シングルマザー僧侶が考える『子ども食堂』が必要ない世の中とは

八幡 真衣

八幡 真衣

2023.03.03
アイキャッチ画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_八幡真衣さん_シングルマザー僧侶

浄土真宗本願寺派の僧侶である八幡真衣さんは、地域子ども食堂『テンプル食堂よしざき』の代表として、地域の子どもが集まれるコミュニティの場を提供しています。子どもの笑顔を守る「おうち」をつくるためのクラウドファンディングにも挑戦。テンプル食堂の全国展開も視野に入れて奔走する八幡さんが、現在の活動に至った経緯や、今後の日本社会に対する思いなどを伺いました。

地域コミュニティの場としての食堂

見出し1画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_八幡真衣さん_子ども食堂

私が子ども食堂を始めようとしたきっかけは、自分がシングルマザーになったことでした。実は、周りにシングルマザーであることをオープンにしたのは、離婚から数年たってのこと。食堂のママたちと話をしているなかで、子育てに誇りを持ち自分が決めたことを大事にしている人が多いと感じました。

「シングルマザーだから」と、支援を受けることは差別思想に近く、みんな平等でみんながいないと成り立たないのがひとつの活動であると考えます。子ども食堂では、「してもらってばかり」と思う必要はなく、「自分たちが楽しいこと」をやろうと伝えています。誰かに助けてもらわないと子育てができないと思われることはつらいですね。

ボランティアや慈善活動と名前がついた瞬間に、社会的に強い人と弱い人の構図が生み出されます。私たちの活動は、上も下も強いも弱いも関係なく、社会みんながひとつになりつながること。そして、「ここに来たら楽しいよね」という場所を作ることが目標です。

シングルマザーとなっても一人で物事を抱える必要はないんだと感じることがあります。友達と助け合うこと、たとえば「美容室に行くなら子どもの面倒見るよ」と言ってくれる場があることが重要だと思います。人生には、どんなに頑張ってもどうしようもないことも起きてしまいます。つらい時に、「今は無理なんだよね」と言えて、肩の荷をおろしてもいいと思える場が一番です。

今の子どもには、家庭のように過ごせる空間と時間の提供が必要です。家とは、心置きなく過ごせる場であるはずですが、近年は家に帰ってもずっと一人、家がただの箱になっているという子どももたくさんいます。

家に帰って来ても誰もいない、ご飯はクレジットカードを渡されて自分で弁当を買うという子どももいます。そういう子どもたちは、私が知らなかっただけで身近に存在するということをより知っていきたいですし、多くの人にも知ってほしいと思います。子ども食堂は、地域コミュニティの場を提供し、「ここだったら友達がいる」という逃げ道になってほしいですね。

「おかえり」と言ってもらえる場所

見出し2画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_八幡真衣さん_テンプル食堂よしざき

地域子ども食堂『テンプル食堂よしざき』が本格的にスタートしたのは2020年6月。新型コロナウイルス感染拡大で、全国的に緊急事態宣言が発令された1カ月後です。

コロナで収入が減った家庭が最初に削った支出が「習い事」でした。子どもたちから見たら、学校にも行けず学校以外の居場所もなくなりました。ソーシャルディスタンスにより人間関係が希薄になったという人もいますが、私は以前からあった懸念が顕在化しただけだと考えます。

『テンプル食堂よしざき』は、石川県と福井県の県境に位置していますが、住んでいる県も年齢も関係なく人が訪れます。子どもが家に帰るまでの間に「おかえり」と言ってくれる場になっています。また、地域の人たちが子どものことを知ることで、街全体が防犯の目にもなります。

ただ食事を提供する食堂ではなく、利用していただき地域の交流を深めることが大切です。むしろ、利用してもらうことで食堂を助けていただいています。来てもらうだけで防犯の目が増え、子どもたちのためにお金を置いていってくれる「おじちゃん、おばちゃん」の存在に支えられています。

お互いに「知られたくない」という社会になり、言いたいことを言えない人も増えてきました。本当に困ったとき、たとえば子どもがいなくなったときに地域総出で探す結束力が大事です。困ったから助けるのではなく、常日頃から関係性を持つことが必要です。食堂でも距離感や日頃からの関係性構築の積み重ねをしています。

子ども食堂が必要のない世の中へ

見出し3画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_八幡真衣さん_子供とのつながり

浄土真宗の僧侶になったきっかけは、元々実家がお寺だったこともあります。小さいときは、家のことには興味がなかったのですが、自分が親になって親がやっていたことに目が向くようになりました。父が住職をやっていて、お寺で幸せそうな顔をして手を合わせているのはなぜかと考え、お坊さんになろうと決意しました。

宗教の勉強をしたときに、「こんな世界観があるのか!」と衝撃を受けました。それまでは、自分は世の中なんでも知っていて「自分が一番大事」と思っていたところに、自分のことを自分以上に大切に思ってくださる、阿弥陀物如来の教えを知ってから価値観が大きく変わりました。

自分のことを自分以上に大切に思ってくれる人がいることに安心を覚え、そこでできた余裕を使い、誰かに優しさとぬくもりを共有して、与える存在になりたいと考えるようになりました。

今後は、テンプル食堂の拠点を増やして、京都や沖縄、熊本にも展開予定です。いろんな拠点に子ども食堂をつくって、テンプルの子たちが交われる企画を検討しています。

小さいときは地域の社会で過ごし、大人になって広い世界に飛び立っても、どこまでも「ひとりじゃないよ」と言える場を提供し続けます。そして、「つながっていく」ことをテーマに、全国に広がる輪を展開していきます。

究極のゴールは、子ども食堂の必要がなくなり『地域食堂』となることです。子ども食堂が必要である世の中は、子どもが家で安心できず、逃げ道を必要としていることになります。

行き場のなくなった子どもが温かい家庭で育つ社会となり、地域の人たちが「自分もいて良いんだ」と集まり、お互いが支えあえる場となったらどんなに素敵な社会でしょうか。その理想も持ちつつ子ども食堂の活動を続け、僧侶としての価値観も伝えていきます。

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