経営者対談

パンヲカタル主宰
浅香正和 × ワクセル

今回のゲストは、関西を中心にパンコーディネーターとして活躍している浅香正和(あさかまさかず)さんです。

浅香さんは、“パンでつながり、笑顔になる”ことをミッションに掲げ、パンの情報を発信し続けています。「パン業界に貢献したい」という浅香さんの強い想いについてお話を伺いました。

MCは、ワクセルコラボレーターであり、タレントとして活躍されている渋沢一葉さんと、ワクセル総合プロデューサーの住谷が務めました。

年間で200店舗を巡り、パンの魅力を発信

パンヲカタル主宰-浅香正和×ワクセル

渋沢: 本日のゲストは、“パン王子”こと浅香正和さんです。浅香さんは、パンコーディネーターとして関西を中心に活動し、メディアを通してパンの魅力について発信し続けています。パン業界を盛り上げるために、2010年には「幸せ発掘プロジェクト」を立ち上げました。

浅香: パン職人って自分の想いやパンについて発信することが苦手な人が多いので、それを拾いあげて代弁しようと2010年にブログを始めました。そもそも僕はパンに関わる会社で働いていたのですが、その会社の会長が「パン業界に貢献したい」という想いを強く持っている方でした。現在の活動を始めたのも、「会長のパンへの想いを継承したい」と考えたからです。

渋沢: 浅香さんは関西をメインにパン屋を巡っていると伺いましたが、年間でどのくらいの店舗に訪れているのですか?

浅香: 年間200店舗ほどです。1日に5店舗を巡ることもあり、1店舗につきパンを3個は買うので、1日で15個食べることもありますね。買ったあとは公園などで食べていますが、パンについてブログで発信したりライティングの仕事をいただいたりしているので、食べながら文章を書き、また次の店舗に向かっています。

文章を書く時、僕はパンの特徴を分解して捉えるようにしています。まずは食べる前にパンをよく見て、香りを確かめます。見た目や食感、のど越し、余韻、飲み込んだ時に最後に残る風味や香りなど…。パンはとても奥深いので、長く書き続けられていますね。

パンをきっかけにして”人”が繋がっていく

パンヲカタル主宰-浅香正和×ワクセル

渋沢: 2010年にパンシェルジュマスターを取得したと伺いましたが、どのような資格なのですか?

浅香: 「コンシェルジュ」と「パン」を掛け合わせた名前になっているのですが、パンの歴史や作り方、マーケティングなどについて幅広い知識を持っていることを証明する資格です。

僕はパンシェルジュマスター取得だけでなく、もっとパンに関わろうと2015年に「パンヲカタル」プロジェクトを始めました。 “パンを中心に人が繋がっていくことって素敵だな”と感じたことがきっかけだったので、「パンでつながり、笑顔になる」を明確なミッションに掲げています。小麦畑に行くイベントを開いたり、行政から依頼を受けて地域活性化のためにベーカリーマップを作ったりしています。

住谷: その活動がメディアにも大きく取り上げられていますよね。浅香さんは元々バンドマンをされていたそうですが、当時の経験が「パンヲカタル」に繋がっていることもあるのでしょうか?

浅香: 高校を卒業後、会社員として働きながらビジュアル系のバンド活動をしていたんですが、27歳の時に解散しました。当時は歌詞を作っていたこともあり、パンについてライティングする時は歌詞を書くようなイメージで書いています。僕は「伝えたい」という気持ちを強く持っているのですが、今はパンを通して表現できているので、僕のなかではバンドもパンも繋がっていると思っています。

今は亡き会長の想いを伝え続けたい

パンヲカタル主宰-浅香正和×ワクセル

渋沢: 18歳で入社した会社がパンのフィリング(具材)メーカーとのことですが、あまり聞き馴染みのない業界だと思いました。

浅香: カスタードクリームやチョコクリーム、あんこ、カレーなど、パンのフィリングを作る会社に入社しました。僕もこの会社に就職するまでは、そんな業界があることも知らなかったです。

当時は、高卒で就職する場合、近隣の会社から選ぶのが一般的でした。また、衣食住に関わる仕事に就くのが一番安定していると言われていたので、ひとまず食に関わる会社を選んだのが入社の理由です。54歳で独立しましたが、18歳から53歳までの35年間お世話になりました。

まだ在職中にパンに関する活動を始めたのですが、さまざまなメディアに出るようになって、「仕事とのバランスが取りにくい」と感じることがよくありました。当初は会社の売上に貢献できるほどの活動ではなかったので、会社との折り合いも難しい状況にありましたね。社内的にも独立した方がいいという雰囲気が強く漂っていて、もう今しかないと思い独立に至りました。

住谷: 評価されてもおかしくない活動だと思うのですが、当時はあまり評価されなかったんですね。努力しても周りの理解も得られない状況は、僕だったら諦めてしまうと思います。浅香さんがそんな状況のなかでも、活動を続けられた理由を伺いたいです。

浅香: 僕は「業界にも会社にも貢献したい」とずっと伝えていたのですが、活動と会社をうまく繋げられませんでした。しかし、これまで活動を続けてこられたのは、「亡くなった会長の想いを継承したい」という気持ちが強かったからです。今でも自分が迷った時は「会長だったらどうするだろう?」と考え、原点に立ち返ることができています。僕はパン屋さんが喜んでくれることをずっとしていきたいです。

パンは身近な生活のなかにある

パンヲカタル主宰-浅香正和×ワクセル

住谷: 独立後の現在は、主にどのような活動をされているのですか?

浅香: 地域活性化のプロジェクトを中心に行っていて、最近では大阪環状線のスタンプラリーを作りました。また福祉事業所のコンサルティングとして、商品開発や販売促進のサポートも手がけています。

最近「パンブーム」ってよく耳にしますが、僕はその言葉にとても違和感を覚えています。パンは生活のなかにあるものなので、ブームという表現がしっくりきていません。僕にとってパンの一番の思い出は、父親が休みの日にパンを買ってサンドイッチを作ってくれたことです。それくらいパンは身近で、日々僕らのそばにあるものだと思います。

渋沢: 最後に、浅香さん自身の展望についてお聞きしたいです。

浅香: 今、パンについて情報発信している方はたくさんいます。キレイな写真を撮る方もいて、正直そういう技術について僕は敵わないと思っています。でも、パンへの想いや、パンを作られている方の想いを届けたいという気持ちは誰よりも強いと思うので、今後も自分の言葉でパンの魅力を発信し続けていきたいですね。自分自身がパンを楽しんで、それを見て皆さんがパンを楽しみたいと思ってくれたら、こんなに嬉しいことはありません。


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