経営者対談

A Boog & Do, LLC副代表
「KITE」× ワクセル

ダンサーのKITE(カイト)さんにインタビューをさせていただきました。

KITEさんは、Juste DeboutやUK B-Boy CHAMPIONSHIPSなどの多くの国際大会で優勝、世界大会では2008年から毎年優勝を勝ち取るなど、圧倒的な成果を創り出している世界的なダンサーでいらっしゃいます。その腕前は、世界各国でのコンテストの審査員ライセンスを持つほどだそうです。

現在は、ダンススタジオを設立しインストラクターとしての活動や、イベントオーガナイザーとしてダンスバトルの開催など、ダンスを通じて様々な人と触れ合い、繋がり合う架け橋のような存在でいらっしゃいます。

そんなKITEさんが、なぜ講演家としての活動もスタートされたのでしょうか?
インタビュアー全員が興味津々でお話を聞かせていただきました。

講演家としての活動をはじめたきっかけは何ですか?

僕のレッスンを受けていた生徒さんに、10年以上の付き合いになるドクターヘリの先生がいます。
その方がしばらくして忙しくなり、自分も仕事が増えて、通ってくれていたスタジオでのレッスンが出来なくなってしまったのです。久し振りにそのお方とお会いし、お話をする機会がありました。

ダンス大会の映像をご覧になった先生から、「この動きは何でこうやったのですか」など細かい質問に答えていると、演技中の空気感や他の演技者に対抗する戦略的なポイントの話題になりました。そして先生から、「戦略と流れができているストーリーなので、ダンス以外にも活きるはずです」と評価をいただいたんです。

先生と話しているうちに、「自分で観察して、攻略して、一部をリカバリーする」といったことを無意識にやっていることがわかりました。大会だったので当たり前のようにやっていたわけですが、自分の戦略になっていることに気づかされました。

この体験をIT企業で話して欲しいとお話をいただきました。そして、僕自身の生い立ちや活動、海外で戦った時のモチベーション、戦略の立て方、まわりの観察など、どのように行なっているかを話したら、講演会終了後にものすごい量の質問が来ました。ダンスのことを話していたので、正直わかってもらえないだろうなと思っていたため驚きでした。ダンスとIT、ジャンルは違えど、参加者が自分の状況に置き換えて聞いてくれたため、理解していただけたようです。

例えば、IT企業としての海外企業とのやり取りなどにとても参考になったそうです。僕の視点で、ダンスだったらこうしますと。その方法論が生きていて、本やネットで出ているものではなく、よりリアルな体験だったため、重宝されました。それを皮切りに講演に関して様々なお話をいただくようになり、新たなアイデアから提案を出し、講演会のスタイルが確立していきました。講演会の中で大事にしているのは、同じテーマではやらず、違ったアプローチからやることを心がけています。

講演会のテーマにはどんなものがあるのでしょうか?

これまでの講演会は、以下のようなテーマでお話しました。

◇戦略の立て方
◇海外で活躍する子どもに必要なもの
◇シルバー層に向けた脳科学の活性法

戦略の立て方については先にお話したことがメインです。海外で活躍する子どもに必要なものについては、僕が海外に行って感じたこと、苦労したこと、良かったことをお話しました。それを踏まえて、語学や現地での生活についての質問に答えます。シルバー層向けの脳科学と絡めた講演会では「物忘れについてクローズアップし、脳がイキイキするテーマはどうですか」と提案をいただきました。まったくわからない分野だったのですが、先生から簡単な資料が送られて、はじめて見るような用語や記憶力のメカニズムを理解して、ダンスに置き換えて話すことを考えました。

ダンスの場合は、音楽を聴くという行為と、内容を理解して身体を動かす動作があるため、脳が働くのは複数になります。それをご年配の方に伝えるにはどうしたら良いかを考えました。アイデアを出すために祖母と話していると、笑点やサザエさんなどおなじみのメロディが使えるかも、とイメージが湧いてきました。実際の講演では、サザエさんのテーマソングを使ったんです。

ご年配の方のなかには足が悪い方もいるので、座ったままできるような動きを考えてみました。座りながらできる動作や、音楽の中に登場する効果音のタイミングに合わせて、アクションをしてみましょうと。

例えば、サザエさんのテーマ「タタンタンタタン♪タタンタンタタン♪タタンタンタタン♪タン♪カン!」の「カン!」の部分で、鳴らしてもらうアクションを行いました。リズムに合わせて身体を動かすことに慣れている方はぴったり叩けるんですけれど、タイミングがずれる方もいます。

「音はこのタイミングでくるので、それに向けて準備してください」「数を数えるのではなく、音楽を聴いた上でやってみてください」とコミュニケーションをとりました。なかなかリズムが合わないかたには、僕が横にいて合図を出すなど様々なアプローチでやりました。そうすると、徐々にタイミングをつかめるようになってくるんです。
その次に、「カン!」以外のところにも動きをつけてみます。さらに、音楽を使わずに自分で歌ってみましょうと。そこで記憶力を使うので、音のフレーズを覚えているかそうでないかがわかります。

これらのワークでは、楽しいことと、明るくなることの体感をしてもらいました。音楽には人をのせる力があるので、それが当たりましたね。みんなができるようになってから、脳科学的なアプローチを説明します。​

様々なチャレンジをし続けていらっしゃいます。その原動力は何ですか?

新たなものをやりたいと思ってます。誰かがやったものはやりたくなくて、みんなのリアクションが「うそっ!」って思えるものがやりたいんです。
僕のショーケースでは普通に踊ることもあれば、「えっ?この曲使うの?」とか、「サザエさん使うの?」みたいに、サプライズの部分を出していきたい。意外性のある曲のほうが、観客も強い興味を持ってくれます。講演会をやっているのも、ダンスを通じて経験してきたことを講演会として伝えていますし、映画館を使ってスクリーンに映像を映し、踊るような企画も行なっています。

今回のように、ビジネスセミナーで踊らせていただくことも新しいトライと言えますね。普段とは違う雰囲気で踊ることが、自分自身のチャレンジに繋がります。

多くのチャレンジのなかで、課題をどのように乗り越えてきましたか?

チャレンジしてきて思ったことは、基本的にできないものはないということ。

自分には専門知識もないため、脳科学の勉強を今からやっても時間がかかりすぎます。ですが、専門に特化した方がいるため、一緒にやることで新しいものができます。今までは自分一人でやろうとして、労力も時間も負担もかかり、コントロールできなくて、途中で投げ出していました。

任せられることは得意な人に任せて、できることは自分が率先して行う。任せる場合は、イメージを伝え、どうやったらできるかのアイデアをもらい、すり合わせながら創り上げています。

それらを頼む場合は、人間関係ができていないとできません。もちろん、深い話もできない。100%の仕上がりに近づけるために、言いやすい環境を作ること、相手が伝えたいことを理解しやすい環境を作ることを意識しています。仕事以外でもコミュニケーションを取って、関係性を作っていくようにしていますね。

一緒に仕事をする仲間に対しての想いを聞かせてください。

元々、野球やダンスをやっていたため、周りに仲間がいました。仲間がいたからこそ出来たこともあって、一人でやってきたという気持ちはないんですよね。

必ず自分の横には誰かがいて、前にいる方は背中を見せてくれたり、下の世代は背中を押してくれたり。自分の中で、仲間たちは宝だと思っています。これまでの人生で良かったと思えるのは、仲間をつくれていたことですね。

大切にしよう!ではなく、大切なのが当たり前。

常に仲間と共にやりたいですし、新しく仲間になるためにやれることがあるなら進んでやりたい。世の中には、様々な人がいるため、どのような事を考えているのかを知るために、あえて一緒に組むこともありますね。

今後、やってみたいチャレンジはありますか?

その時のアイデアや、ぱっと思いついたことについてはやってみたいと思います。しかし、やる前には必ず仲間に相談します。すると、仲間は僕の目線とは違った発想で考えてくれるんですよね。話し合っていくと、「今の僕らでは無理じゃん!」と結論にいたることもあるので、やる場合は、新しい仲間や機材が必要だと明確になります。新しい場所でチャレンジするなら、色々と知っていく必要がありますね。

ダンサーがいない場所で、ダンサーとしていきたい。立ち位置も現場もそうですが、周りからは「なんでここにダンサーがいるんだ!?」と思われるのが良いですね。

先日、講演会を行なった際には、はじめは年配の方々がいらっしゃいました。そのうちに、色々な方が集まってきました。講演という形で話して感じたことは、行くことによって、興味を示してくれる方は少なからずいるんだなということ。あとは、どれだけ自分の想いを伝えられるかだなと思っています。これからも、自分の活動の熱の部分を伝えています。


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