認定NPO法人 アジアチャイルドサポート
「池間哲郎」× ワクセル
社会活動家の池間哲郎さんに、インタビューをさせていただきました。
池間哲郎さんは、映像制作などの会社経営の傍ら、一般社団法人 アジア支援機構、認定NPO法人アジアチャイルドサポートの代表理事など幅広く活動されています。また、講演家として、命の尊さや日本人としての誇りを精力的に伝え続けていらっしゃいます。
今回のインタビューでは、多くの国を訪れて貧困の実状をその目で見てこられた池間さんに、今の若者が大事にすべき価値観や、トップに立つ人間として必要な覚悟などをお聞きしました。
国際協力の活動を始められたきっかけをお聞かせください。
池間:きっかけは、フィリピンのトンド地区にあるスモーキーマウンテンで、とある少女と出会ったことです。
最初から勢いよく始めたわけではなく、まずは自分にできる範囲でコツコツと活動し、のめり込んでいきました。例えば、学校を作るには約800万円が必要です。私は行動するときにはお金のことは考えないのです。なぜかというと、やると決めたらお金がわいてくる(後から自分でつくりだす)と思っているからです。
自分のレベルというのもあり、最初は300万円程度からはじめました。どんどん楽しみが大きくなっていき、本業でさらに稼げるようになってからは、学校を作るために必要な800万円の全てを自分で出すようになりました。
なぜ、のめり込んだのか?それは、楽しかったからです。貧困で大変な思いをしている子どもたちが、笑顔で生き続けるのが嬉しい。喜びが溢れるという感じです。
貧困で苦しんでいる子どもたちを目の前にして、池間さんが感じることは何でしょうか。
池間:言葉は適切じゃないかもしれませんが、子どもたちは命を懸けた最も最高の生き方をしていると思っています。こんな生き方ができる人はそうはいないと思います。
もちろん、国際協力や支援活動は遊びではありません。ですが、アジアの貧しい子どもたちが一生懸命に生きているのを見ると、嬉しいのです。何回も危ない目に遭っているし、何回も死んだと思った人が生き返る。このまま助けなかったら死んでしまっていたかもしれない人々が、ちゃんと生きて、そして幸せになっている。その価値観は大きいかもしれませんね。この喜びが極端に大きかったから、活動し続けているのかもしれません。仕事も一緒で、喜びがないと続けられないと思います。
ただ、仕事における人間関係は別ですね。みんなから嫌われないとできないこともいっぱいあります。普通の人は国際協力やボランティアについて、表面的な部分しか見えていないことが多いと思います。僕は、生死までも見ています。表面的な部分しか見えていない人と合うわけがないし、よく喧嘩もします。だから敵も作るけれど、一方で応援者も増えていくのです。
インタビュアー:池間さんの覚悟が伝わってきます。
池間:私の会社の職員も、みんな同じ覚悟です。うちの職員は、ドーンとした男たちが集まっています。空手のチャンピオンや、アスリートが多いです。男らしい生き方をしている人が多くて、一般的なボランティア団体の感覚は持っていませんね。
職員の待遇も一般企業並みです。ボランティア団体の多くは、結婚もできないくらい安い給料で働いているので、これはボランティア団体や日本社会への挑戦でもあります。しっかりとした給料を出して、社会保険も休みもある。18時以降に会社にいるのは強く禁止しています。
過去に僕は仕事中毒で、朝から晩まで働いて家族に迷惑をかけたからです。子どもの運動会に1回もいったことないのです。そのような経験をすごく反省して、社員たちにはそんな目に合わせちゃいけないなと思っています。給料や待遇も良くする代わりに、仕事に誇りを持つように話しています。本当に良い仲間が揃ったと思っています。
人間関係について質問です。魅力を高めて人が集まる自分になりたいと同時に、人に嫌われたくないと思っている人にアドバイスはありますか。
池間:トップになる人はだいたい孤独です。孤独に耐えられる人である必要があります。
群れることで安心する人もいる。ただ、群れを好む人はトップになれません。組織を引き連れていくのですから、そういった人は、リーダーをやめた方がいい。自分自身を孤独に耐えうる人に育てていく必要があります。
小さな会社でも何でも、リーダーは誰とも仲良くしないこと。友人関係の方が楽しいので、良い人間関係を築けるに決まっています。ただ、リーダーが社員に対して友達付き合いを求めると、指揮系統が崩れて組織がおかしくなってしまいます。私が喋り出したら、社員のみんなの背筋が伸びる。いい意味で関係性をはっきりさせる、そういった姿勢は持ってた方がいいかもしれないですね。
もちろん、個人の楽しみは別です。個人としては遊んでも楽しんでもいい。だから、私にとっては女房がとても大事です。女房には愚痴も弱音も言うけれど、女房以外の人には一切言いません。漏れてしまいますからね。女房はそこを理解して守ってくれるからありがたいですね。
インタビュアー:会社の懇親会ではどのような振る舞いをすると良いでしょうか。関係性を意識しすぎるあまり、色々と考えてしまうことがあります。
池間:もちろんみんなと飲みに行ってもいいと思います。ただ、トップはある程度時間が経ったら先に帰るのが良いと思っています。トップがいることで、社員が気を遣って話せない話題もあるでしょう。自分でつくり上げた会社であっても、会社は個人のものではありません。みんなが勤めていますからね。
リーダーは、自己を見つめるのも一緒で、常に外から眺める訓練が必要です。
落合陽一さんやひろゆきさんといった若者から学んでいるとお聞きしました。そのきっかけや学んでいることを教えてください。
池間:自分の弱いところを見つめたいからです。今の自分では未来が見えない。
これからの時代は、AIの活用により次々と変化が起きます。AI自体は理解していますが、その上で何が大事なのか、僕の勉強不足でまだ見えないのです。AIの専門家と話すと、なるほどと驚くことがたくさんあります。
僕らの世代から見ると若者たちは、ある面で礼儀知らずが多く、力関係でモノを言う人も多いです。でもそれが若者の文化でもあります。そのような文化の流れも見ています。
この前、嘘だと思ったことがありました。速読というのですよね。ぱらぱらぱら~と本をスピード良くめくって読んでる方がいました。この読書方法を教えている人がいて、「理解できているのですか?」と聞くと、理解はできているみたいなのです。
理解するためには、速読と熟読を両方が必要だそうです。情報収集のための部分は、速読で対応する。大事なところは速読を止めて、内容をしっかり熟読するのが大事と聞きました。若い人からも学ぶべきことっていっぱいありますね。
これまでに3724回もの講演を続けられた中で大事にしてきたことをお聞かせください。
池間:初心を持ち続けていることです。
講演というのは、どんなに回数を重ねても、自己評価で100点を取ることはありません。70点を超えることもないのです。自分で話していて、ちょっとおかしいところが必ずあるのです。
これまでに3700回以上の講演をしていますが、この回数以上に毎日練習しています。今日も家に帰ったら、今日の講演の編集機器を前にして、おかしいなと感じる部分を直していきます。
慣れないことが一番大事で、慣れない努力をしています。これが初心を持ち続けることに繋がっているかはわかりませんが、私はこのようにやっています。
「適当」が一番許せません。今日の講演会には1万人近くの参加者がいました。1万人が2時間も時間を使います。人の時間を奪うことは、命をいただくのと一緒だと考えています。だから、中途半端なことは絶対にやりません。徹底してやらないと、聴いてくださっている人の失礼にあたります。
自己との戦いで、どうやったら伝えきれるかを考えている。常に自分との戦いですね。
池間さんの座右の銘をお聞かせください。
池間:私の造語ですが、「一点一歩」です。一点を見つめて、一歩一歩進む。それしかないと、いつも思っています。真剣にやっていくという意思を込めて、一点一歩という事を大事にしています。
今振り返ると、昔の私の一歩は10cmだったと思います。ですが、今は1mくらいになっている。これは影響力が大きくなっただけの話で、私自身が歩いている姿は変わらないのです。
インタビュアー:「一点一歩」という言葉は、どのようなタイミングでつくられたのですか。
池間:常に自分の中にあったものです。
座右の銘は、みんな誰かの言葉を言いますが、私は自分の言葉で言おうよといつも思っています。いつもずーっと見つめて、ずーっと歩いているから。
禅の言葉で、「一点を見つめるとすべてが見える」という意味の言葉があります。これもとても好きな言葉です。突き詰めるというのは何でも大事だなと。とことんやってる人は突き詰めているから、何をやってもできるのです。
私は人にも恵まれたなと思っています。私の生き方に反応した人が向こうから近づいてきています。
最後に、チャレンジしている人に向けて一言お願いします!
池間:チャレンジし続けている人は、やがて目標は変わります。目標が変わる度に。乗り越えるべき壁にぶつかる。壁があるから挫折する。よく聞くけれど、挫折はいい経験だと思います。壁に何度もぶつかったら、はしごをかければいいと思うのです。全て壊す必要はなくて、どんな乗り越え方をするかは個人の自由です。壁にぶつかるほど知恵は出てくるものです。
とにかく向き合い、進む方向性をしっかりと定めて、継続する力と、決して諦めない姿勢が大事だと思います。
若者にはいつも、人間の成長は「不揃いの階段」だと言っています。ちゃんと右肩上がりになってなくて、時には下がる時もある。それに耐えてる人ほど成長します。下がっていて、もうだめかもと思っている時にやり続けることで、右肩上がりになることもあります。上がることが事前にわかっていれば、努力も惜しまないのではないでしょうか。
あまりいい人になる必要もないと思います。人間なので、喜怒哀楽が大事です。怒る時は怒っていい。泣く時は泣いてもいいと思います。常に優しくあろうとしたり、悪の部分を無くしてしまうのは違うと思います。悪い心も自分の一部だからさ。迷惑をかけるのは良くないですが、この部分を大事にして、思いきりチャレンジしてください。