書き出して、わからないものは、名のあるバイヤーさんやスタイリストさんの知り合いに質問をいっぱい投げかけました。

「このスタイルはどうしてこんなに格好良くみえるのですか?」
「今年は、なぜこのアイテムが流行っているのですか?」

さらに、もうひとつ別軸で、お客さんの悩みを集めました。ショップスタッフをやっていた時からずっと、お客さんの声をメモしていたのです。

「足が短くて困る」
「顔が大きいから似合わない」
「あれが嫌い、これが嫌い、これが苦手、あれが好き」

ショップスタッフの頃から、お客さんの悩みや不満を解消しながら服を売るというのが僕のスタイルだったのですが、今回も同じようにやってみようと思いました。

「ファッションに精通している人の声」と「お客さんの悩みの声」。この2つの軸を洗い出し、ロジックで繋げればよかったのです。繋がったものを一つ一つネタにしていこうと思って、それからブログをスタートしました。でも僕は怠け者なので、半年で19記事くらいしか書かなかったんです。当時はありがたいことに仕事もめちゃくちゃ忙しかったので、気が向いたら書こうというスタンスでやっていこうと思っていました。

ただ、あるときアクセス解析をしてみたら、40万人も観ていることがわかってビックリしました。トップページを含めたら20ページしかない、たった19記事のブログを、40万人が見ている。これはちゃんとしないといけないなと思うと同時に、やっぱり需要があるんだと確信しました。それからブログは100万PVを越えて、メルマガも始めました。メルマガの内容は結構ディープなので、書籍から読んでいただくと良いかもしれません。

MBさんは常に新しい販路の開拓をされていると思います。メルマガやオンラインサロンも行っており、ファッションとオンラインサロンをかけ合わせて新しいものをつくろうと思ったきっかけをお聞かせください。

MB:媒体の選定は、実は7年前から決めていました。良いものが無条件に売れるのだとしたら、僕の好きなブランドは消えないはずだったので、良いものをちゃんと伝える方法は必要だろうなと思っていました。どうやってマーケティングしていこうとか、どうやって人に伝えていくべきなんだろうって、さっきの話と同時に考えたのです。

そして、教育構造が必要だなと思いました。これはショップスタッフの時に学んだことなのですが、洋服屋さんにいって、いきなり20万円のレザーとか勧められないじゃないですか。ではショップスタッフはどんなアイテムから勧めるかなと考えた時に、2,000円〜3,000円のカットソーや、4,000円〜6,000円のラインナップなど、お客さんにとって手が出しやすい金額のものから勧めると思うんです。

洋服って面白くて、セールスが成立するとお客さんが着てくれる。そこからお客さんへの教育が始まるんです。

例えば、このTシャツを着ていて「カッコいいからブランドも良いかも」と思います。そうやって気に入って来店してもらえると、もう少し高いアイテムのセールスが成立する。2万円のデニムにも興味を持ってくれるようになる。ブランドをだんだん好きになっていく。ここで20万円のライダースを提案してはじめてお客さんは検討し、気に入ったら買ってくれる。

これってすごく当たり前の話だと思うのですが、意外にも「今月の目標は20万のライダースを20枚売る」というショップスタッフは単純に1日1枚売ろうとしがちです。はじめてお店に来た人に20万円レザーのライダースを勧めても、ブランドを好きになってもらえる過程をとっていないので、そんなセールスが通るわけがないのですよね。

ものを売るには順番が大事なんです。なので、僕のビジネスも三層構造にしてみたのです。一層目が無料の構造で、ブログやSNSで、誰でもアクセスできて、誰でもタダで読めて、僕のことがわかるもの。しかもファッションのことで役に立つ。「足が長く見える、小顔に見える、実際に鏡の前でどうかやってみてください」と。実際にやればわかってもらえるという自信がありました。

実際にやってみた人は、もっと情報を知りたいとなるはずなので、二層目として500円のメルマガを提案する。そのメルマガも毎週送られてくるから、さらに先の情報が欲しくなる。そしてさらに三層目として、5,000円〜1万円のオンラインサロンを提案するという構造をつくり上げました。当時はオンラインサロンという言葉がなかったので、個人コンサルになるのかな。

個人でメールのやり取りをして、実際にやってみて上手くいってたのですが、途中でオンラインサロンというものができ始めたので、こっちの方が流れとしてはうまくいくだろうなと思いました。オンラインサロンにしようと思って切り替えたのが3年前とか4年前ですね。

近年、エシカルファッションやサスティナブルな取り組みに触れる機会が増えました。環境問題や労働環境の改善に対してはどうお考えでしょうか。

MB:僕の媒体の中では、そういった話はしないようにしています。ユニクロやH&Mを取り上げているというのもあるのですが、僕はファッションに対して、夢を持っていて欲しいんです。

実際に、ファッションには影の部分は存在していて、誰かが解消し、解決しなければいけないのは間違いありません。ただ、僕がやるべきことは7年前からしっかり決めていて、オシャレじゃない人にファッションを好きになってもらって、洋服の夢を見てもらうことが目的です。その周辺(夢の影の部分)に関することは、全部やらないでおこうって決めてました。無駄なことをやっていたらおかしくなっちゃうから。僕のことを知ってくれた人をひたすら格好良くさせようと決めたんです。

政治の話や影の部分は、僕の媒体の中では話題に出さないようにしています。そうすることで、ファッションはもっと明るいもので楽しいものだと伝えたいんです。それが虚像であったとしても、まずサービスを受けるお客さんが多くないと市場が成立しないと思いました。別に隠すわけではないですけれど、まず、夢を見させてあげようと思って触れていないんです。

さすがにおっしゃる通り、最近サスティナブルな流れがすごく強くて、ハイブランドもその方向にどんどん舵を切っています。ハイブランドやラグジュアリーのという言葉の解釈も変わってきている気がするんですよね。社会正義や社会的な責任という話でなくて、「社会や環境を考えている洋服を着るのがカッコいい」という価値観に海外の人が変わったんじゃないかなと思います。

でも日本はまだ感覚的に理解できていなくて、例えば「サスティナブルってレザーやファーを止めるのはいいとして、化学繊維を作る際に出るマイプラ(マイクロプラスチック)なんかはサスティナブルじゃないじゃないか!」などと批判してきます。その辺も詰めなきゃいけないと思うんですが、どちらかと言うとファッションがやれることって問題提起だと思うんですね。

「ファッションが物事を解決する」という役目はないと思っています。でも、人類全員着るものだから、問題を提起するものにはなり得るじゃないですか。だからファッションっていい意味でも悪い意味でも、もっと薄っぺらくていいんじゃないかなと思っています。

ひたすら厳密にサスティナブルを追いかけることも、制作側としては意識しなければいけないんですけれど、それがちょっと間違っていたからといって、そこまでつつくことでは無いのかなと感じます。サスティナブルというものがあって、みんなで洋服という身近なものから変えていこうよっていう、問題提起そのものに価値があるんじゃないかなと考えています。

労働環境も本当に同じことだと思うんですよ。どう改善していくかも、すごく大きな動きの中で決めていかなければいけないことだと思います。ファッションがきっかけで、いろいろな業界の課題解決に繋がっていければと思っています。

「内面のいちばん外側」が外見で、それが「モテる」という考えは素敵だなって感じました。

MB:内側と外側の話ですね、結構良い反響がありました。僕はショップスタッフさんに馬鹿にされた経験があったんですが、それは本当にカッコいいってことなのかな?と思いました。内面も外見もカッコいいほうが当然良い訳で、例えばランボルギーニから降りてきた人がボロボロのTシャツだったらガッカリするし、中も外もカッコいいって、すごく大事なことだと思うんですけれどね。

洋服の外面や外見って、結局内面のいちばん外側ってだけだから、内面を磨くことをしないと、本当のオシャレにはならないよってことを伝えたいです。ちょっと自己啓発みたいな内容ですけれどね。自分の軸を持つこと。周りを褒めること。第三者目線も、とても大事なことだと思います。

MBさんが語られる言葉は印象的なものが多くて「ファッションも最高の自己啓発だ!」みたいな言葉も心に残ります。MBさんの人生の座右の銘をお聞かせください

MB:「意思あるところに道はある(Where there’s a will, there’s a way.)」

昔からある座右の銘です。僕は偶然はないと思っています。この仕事を始める7年前に、今の結果を考えて取り組んできたから、結果になった。結果を狙わないと、その先にいけないなと思っています。

ぼんやり夢見て上手くいけばいいなとか、幸せになれればいいなって考えるのは、みんながやります。もちろん僕にもそういった側面はありますが、狙わないと!考えて努力して狙わないと、当然だけれど先にはいけないので、すべてのことに意思を込めようと努力しています。

インタビュアー:「まず考えて自分で答えを導き出せ!」って、かなり考えられていると思います。7年前に描いて、継続の期間に大事にされてきたことはありますか?

MB:嫌なことをしないということくらいですかね。先ほども言いましたが「意思を込めて、狙ってやる」ってすごい大事なこと。ただ人間はそんなに強くないから、嫌いなことで何年も続けられるほど丈夫にできていないんですよね。だから、好きなことしか僕はやらないようにしよう、無理はしないようにしようとは思っています。

経営者としては間違っているかもしれませんが、会社の売上や会社の規模を最大化させようとは思っていないんです。メルマガの読者さんは増えたらいいなとは思いますが、変に増やそうとはしていません。それよりも、みんなのために役に立つ、みんなに届くという過程の中で、結果がどうなるかだけしか見ていないんです。細かい測定はしていません。自分が好きなことをやっていれば、能率は一番上がると思っています。

洋服がどれくらい好きかって言われたら、僕は日本で少なくとも1,000人以内に入ると思うんですけれど、少なくとも1,000人以内に結果って出るはずじゃないですか。だから好きなことをやるってすごい大事なことじゃないかなと思います。

名刺の裏側に社名が書かれています。株式会社EIM(エイム)は、エグジスタンス(存在)のEと、インフォメーション(情報)のIと、メイト(友達)のMという、イニシャルの掛け合わせなんです。あんまり無理なことをするのではなくて、自分自身の魅力をシンプルにインターネットを使って情報化することで、友達ができて、それで仕事になるから、それ以上は望まなくていいよっていう、そんな想いを込めてエイムと名付けました。
裏の意味で、綴は違いますけれど、AIMで「狙う」ことも込めていえるため、ダブルミーニングの要素もあります。

インタビュアー:全て、すごい考えられて作られているんですね。

MB:プライベートはそんなに考えてないですけれどね。仕事のことしか考えないです。

インタビュアー:そういったきっかけになったエピソードはありますか?

MB:僕は社長の息子で、すごい裕福な家庭だったんです。ただ、僕が小学校6年か中学1年の時に会社が倒産して、極貧生活になった。豪華な一軒家からボロボロの公営住宅に移って、借金取りが来るみたいな家だったんですよ。

ドラマみたいに、襖をあけると母親が泣いていて、なんかしないといけないんだろうなと、人生の目標がそこで決まりました。母親が頑張って育ててくれたから、それの恩返しをしなきゃいけないと思い、当時はお金のことばかり考えてました。お金が幸せな基準なんだろうと。

同時に、嫌なことはできないからアパレルという好きな道に進むことも決めました。アパレルでお金って難しいなって考えながらも、ある程度は稼げたんですが、それでも中々うまくいかなくて。その時に、お金を目的にするのはよくないんだなと気づきました。お金はあとからついてくるものだから、人のために動いたらいいと。

親の教育というよりは、環境だったかもしれないですね。転落して家族が不幸になってしまったから、助けたくて引き上げたくて、ガッツが生まれたというのはありますね。

最後に、これから目指している若手の起業家に一言お願いします。

MB:座右の銘からリンクさせると、意思ですね。

なんとなくとか、流れでとか、そんな風に考えなければいいんじゃないかなと思います。僕は哲学が好きで、ひとつひとつのことに意味を考えちゃいます。

オシャレってそもそもなんだろう
お金ってそもそもなんだろう
ビジネスって何のためにあるんだろう

など、そういったことを考えてきました。
大事なものは見えていく。ひとつひとつに意思を込めるのは非常に大事なことじゃないかと思います。

考えるのはどうしてもエネルギーが必要で、サボりがちだけれども、ひとつひとつの一挙手一投足、言動に意味を込める。どういうことなのかを考えて、どういった意味があって今やっているのか。自分がやるべきことが何かを考えていくと、少しずつ行動は洗練されていって、結果に結びつくのではないかと思っています。

僕から言えるのは、「意思を込めて動きましょう!」ということです。


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